交渉
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*あらすじ:サノスに服を作りました。
服を無理やりサノスに押し付ける。その顔は少し困惑気味だ。
「サノス君、これは俺から君への謝罪の気持ちだ。即興で作ったからちょっと出来が悪いが、まぁ勘弁してくれ」
そう言ってぐいぐい押し付けるが、サノスは首を横に振るばかり。
「いや、そんな、受け取れませんよ」
「いや、受け取ってくれ。というかお前が裸のままだといろいろ困るんだよ、まぁ俺を困らせたいなら、話は別だがね」
「・・・そう言う事でしたら貰っておきます」
「おう、それでいいんだよ。ついでだから着てみてくれや」
そう促してやっと、サノスが服を着始める。ボタンは慣れていなかったらしく、その手つきは少したどたどしい。
「手伝おうか?」
「いえ、御手を煩わせるわけにはいきません」
ふ~む、ならいいが。
ちなみに今俺が来ている服なのだが、黒を基準とした所々に豪華な装飾を施してある、貴族みたいな服となっている。
実はこの服、ロイド王のおさがりなのだ。彼が若いころ来ていた服を、俺に譲ってもらったのだ。だからとてもではないが、外に来て行ける見た目ではない。俺も何か一つ、服を買っておくべきかもしれない。
ちなみにリグもロイドのおさがりだそうだ。
閑話休題。
「出来ました」
おっと、サノスの着替えも終わったようだ。
「おぉ、思ったよりも似合ってるな」
やはり色男には格好いい服が似合う、その魅力をさらに引き立ててくれるからね。
「着心地悪かったりしないか?」
「いえ、問題ないですよ」
「そっか、なら良かった」
その表情を見るに、サノスも満足してくれたみたいだ。
さてと、謝罪も済んだことだし、本題に移ることにしようか。
「うし、じゃあ本題に入るぞ」
「分かりました、ここに来られた理由ですね?」
「その通りだとも。で、その理由なんだけど、お前に一つ頼みたことがあってな」
「なんなりと」
おっと、頼もしい返事が返ってきたな。俺としてはうれしい限りだ。
「じゃあ簡潔に言うけど、明日俺と一緒に三国会談に出席してくれ」
「・・・すいません、その三国会談というのは?」
あれ?言ってなかったけ?
ー言ってないですね。
あらら、”赫イ智慧”がそう言うならそうなんだろう。これは申し訳ないことをしてしまったな。
「すまん、説明不足だった。三国っていうのは、キルクルス三国、つまりゴケンコウ、ショクチェンドゥ、ギルレオンの三つの国々のこと。だから三国会談ってのは、そのお偉いさんが集まる会談のことだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!!どうして私なんかがそんな場所に!?」
俺の話を聞いて、流石のサノスもびっくりしたような声を上げていた。まさかそんな場所に連れていかれるとは、思ってもいなかったんだろうな。
「森に詳しい奴が必要なんだよ。俺はここのことあんまり詳しくないから、ちょっと困っててな」
「そうなんですね・・・」
「そうなんだよ。まぁ、どうしてもってわけじゃないから安心してくれ。お前が無理ならテスラにで」
「やります!!やらせてください!!」
うおっ、急にすごいやる気だな。俺が言い終わる前に割り込んできた。まぁ、こっちとしてはありがたいけどね。
「じゃあよろしくな」
「はい、お任せを」
うし、サノスの協力も得られたし、これにて一件落着・・・、ではないよな。
「サノス、実はお前に、いや、お前らに一つ、聞いておきたいことがあるんだ」
「なんでしょう?」
「実はさ、この不帰の森を、俺の領土として提案しようかと考えてるんだよね」
今回やってきた一番の目的は、これの可否について問うためだ。さっきの話は本来、この話の後にするべきものである。
「領土というと、この森をリュート様の支配下に置くってことですよね?」
「そうだ」
「いいですね、是非そうしてください」
「あぁ、勿論相談し・・・へっ?」
まさか二つ返事で帰ってくるとは思わず、素っ頓狂な声を上げてしまった。こいつ、聞き間違えたんじゃなかろうな。
「俺が言ったことの意味、ちゃんと理解してる?」
