柔で柔を制す
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*あらすじ:本格的に模擬戦が始まります。
指導も終わり、いよいよ本格的な模擬戦を始めるらしい。
実際に習っていたのはサノスだったが、俺も結構沢山の事を学ぶことが出来た。特に”闘気”について知ることが出来たのは大きかったな。
その中でも気になるのは”疾風迅雷”だ。他の剣技は魔法で代用出来なくはないだろうけど、あれだけは無理なんじゃないか?
ー無理ではないですが相当難しいですね、操作を誤れば自分を傷つけることになりますから。
”赫イ智慧”曰く、一応は力魔法だとか風魔法だとかの方向を制御してやれば理論上は可能らしいが、実行に移すには相当な演算能力が必要となってくるそうだ。まぁ自分の体をぶっ飛ばすわけだからね、しくじったら大惨事だ。
てことは”闘気”が必要不可欠になるってことなんだけど、俺の肉体にも闘気ってあるの?
ー大体サノスの十倍ほどあります。”至天能力”や”究極能力”の獲得、そして精神生命体へ進化したのと同時期に、闘気量が大きく跳ねあがっておりますので。
マジかよ、サノスの闘気量も結構な数らしいから相当多いんだろうな。
てかなんでさっき言ってたのと同時期に闘気が増えるの?一見すると関係なさそうなんだけど?
ー闘気とは”意志”の力なのです。能力とは自らの望みを叶えようとする”意志”、精神生命体はその根幹自体が強い”意志”によって成り立っています。ですのでそれらの発現と同時期に闘気量も跳ね上がるというわけです。
なるほど、そりゃ増えるのも納得だ。
さてと、問題は解決したので次の話題に移ろう。リクさんとサノスの模擬戦、一体どっちが勝つのか見物だね。
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「先手は譲りましょう」
「では遠慮なく」
リクの呼びかけにそう答えたサノス。そのまま地を蹴ってリクに接近する。
「はっ!!」
大地を強く踏み込み、突きを放つサノス。その威力は初めに振るわれた突きよりも遥かに強力であり、この短期間でのサノスの成長具合が現れていた。
だがリクにはそれに劣らない積み重ねられた技能がある、突きを木刀で掠らせ攻撃を逸らし、反撃の技を放つ。
「霧雨っ!!」
神速の突き”霧雨”がサノスの喉元へ飛んでくる。しかし彼は別段焦ることなくその突きを横薙ぎに払って吹っ飛ばした。
「あら、駄目でしたか」
「えぇ、まぁ、簡単でしたね」
「そうですか。それじゃあ一つ”能力”を使ってもいいですかね?”思考加速”っていうんですが」
「構いませんよ、ただ私は使わないでおきます」
「あはは、まぁそれでやっと対等ってとこでしょうね」
リクがそう笑うもその視線は常にサノスの方を向いている。リクは再び木刀を構え直し地を蹴ってサノスに切迫する。
「朧っ!!」
一瞬にして闘気により包囲されるサノスの体、その闘気はリクの突きを合図にサノスの体を全方位から襲い掛かった。
「空蝉」
だがサノスにとっては何の問題でもない、リクの指導に則り”空蝉”を使って回避した。
しかしリクの攻撃はこれで終わりではなかった。踏み込みから放たれる素早い突き、それを掠らせ回避しようとするサノスだったが、得も言われぬ不安を感じ至急”空蝉”の準備をすることにした。
念には念を、そう思っての行動だったがそれがサノスの身を救うこととなった。
「くっ、朧か!?」
瞬間、自分の放った闘気が打ち消されたのを感じたサノス、彼の感じた得も言われぬ不安の正体はリクの放った”朧”だった。サノスの持つ自動発動型の能力”超直感”、それが彼の身を救ったのである。
しかしそのことに安堵している暇はない、今この瞬間にもリクの突きがサノスの喉元目掛けて放たれていた。そして先ほどの状況を鑑みると、この突きの後に”朧”が放たれる可能性は非常に高い。
そう結論付けたサノス、自身の体と木刀に闘気を纏わせある技を放つ。
「ッ!?流石ですね!?」
リクが驚嘆の声を上げた、サノスが彼の眼前から姿を消したのだ。
「ちょっと危なかったですけどね」
サノスは七の太刀:疾風迅雷を使いリクから距離を取った。いったん状況を整理したかったのだ。
「何故”朧”を連続して放てるんです?放出するだけならまだしも、技にして放つのは中々に難しいでしょう」
「さて、何故でしょうね?ヒントは闘気の性質ですよ」
「・・・なるほど、思考加速ですか」
「おっ、流石ですね」
