出発!!
*あらすじ:いよいよ会談当日です。
翌日、俺はギルレオン城の中庭に来ていた。約束の時間には間に合うよう、それなりに早く部屋を出ていたのだが、ロイド王とサノスはとっくに到着していたみたい。
これはもしや、伝達ミスで大分遅れちゃってたりする?
「ごめんなさい、待たせましたか?」
「いや、まだ少し早いわい。気にしなくて構わんよ」
だよね!!もう皆いるからびっくりしちゃった。皆様しっかりしてなさる。
「で、この子たちが今回使うワイバーンですかね」
「うむ、その通りだとも」
そう言ってロイド王がワイバーンを撫でる。
でかい、思ったよりもでかい。縦は二.五メートル、横は翼を折り畳んで一メートルくらい、翼を伸ばせば3メートルはあるんじゃなかろうか。漆黒の鱗が昇り行く朝日を反射して、黄金色に煌めいている。
「くるるる」
「あはは、可愛いですね」
俺が頭を撫でると、ワイバーンは喉を鳴らして目を細めた。その遠くで、ガントが歯をむき出しにして唸っている。
「で、この籠に乗っていくんですよね?」
「そうですね、リュートさんは高いところ大丈夫なんですか?」
「問題ない、割と得意さ」
見送りに来ていたアリナの質問に、そう答えた。バンジージャンプもやったことあるけど、そこまでビビることもなく、すんなり跳べた。だからワイバーンも平気だと思う。
「さてと、ユウキ殿も来られたことだし、そろそろ出発しようかの」
「ですね、そうしましょうか」
今回会談に向かうのは、ロイド王、リンダさん、サノス、そして俺の四人。リンダさんがいなくなって大丈夫なのかと思ったのだが、ヒューズさんを本国へ呼び戻しているので問題無いとのこと。
「じゃあ行ってくるよ」
「うん、気を付けてね」
アリナの声に手を挙げて答えて、ワイバーンの籠に乗り込んだ。
「っと、悪いな」
「いえ、こっちが詰めますので」
サノスが遠慮がちにそういった。籠の広さはあまり広くない、ギリギリ三人乗れる程度なので、それなりに工夫して座らなければならない。
「よし、飛べっ!!」
「はっ!!」
ロイド王の声に、御者が答える。そして、ワイバーンが飛んだ。
「リュートさ~ん、頑張ってね~!!」
「おう、アリナも魔法の訓練頑張れよ~!!」
去り行く籠に乗って、そう叫んで答えた。アリナの姿が見えなくなるまで、手を振り続けていた。
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「おぉ!!すげぇ!!」
竜に乗って空を飛ぶ。少し毛色は違うが、ゲーマー達が夢にまで描く光景が、今の俺の眼下に広がっている。
「ははは、そう言って貰えると、我々も働き甲斐があるというものです」
御者さんがそう答える。その顔を窺い知ることは出来ないけど、その声色から察するに多分ニヤついていると思う。
ちなみに今飛んでいるワイバーンだが、二匹どうしが平行になるようにして飛行している。だから横を振り向くと、般若のような表情でこっちを睨むロイド王の姿も見ることが出来る。そしてそんなロイド王、俺の姿を捕捉すると、おもむろに口を開く。
「リュート殿、我は今からアリナの父として話す故、君のことをリュートと呼ばせてもらうが、構わんかね?」
「え、えぇ、別に構いませんよ」
これは珍しい提案であった。なのでちょっと気圧されていたが、平静を装って返事を返した。
「リュートよ、アリナはお前のせいで変わってしまった。分かるか?儂も一緒におったというのに、我が娘の目に映っているのはお主だけだったのだ。実の娘に無視される気持ちが、お主に分かるか?」
分かるわけねぇだろ!!その物言いにそう反論したかったが、俺は空気が辞める男なのでそんなことはしない。ちなみに隣に座っているリンダさんは分かるらしく、目を瞑ったままうんうんと頷いている。
「私は君に喧嘩を売りたいわけではない、一つ愚痴を言いたかったというのと・・・」
「・・・何でしょう?」