「えぇ、勿論ですとも。実は我々で、その辺について話し合ってたんですよ」
「話してた?」
「はい、昨日のうちに」
サノス曰く、彼らゴブリンはこの森を捨ててでも、俺の領土に住むつもりだったらしい。なんでも恩義に報うためなのだと。
「我らゴブリンは、貴方様に多大なるご恩を感じております。我々は貴方様の手となり足となり、命ぜらるるままに動きましょう。最も、貴方様がそれを拒否なさるなら、その判断を受け入れるつもりです」
「いや、そんなことを言うつもりはない。だけど本当にいいのか?この森を俺の支配下に置いて」
「構いません。むしろ我らにとって、僥倖とでもいうべきものです。一応この森にも、それなりの愛着がありましたから」
恩義に報いつつ、長らく親しんだ土地を離れずに済む。彼らゴブリンとしては喜ぶことはあれど、悲しむ要素は一切ないとのこと。
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうぞ?」
「えぇ、よろしくお願いします」
サノスの了承も得られたし、これにて一件落着である。それじゃあ城に帰るとするか・・・、と思ったけど、ヨミたちにも連絡を入れた方が良いだろうな。
「サノス、ちょっとヨミたちに連絡入れとくわ」
「あぁ、すっかり忘れてました。別に入れなくてもいいのでは?」
「そういうわけにもいかん。ホウレンソウはしっかりやらないと」
「ホウレンソウ?お好きなんですか?」
「あ~、いや、あんまり好きじゃねぇかな」
でも煮びたしは好き、特に鰹節が乗ってるやつとか。
まぁ、さっきのホウレンソウとこのホウレンソウは、また別物なんだけどね。
『テスラ、ヨミ、聞こえてる?』
『はい、聞こ『ま!!リュート様、一体どうなさったのです?』』
テスラの声がヨミの声によってかき消された。本当に元気だな。
『悪いんだけどさ、今日と明日、サノスをちょっと借りてくわ』
『へ?サノスを?』
『おう、もしかして問題あった?』
『いえ、問題はありませんが・・・』
『こら!!またわがまま言おうとしてるな?』
『すいません・・・』
ヨミのしょんぼりした声が、魔法通話越しに聞こえてくる。一体なんでだろうね?
『ヨミはリュート様のお役に立ちたいと、少々躍起になっておりまして・・・』
そう言ってテスラが補足してくれた。だったら次はヨミに頼むとしようかな。
『そっか、じゃあ次はヨミに頼むとするよ』
『あ、ありがとうございます!!』
喜色遍満の返事であった。最も、その次がいつになるのかは分からないので、少しばかりの罪悪感を覚えてしまった。
『それでリュート様、屋敷には何時頃来られる予定でしょうか?』
『え?もう来てるぞ』
『な!?これは大変な失礼を・・・』
『す、すぐに参ります!!』
『ん?いや、気にしなくていいよ。もう帰るし』
テスラとヨミは若干申し訳なさそうだったが、どう考えても連絡しなかった俺が悪い。彼女たちが気に病む必要はないのだ。
『それじゃあお前ら、また今度な』
サノスとヨミの返事を聞いて、魔法通話を切った。さてと、それじゃあ本当に帰るとしよう。
「じゃあ、サノス、走って帰るぞ」
「走って?転移魔法ではなく?」
「あぁ、あれは一人用だ」
一応二人同時に転移させることもできるのだが、成功率が著しく低下してしまう。発動者じゃない方の座標指定が、なかなかに難しいのだ。この座標指定をミスると壁にめり込んだり、変なところに転移したりする可能性があるので、二人以上の転移は行わないようにしている。最も”赫イ智慧”が色々模索してくれているので、近いうちには可能になるかもしれない。
「承知しました、せっかくなので進化した体を全力で試してみようと思います」
「お?だったら競争するかい?」
「・・・ですね、そうしましょうか」
そう言ってサノスがにやりと笑った。
「うし、じゃあスタートっ!!」
俺の言葉を皮切りに、二人同時で駆けだした。勝者は俺だった、面子は無事守れただろう。
次回の投稿は十二月六日です。
諸外国交流編で巡るのはショクチェンドゥ、チョウアン、ペルティーダの三国の予定です。なので捉えようによっては、建国祭編のほうが諸外国交流するかもしれません。