一瞬にしてその結論にたどり着くサノス、リクはその結論にすぐたどり着くだろうと思っていたので、そこまで驚いた様子は見られない。
”思考加速”、その名の通り知覚速度に影響を及ぼす”応用能力”で、リクの場合普段の数十倍程度での思考及び視認が出来るようになる。
ただし数十倍で思考や視認が出来るようになっても、数十倍の速度で動けるようになるわけではない。あくまで影響を受けるのは知覚速度だけなのだ。
しかしこの知覚速度の向上により大きく影響を受けるものもある、それが”闘気”と”魔法”だ。
”闘気”と”魔法”は念じることによってその性質を行使することが出来る。だから数十倍で思考できるということは、それらを数十倍の速度で行使できるということと同義なのだ。
闘気と魔素の展開速度は光速とほぼ近しいため、念じた瞬間に展開は完了する。だからこそリクは”朧”を連発することが出来た。要所要所で思考加速を発動させ闘気を展開し、その後形を持たせることによってそのような離れ業を可能にしていたのだ。
ちなみに魔法も同じことは出来るのだが、対象になるのは無詠唱で放てる魔法だけだ。詠唱の速度はそのままなので、思考加速の影響は受けられないのである。
「で、どうします?このまま使ってもいいですか?」
「もちろん、何も問題ないですよ」
「へぇ、じゃあギア上げていきますが構いませんね?」
「えぇ、構いません」
「じゃあ遠慮なく」
刹那、リクの姿が消え、サノスの目の前に現れる。そして放たれるは暴雨の如き剣戟の数々。
「くっ、重い!!」
”啄木鳥”、”朧”、そして”隼”、まるで隊列でも組んでいるかのように一切の隙なく放たれた剣戟は、サノスに一瞬の休息すら与えない。
サノスはその攻撃を全て”空蝉”で受け流しており、”闘気”の消費もかなり激しい、それ故その顔には少し疲れの色が見えていた。だが攻撃を続けるリクの顔にその色は微塵も浮かぶことなく、涼しい顔で攻撃を続けている。流石におかしい、何か裏がある。そう考えてみるもサノスには理由が思い浮かばなかった。
だからサノスは観察に徹する。降りかかる攻撃を”空蝉”でうまくいなし、攻撃の機会を窺う。そして見つけた反撃の糸口。リクがよろめいたその一瞬を見逃さず、必殺の一撃を振るった。
「隼ッ!!」
それは先程よりもずっと精練されていて、その破壊力は尋常ではなかったであろう。しかしリクはそれを見て笑った。
「朧霞」
サノスの木刀がリクの木刀に触れた刹那、”隼”はきれいさっぱり掻き消え、サノスに襲い掛かる凄まじいまでの破壊の波動。かつて自らが放った”朧”の如き闘気が、サノスに向けて放たれたのだ。
「チッ、中々痛いな・・・」
それを”空蝉”で受け流すサノスだったが、流石に全てを受け流すことは出来なかった。消し飛ばせなかった闘気がサノスの体に痛みを与える。
「今のは?」
「今のは私が考案した技、”朧霞”ですよ。なかなか面白いでしょう」
リクが嬉しそうに笑う。自分の技が初めてサノスに通用し、内心舞い上がっていたのだ。
”朧霞”、それは”空蝉”と”朧”の複合技である。
放たれた攻撃を”空蝉”で防ぎ、反撃の技として”朧”を放つ。これの肝は攻撃を受けただけで反撃が発動する点だ、つまり攻撃を受けた後に剣を振るという無駄が省けるわけだ。
それ故に防ぐのが相当難しい攻撃となっている。闘気による攻撃は、闘気か魔法を用いないと掻き消すことが出来ないのだ。”思考加速”があれば対処することも出来るだろうが、リクと同じ十数倍程度だと防ぐのは難しい。そもそも”思考加速”自体所有者が少ない権能なので、逐一そんなことを心配する必要は無いのである。
ちなみにサノスなら防げる。彼の持つ”思考加速”は大体百倍程度なので、余裕を持って対処出来るだろう。
「ちなみに真似は出来そうですか?」
「無理ですね」
「ははは、あれをパクられたらたまったもんじゃないです」
リクはこの技の開発にかなりの年月を有している。たとえ他者の成長を純粋に喜べるリクでも、この技をそう簡単に模倣されてしまっては平常心でいることは出来なかっただろう。
「で、どうします?まだ行けそうですか?」
「行けますよ、タネが分かりましたから」
「えっ、マジ?」
「あなた、俺の闘気を使って攻撃してますよね?」
「ふふ、やっぱすごいな、君は」
純粋にそう褒めたリク、それを見たサノスは質問を続ける。
「一つ聞きます、どうやって?」
「簡単さ。”闘気”ってのは想起とか決意とか、つまりは”意志”の力だ。だから勝ちたいって本気で思ってれば他人の闘気だって操れるんだよ」