「愚痴を言いたかったのとあと一つ、君に警告をしたかったのだ」
「警告?」
警告、そう言われて身構えていたが、それは俺に対する苦言というよりも、アリナの父として、俺へ送る助言の言葉に近かった。
「私の妻、ウルスラはかなり独占欲が強い女性なのだが、アリナもその例に漏れず、中々の物でな。間違って浮気でもしようものなら、殺されると思っておれ」
「・・・浮気なんて絶対しませんよ」
「ははは、頼りになる返事じゃわい。とはいえ有り得ない話ではないのだよ、貴族同士ではよくある話らしいぞ。貴族の価値はその血にも宿る、君の子を宿したいと望む者も少なくはないであろう。君は一国の王となるのだから、夜伽の誘いも増えるだろうな。そこから関係を持つというのも、有り得なくはあるまい?」
「無いですよ、絶対ありえません」
この世界にコウノトリはいないだろうから、俺の子どもは望めないと思う。だから誘いが来たとしても、乗ることは絶対に無い。出来ないといった方が適当かも。
「・・・なるほどのう、では側室はどうするつもりなのだ?」
「無いですね。少なくとも自分から娶ることはありません」
そう宣言すると、ロイド王は複雑な表情を浮かべ始める。
「娘の父としては嬉しい宣言だ。しかしその宣言は、一国の王としては適当か?」
「でもロイド王も側室いませんよね?」
「・・・だったな。やれやれ、すっかり自分のことを棚に上げてしまって居ったわ」
そう言うと、ロイド王は悪いことを思いついたときの笑みを浮かべる。
「まぁ気絶せぬよう、頑張ることだな。ちなみに儂は何度も経験したぞ?」
「・・・ちょっと気が早すぎませんかね?」
俺がそう反論すると、ロイド王は面白そうに笑った。
「そうでもあるまいよ、時の流れは自分が思う以上に早いものなのだ」
「・・・まぁ確かに」
よくよく考えたら、この世界に来てから一か月は経っているわけだ。本当にあっという間だった。
なら三か月後に行われる予定の建国祭も、あっという間にやってくるかもしれないね。
「まぁ私としては、君に会えたことを本当に嬉しく思っておるよ。君のような素晴らしい男のもとに、我が娘を嫁がせることが出来たのは、まさに僥倖というもの。これから興る貴殿の国にはとても期待しておる故、よろしく頼むぞ?」
「私もギルレオンという素晴らしい国に迎えられたこと、感謝しています。今の俺には頼れる仲間がいる、そいつらと一緒に最高の国を作っていきますよ」
サノスの方をちらりと見ると、誇らしげな表情をしていた。そして俺のその一言で、その会話にもひと段落付いた。
「見えてきましたよ、あれがショクチェンドゥ武装国家です!!」
大体三十分ほどのフライトで、目的地であるショクチェンドゥが見えてくる。まさに武装国家だ、その都市は巨大な門に囲まれていて、その所々に巨大な大砲のような物も見える。
「サノス、ネクタイ曲がってる」
「あ、すいません・・・」
やれやれ、不器用な奴だ。一応確認しておこうと思ったのだが、案の定だったな。
ちなみに今のサノスの服だが、貴族寄りの執事みたいな恰好をしていて、とんでもなく似合っていた。街を歩く女性全員を虜に出来そうなくらいだ。
「今から着陸に移ります、振り落とされないよう、しっかり掴まっていて下さい!!」
御者さんの指示に従って、籠の縁を掴む。
降りる場所はショクチェンドゥ城の中庭、その中庭に一人の男性が立っているのが見える。
「あれがショクチェンドゥの王、ホークだ。気張らず、自然体で頑張ってくれ」
「分かりました」
なるほど、あれがホーク王か。
「・・・正念場だ、しっかりやるぞ!!」
「ですね」
ワイバーンが中庭に降り立つ。今日この日、俺にとって初めての外交が行われようとしていた。
ちょっと三人称の練習がしたいので、次のお話は三人称で書きます。その次の投稿は十二月十三日の予定です。よろしくお願いします。
あと、十二月十六日の投稿は所用の腹痛でお休みさせていただきます。これの埋め合わせに関しては未定です。




