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とある魔王の無双譚  作者: azl
諸外国との交流
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飯を食うお話 <ショクチェンドゥ>

 旧年明けましておめでとうございます、本年もよろしくお願いいたします。


*あらすじ:服を買ってレストランへ移動中。

 服屋で服を買った俺たちは、会談前の腹ごしらえをするためショクチェンドゥの丘陵の上にある高級レストランへと移動していた。なんでも先ほどの服屋と同じ王族御用達の店らしく、ホーク王も相当に気に入っているそうだ。


「何を食べても美味いのだ、また来たいと思わせてくれる」


 これは店に入る前にホーク王が放った言葉である。さてさて、楽しみだね。



 ホーク王に連れてきたレストラン、そこはまさに高級レストランって感じの場所だった。今風に言うならオーシャンビュー、このレストランは高所に立っているので、見渡す限りに広がる美しい海を眺めることが出来る。壁には美しい絵画も飾られており、俺達の視線を捉えて離さない。

 まぁ良い所ってのは分かってもらえたと思うが、果たして落ち着けるところかと聞かれたら少し首を傾げざるを得ない。庶民には少し敷居が高いのだ。

 やはり俺みたいな人間にはファミレスとかの方が良いね、疎外感に苛まれないから。


「こちらにどうぞ、お料理はもうしばらくお待ちください」


 店員さんが丁寧に腰を折る、俺は余りこういう対応に慣れていないのだが他の御三方は違ったらしい。その発言に首肯を返し、そのまま椅子に座っていた。ちなみにサノスは城に帰っている、とうとう護衛がいなくなってしまったが、自分の身は自分で守れると皆が言っていたので、多分問題ないと思う。


「ふむ、中々良い眺めだな」

「だね、まるで巨神様にでもなったみたいだよ」


 そしてその椅子にどしりと腰かけたオルカ王がそんなことを言っていた。巨神様、聞いたことがない単語である。


「オルカ王、その巨神様ってのは?」

「あぁ、ゴケンコウに伝わる御伽噺だよ。折角だしちょっとだけ・・・」

「お待たせいたしました、サーロインステーキです」


 良いところで店員さんが入ってきてしまった。ワゴンカートの最上段には香ばしい匂いを放つステーキの皿が四つ並べられている、ただお値段については考えない方が良いかもしれない。


「巨神様についてはまたいつか話そうか、今はステーキにしゃれ込むとしましょう」

「ですね」


 美味しいものは美味しいうちに頂きたいし、それが牛に対する礼儀というものだろう。巨神様についてはまた腰が落ち着いたときに聞くとして、今はこのステーキを命一杯頂くことにしよう。


「ふむ、これはまた豪勢だな」


 出された皿は計三つ、サーロインステーキ、大根サラダ、そしてパン。飲料はミカンジュースである、果肉が浮かんでいるのでもしかしたらミカン丸ごと使っているのかもしれない。


「では頂くとしようか」


 頂きます、俺はナイフとフォークを手に取って、サーロインステーキに刃を入れ込む。すると出てくるのは大変美しいサーロインステーキの断面。

 レアだった、前世ではテレビでしか見たことの無いレアだった。まぁその理由は単に俺が飲食店でステーキを頼まなかったからだろうね、飲食店のステーキって大抵鉄板で出てくるわけなんだが、それがどうも苦手だったのだ。トラウマって言った方が正しいかも。

 昔あれに触って火傷しちゃったんだよね、あれ以来どうしても苦手意識が抜けないのである。ちなみに今回提供された皿は普通の皿だ、どうやっても火傷のしようがないので安心だ。


 俺は切ったサーロインステーキにフォークを突き刺し、口に放り込む。

 ・・・あきまへんわ、これを子どもに食べさせてはあきまへん。

 大トロみたいに口に入れると蕩けるのだ。噛み応えがある肉も結構好きなのだが、これも中々だな。そんな風なことを考えつつ、一切れまた一切れと口の中に入れていく。


「リュート殿、お味の方は・・・、って聞くまでもなさそうですね」


 え?顔に出てた?ちょっと恥ずかしい。

 顔の熱が上がるのを感じながら照れ隠しにミカンジュースを飲んだ。美味い、果肉が良いアクセントになっていって喉越しもさっぱりしている。確か某ミカン大国にこんな飲料があったっけ?あれ結構好きなんだよね。


 さてさて、そんなことを考えつつ次に手を出したのはパン。小麦の香りが香ばしく、手に持った時の弾力もかなり良い。全部で三つあるのだが、その全てが食べやすいサイズ感でカットされており、口の小さい人でも不自由なく頂けそうだ。


「ホーク、このパンに使っている小麦はギルレオン産か?」

「その通り、この近辺じゃギルレオンのが一番美味いからな」


 ロイド王の質問にホーク王がそう答える。ショクチェンドゥは寒くて小麦の栽培には向いていないし、ゴケンコウに関しては年中吹く強烈な潮風のせいで作物を育てること自体難しい。それ故キルクルス半島で小麦を作っているのはギルレオンだけとなっている。なお沿岸部ではなく内陸の方だったらゴケンコウでも作っているそうなのだが、ギルレオンの品質に比べると若干劣るとのこと。