操れるとはいっても限度はある。先ほどのケースなら、サノスの闘気はリクの闘気によって打ち消され、かなりその力を削がれていた、だから操ることが出来た、自分の身に余る量だった場合は操ることは出来ないのだ。
「つまり俺は”意志”の力で負けてると」
「その通り。でもまぁしょうがないと思いますよ、だってサノスさんにはハンデをつけてもらってますからね。でも俺は本気でやっている、そこに”意志”の強弱が現れるのは当然のことです」
「むむむ、中々苦しい・・・」
「じゃあ諦めますか?」
「まさか」
「でしょうね、それじゃあ第二ラウンドと行きましょうか」
その後サノスの木刀に再び剣戟が降り注ぎ、彼はそれを”空蝉”で防ぎ続ける。先ほどと全く同じ状況だが、サノスは考え無しに同じことを繰り返しているわけではない。
彼はリクの技を真似る為に守りに徹しているのだ。タネは分かっているがそれを模倣することが出来ない、だから黙って観察に徹する。今はひたすら耐え忍んでいるが、会得の時は近かった。
そしてリクもその思惑に気付いていた、だから自分のとっておきを放つことにした。
「サノス殿、次の一撃で終わらせます!!」
”疾風迅雷”でサノスから距離を取り、自分の持つ闘気全てを木刀に纏わせるリク。そして放たれるは終わりを告げる死神の一撃。
「刎ねろ!!死電一閃!!」
その一撃はまさに命を刈り取る一閃、だがサノスは絶望や諦めの色を浮かべるでもなく、笑っていた。
「もう分かりました、見せすぎましたね」
サノスはその一撃を”空蝉”では防げないと悟った。だから自分の持つ最高の技”隼”で”死電一閃”を迎え撃つ、自らの闘気がその技を包み込むように。そして隼は荒れ狂う力を抑え、死神の鎌を我が物とする。
「不味いっ!!」
それに悪寒を感じ”疾風迅雷”で距離を取るリク、だがその対応は少し遅かった。
サノスが再び放った闘気は隼とその鎌を食らい、彼の望みに沿って伝説を模す。訓練場に現れる東洋の龍、それはサノスの闘気に充てられた空間が歪むことによって、現世に顕現している。
その眼光はまさに天空の覇王、だがこの場においてはサノスの僕、天空の覇王は彼の命令に沿いアギトを開く。その口からは剣の如き牙が幾重にも並び、見るもの全てに畏怖の念を抱かせる。
「吼えろ!!龍哮撃滅咆!!」
その刹那、龍の口から放たれるは暴力の波動。瞬きすら許されぬ速度の咆哮は、凄まじい衝撃と爆音をまき散らしながらリクの元へ接近するーーー。
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「勝者、サノス!!」
リンダさんの声が訓練場に響き渡った。今この瞬間、手に汗握る激闘に決着が付いたのだ。
「痛てて、ちょっとは加減してくださいよ、全く」
「ははは、ごめんなさい」
差し出されたサノスの手を握って立ち上がるリクさん。いやはや本当に手に汗握る戦いだった。
「リュート様、再び守ってもらっちゃってすいません・・・」
「あぁいや、気にしないでください。むしろあんな戦いを見れたんですから、お礼を言うのはこっちですよ」
「その通りだぞ、リク。あれほどにまで白熱する試合などそう簡単には見えんわい」
ホーク王の労いを聞いて、リクさんの表情がぱっと明るくなった。
しかし本当に白熱した戦いだったな、最後の最後までどっちが勝つか分からなかった。
まぁそれはいいんだよ、そんなことよりも気になることがある。龍哮撃滅咆、あれって何?俺の張った結界を砕くどころか、その中にいたリクさんをぶっ飛ばしてるんだけど。
ーサノスの持つ類稀なる戦闘センスによって生み出された技でしょうが、まさか砕かれるとは思いませんでした・・・。
本当だよ、俺も砕かれるとは思わなかった。
まぁ真に驚くべきはそのセンスだろうね、あの一瞬でリクさんの技能を模倣し、それを生かす技を作り上げるなんて俺でも無理なんじゃなかろうか。
ー主様は無理でしょう。ま、私ならできますがね。
なんかドヤられた気がする。まぁいい、次はサノスとリンダさんの番だね。リクさんはへとへとだから、多分戦えないだろうし。
「じゃあ次はリンダの番だな。しっかりやってくれよ」
「お任せを」
ロイド王の言葉にそう返すリンダさん、その顔は気迫に満ちていた。
「じゃあ審判は俺がやるよ、リクさんは休んでてくれ」
「あ、すいません」
そう言って訓練場の端にある椅子に座るリクさん、この後も予定は詰まってるのでしっかり休んでもらいたいものだ。
「じゃ、二人とも準備はいいか?」
「「問題ないです」」
「よし、じゃあ試合開始!!」
次の投稿日は十二月三十日です。
そろそろ埋め合わせ分も投稿していこうかと思います。




