三国会談(笑)
どんなタイトルだよ
*あらすじ:会談が始まりました。
「さて、それでは領土についての相談を始めようか」
ホーク王がクッキーを紅茶で流し込んだ後そう言った。会議は相も変わらずルーズな雰囲気で進んでいるので、俺も気張るのをやめてなるべく自然体で参加している。
「だな。ではまずショクチェンドゥ側からの提案を聞いておこうか。なお、我らギルレオンは不帰の森を提案させてもらうつもりだ」
「おぉ、ショクチェンドゥとしてもそこを提案したかったのだ。あの辺が開拓されるのはこちらとしてもメリットしかないからな」
ホーク王がそう言って同意する。
この前聞いた話によると陸上の貿易を行う場合、不帰の森を迂回して移動する必要があるらしい。だが俺達の国があの辺りを整備すれば、わざわざあの森を迂回する必要がなくなるわけだ。更に不帰の森はキルクルス三国の都心からそこまで離れていないので物流の取引が迅速に行えるし、既存の貿易地を結ぶ中継地としてもかなり良い立地となっている。言うなれば双方に益のある話というわけだ。
「じゃあ不帰の森をリュート殿へ譲渡するという話で構わんのだな?」
「あぁ、何も問題はない」
決まりだな。森に住むゴブリン達から許可は得ているので、大きな問題は起こらないだろう。
となると次の話題は今後の関係についてだな。
「じゃあ今後の関係についてのお話でもしましょうか」
「貿易関係だな、取り敢えず不帰の森には何があるのかを教えてもらいたいのだが・・・」
「分かりました、サノス」
俺はサノスにそう合図を送る、選手交代だ。
「彼は不帰の森出身のゴブリンなので、俺よりも森については詳しいんです」
「ゴブリン!?サノス殿が!?」
「マジ!?人間かと思ってたよ・・・」
とはいえ説明は必要だろう。そう思ってサノスのことを簡単に伝えてみたのだが、思ったよりもびっくりしていた。まぁ人間にしか見えないもんね。
ていうか伝えてなかったっけ?伝えてないんだろうな、この反応を見るに。
「失礼、取り乱しました。それではサノス殿、まずは不帰の森について教えてもらいたいのだが」
「畏まりました」
そう言ってサノスが頷いた。
ちなみにこの世界の売買方式は主に二種類ある、貨幣と物々交換だ。首都だとか繁華街だとか、所謂都会では貨幣制度が発達しているそうだが、農村部などの田舎の方では未だに物々交換が主流らしい。
ただ貿易の場合はパターンによって変わってくるそうだ。今回の場合は物々交換で行われることになるだろう、少なくともしばらくは。作られた国が貨幣制度を取り入れるには色々と準備が必要なのだ。
「不帰の森には五千を超えるゴブリンたちが生息しており、その大半は小規模な集落を築いて生活しています。彼らは皆リュート様に忠誠を誓っており、リュート様が命ぜられればその通りに動くことでしょう」
「ふ~ん、それじゃあ開拓は簡単ってことかな?」
「開拓は簡単です。ただしその後が問題になってきます」
「なるほど、開発だね」
サノスが頷き肯定の意を示す。
開拓するだけでは意味がない、その開拓した土地や資源を有効活用して生き物が住めるようにしなければならないのだ。
「住居の建築はともかく、道路の敷設や治安維持などは我々ゴブリンの得意な所ではないのです」
「なるほどね、ちなみにゴブリンは人の言葉は分かるのかい?」
「話すことは出来ませんが読み書きは可能です」
あえ?そうなの、結構優秀なんだな。
となると他の国から技術指導の人を呼んでみてもいいかもしれない。人間の言葉を話せる個体もいるので言葉が通じないなんてことはないだろうし。
ちなみにこの世界に言語の違いはないそうだ、多少の訛りはあれど何言ってるのか分からないみたいな事はないらしい。
「なるほど、ではショクチェンドゥは不帰の森に向けて、都市の開発に携わる者達を派遣しよう。あの近辺が開発されるのは我らとしても益に成り得るからな」
「それに関してはギルレオンも話をつけておるよ」