「やっぱギルレオンの小麦って最強だな」

「然り、これを超えるのはなかなか難しいだろうな」


 オルカ王とホーク王がそう述べる、いつの間にか皿にあったはずのパンが無くなっていた。

 さてと、それじゃあ俺もいただくとしよう。一口サイズなので一口で食べる、美味しい。小麦の芳醇な香りが広がっていくし、嚙み心地も俺好みだ。

 ただ一つ問題を上げるなら、俺って肉には米派なんだよね。ただこの世界に米はあるのだろうか?こっちに来てそこそこ立つが、一粒の米粒すら食べていない。まぁ頑張れば見つかるかもしれないし、希望は捨てないようにしよう。


 さて、まだ食べてないのは大根サラダだ。はっきり言おう、俺は大根が大嫌いだ。あの何とも言えない苦みが好かない、後味が悪いというかなんというか。両親は好きって言ってたけど俺はどうしても受け付けなかった。おでんとかおろしとか味が付いている大根なら兎も角、サラダに入っている物はどうしても苦手意識が拭えない。


「ふむん、そう言えばスミスは大根が苦手だったかな?」

「その通り、リュート殿はどうです?」

「あんまり好きじゃないですね」


 俺はロイド王の質問にそう答えた。

 スミスって誰だろう?それを後で聞いてみる重要課題に設定したところで、俺は再び大根と向き合った、折角出された物を残すわけにはいかない、意を決して口に入れようとしたその時、ホーク王が俺を呼び止めた。


「待て待て、大根が苦手なのに生で食べるつもりか?そこにあるドレッシングを使うとよい」


 ドレッシング?もしかしてこのポットか?でも指指す先にあるのはこれだしね、俺は疑心暗鬼に思いながらもそれをサラダのほうに垂らす。するとまさにドレッシングって感じの流動体がポットの先から出てきた、いい匂いだ。

 とはいえドレッシングってあまり意味を感じないんだよな、千切りキャベツならともかく大根相手にかけたところで味がそう変わるわけでもないから。そんな風なことを考えつつ大根を口に運んだ。


「これは・・・」

「なかなか行けるだろ」


 端的に言おう、美味しかった。ドレッシングによって大根の苦みがマイルドになり、不快な後味も残らない。そのドレッシングの主張も然程激しくないので、これならいくらでも食べられそうである。


 そんな風に全てにおいて欠点がない完璧な料理を、命一杯楽しんだのであった。



「ご馳走様でした」


 とてもとても素晴らしい時間だった、他の皆もちょうど食べ終わったらしい。


「ふむん、もう少ししたら城に移動しようか」

「そうだな、腹ごしらえも済んだしな」


 いよいよか、多分これまでにないくらい緊張すると思うし、そもそももう緊張している。だけどゴブリンたちの代表としてしっかり立ち回らなければ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「じゃ、会談を始めます。よろしくお願いします」


 ショクチェンドゥ城の一室で、いよいよ三国会談の始まりが宣言された。なんか矢鱈ルーズな宣言な気もするが、多分気のせいだろう。


「で、なんか言う事あんの、お前ら?」

「あるぞ、なぁリュート殿?」

「はい、我が国の領土についてのお話を」

「おっ、そう言えばそうだったね。お兄さんすっかり忘れてたよ」


 そう言ってオルカ王が笑う、神妙に答えた俺とは豪い格差だな。てか会談ってこんな気だるげなの?いや、そんなはずはない。これは多分俺に気を使って・・・。


「皆様、お茶とお菓子をお持ちしました」

「おぉ、ここのクッキー美味いんだよね。これ食べながら話しようぜ」

「だな、我も同意見だ」

「ふむ、ではそうするか」


 そう言って王族御三方が給仕さんの持ってきたお茶とクッキーに手を付ける。なんだか置いてけぼりである。


「どったの?リュート殿は食べないの?」

「えっと・・・」

「遠慮しなくていいんだぞ?」

「その通り、早く食べないとなくなってしまうぞ」

「いや、そういう事じゃなくて・・・」

「む?どういうことだ?」


 ホーク王が不思議そうにそう聞いて来る、だから俺も正直に答えることにした。


「皆さん俺に気を使ってます?会談っていう割には雰囲気が柔らかいし・・・」


 俺がそう言うとホーク王が若干困ったようで、それでいて面白そうな表情で口を開く。


「いや、元からこんなだぞ。初めは同窓会みたいなものだったのだが、何故か重大事みたいに扱われてしまってな。訂正するのが面倒だったので放置しておったら、民衆たちが重要な会談なのだと勝手に勘違いしてしまったのだ」


 ホーク王がそう言って締めくくる。

 えぇ、マジ?気を引き締めようとか言ってた俺が馬鹿みたいじゃん。

「サノス、年が明けたぞ!!」

「年?年ってなんです?」

「年ってのはまぁあれだよ、明けるとめでたいものなんだよ」

「はぇ~、なんでめでたいんです?」

「新しい一年を問題なく迎えられたってことになるだろ?あと俺の住んでた地域では、年が明けた日におめでたい神様がやってくるってされてたのも理由の一つだったかな」

「ほう、色々あるんですね」

「だろ?そして人間は年が明けたら『明けましておめでとうございます』って挨拶するんだよ」

「なるほど、じゃあ私たちもその挨拶した方が良いんですか?」

「あぁ、だからせ~ので言うぞ。せ~のっ」

「「明けましておめでとうございます」」

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