「え?じゃあゴケンコウだけじゃん。まぁ折角だし希望者を寄越すとしようか、我が国にはワーカホリックがたくさんいるからね」
おっと、キルクルス三国全員参加ですか。嬉しい誤算だな。
「本当に良いんですか?」
「何度も言うが陸路の改善は我らにとっても益がある話なのだ。森に詳しい者がいるなら迷う心配もないだろうからな」
「ゴケンコウとしては乗り遅れないようにしたいって感じ、ここで恩を売っておきたいのさ。そう言えばあの森ってなんであんなに行方不明者が多いんだい?」
「それは私にも分かりかねます」
そう言ってサノスは首を傾げているが、俺には何となくの見当がついている。恐らくはあの遺跡のせいだろう、大方あれも魔王になる者に向けた試練なんだと思う。全く、傍迷惑の極みだな。
とはいえ一応は憶測の域を出ないので、俺は黙ってその話を聞いていた。
「ふむ、サノス殿でも分からないならお手上げだな。さてと、開発関係の話はこれで一応終了だ。次は貿易関係について移ろうか」
「えぇ、では産出物についてのお話を」
そう言ってサノスが不帰の森の産出物について話し始める。俺も詳しくは知らないのでよく聞くことにしよう。
「まずは虫です。糸を使って繭を作る虫がいます」
「・・・蛾かな?」
「蝶々みたいになるので多分それですね」
やはりか。ちなみに蚕は蛾に似た生き物なのだが、人の手がないと生きていくことが出来ないらしい。
「そしてその蛾何ですが、生息する環境によって様々な色の糸を吐きます」
「ちょっと待て、その色の違いというのは濃淡の違いか?」
「いえ、そもそもの色自体が異なります」
「それは本当か!?」
サノスのその発言に他の皆も驚いた様子を見せた。現に俺も少し驚いている、顔には出ていないだろうが内心は興味津々だった。
「えぇ、辛みの多い葉を食べさせれば赤色に、渋みの強い葉を食べさせれば緑色に、などなど」
「それはまた面白い」
「えぇ、私もそう思って提案させていただきました。量産体制への移行にはもう少し時間が必要ですが、不可能ではないでしょう。これにて産出物についての説明は以上になります」
サノスが自信満々にそう締めくくった。その糸、俺も一回見てみたいな。
特産品についてはこれで終わりだろうか。一応ソラナ草とかもあるんだが、あれが群生しているのかどうかは分からないしね。
それじゃあ次はゴケンコウの特産物についての話かな、ショクチェンドゥについてはある程度知識があるのでじっくり聞く必要はないだろう。
「ふむん、でしたら次は我らの特産物について話そうか」
「宜しくお願いします。ただショクチェンドゥについてはある程度把握しているので、まずゴケンコウ側からの情報がほしいです」
「分かった、それじゃあ話させてもらうよ」
そう言ってオルカ王が口を開く。
「ゴケンコウは魚と調味料が主な特産品だ。魚は年中取れるし種類もたくさんある。調味料は塩とか砂糖とか、あとは香辛料とか色々あるよ」
ほう、調味料ね、それは初めて聞く情報だな。てことは醤油とか味噌とかもあるのだろうか、この世界に来て幾久しく食べていない和食を少し恋しくも思っているのだ。
「あの、その調味料って醤油とか味噌とかはあるんですかね?」
「醤油?何それ美味しいの?」
「えっ、まぁ美味しいですよ?」
「あ、そうなんだ、冗談で聞いてみたんだけど・・・」
「ってことは?」
「残念ながら取り扱ってないね」
あら、それは残念だ。まぁ頑張って探せば見つかるかもしれないし、希望は捨てないようにしよう。いつかおにぎりとか味噌汁とか作って和食パーティーを開こうじゃないか。
「で、どうなさいます?お望みの物はございませんけど?」
「ぜひ取引させてください。まぁその準備のためにもう少し時間が必要だとは思いますけどね」
「分かった、ショクチェンドゥとはどうするつもりで?」
「我らは綿花と服だな。どうする?」
「もちろん取引させてください」
「分かった、では準備が出来次第始めようじゃないか」
決まりだね。
まぁまずは量産体制の確保からだろう。後は農産物が作れるかどうかの検証とかもやってみよう、ゆくゆくは貨幣での貿易が出来るようにしたいね。
「じゃあインフラ整備が終わった後に、その辺の事に手を付けようと思います。ゆくゆくは貨幣で貿易ができるようにしたいですね」
「だな、我ら三国も基本的には貨幣を使っておるからな」
城下町では貨幣を使ってたからね。なお、イウラシアではほとんど貨幣しか使っていないと”赫イ智慧”が言っていた。だから出来るだけ早く取り入れたいものである。
「さてと、これにて会議は一旦終了だな。リュート殿は何か質問ありますかな?」
「一つだけ、とは言っても貿易関連じゃないんですけど・・・」
「構いませんよ」
「じゃあ聞きますけど、レストランで仰ってたスミスさんって誰なんですか?ずっと気になってるんですが」
まぁ聞かなくても良いかもしれないけど念の為、気になったことをそのままにして置けない性分なのだ。
そんな風な理由で聞いてみたのだが、別段隠しておきたい事情も無かったらしくすんなりと話してくれた。
「ライナスの嫁だよ。ショクチェンドゥの第一王女さ」
スミスさん、思ったよりも大物だったな。どうもライナスにはお嫁さんがいたらしい。まぁ王族だからいてもおかしくはないだろうけど。
「今年の春にギルレオンにやってくる予定なのだ。それはそれは聡明な女性なのだよ」
「だが少々わがままでね、甘やかし過ぎたなと少し後悔しておるのだ」
なるほど、典型的なお転婆王女って感じなのだろうか。
ただお嫁さんってことは結婚式とかはやるのかな。
「そうなんですね。ところで結婚式とかはやられるんですか?」
「それはもう済ましておる。確か貴殿がやってきたちょうどその前日だったかな」
「確か転生者だったな、初めに聞いたときは驚いたよ」
「ホントだよ、ところでそこからどうやってギルレオンにたどり着いたんだい?」
「アリナが連れて帰ってきたのだ。魔物から助けてもらった礼のためにな」
ロイド王がそう伝えると、合点が行ったのかホーク王が手をぽんと叩いた。
「そうか、だからちょうど国に帰る途中だったアリナ嬢と出会え、ギルレオンに行き着いた訳だな」
「確かご息女達は結婚式の次の日に国に帰ることになってたんだっけ。そういやロイドは披露宴の後すぐ帰ってたよな」
「あぁ、ちょうどその時魔人についての連絡が入ったのだ。確定した情報ではなかった故お主らには伝えんかったのだが、楽観視できる問題ではなかったからな」
「なるほど、だからリンダが少し焦っていたのか」
「恐らくな。一応ギルレオン関係者には伝えておったのだ」
そういうことね、結構複雑に絡み合ってたんだな。
となると俺って相当運が良かったようだ。偶然に偶然が重なって今に至っているわけだ。
「だからあの辺にいたんですね、やっと分かりましたよ」
「おや、話していなかったかな?」
「話してないですね」
「おっと、それは失礼した。それで、他に何か気になることはありますか?」
「もう無いですね、ありがとうございます」
別に気になることもないのでそう返した。するとロイド王は少し困ったような表情を浮かべ始める。
「ふむん、そうですか。帰るには少し早いしどうしようか」
「う〜ん、じゃあもう一回街に行く?」
「いやまぁ悪くはないかもしれんが・・・、リュート殿はどこか行きたい所はありますか?」
ロイド王が俺にそう聞いてくる。行きたい所ね、行きたいというか見ておきたい物はある。
「少しワイバーンを見ておきたいですね」
「ふむん、確かにいると便利だからな」
「であれば管理員を呼ぼうか。無理とは言わせないから付いてきてくれ」
「分かりました」
そう言って立ち上がったホーク王に俺達も付いて行くのだった。
キルクルス三国の話は後一話か二話で終わると思います。その後変な話挟んだ後、チョウアン・ペルティーダのお話が始まります。




