相談事
最初のほうに投稿した作品を最近編集しましたが、伏線を張ったりしたわけではありません。
*あらすじ:(元)ゴブリンたちのステータスチェックを行いました。
三国会談が明日に迫る今日、俺はロイド王に呼び出されー厳密には呼び出してもらってー、彼の執務室にやってきていた。
その部屋の扉の装飾は、他の部屋の物に比べると少しだけ豪華であり、一目見ただけで誰の部屋なのか理解できる。
俺はその部屋の扉をノックして、返事が返ってくるのをしばらく待っていた。
「入って構わんよ」
そして待つことしばし、部屋の中からそんな返事が返ってきた。
「失礼します」
俺は一言そう言ってから、部屋の扉を開けた。
「あぁ、リュート殿だったか。呼び出してすまんかったな」
「いえ、お願いしたのはこちらですので、お気になさらないでください」
執務室の机に腰かけていたロイド王、普段と違って眼鏡をかけており知的な雰囲気を醸し出していた。
そしてそんな執務室の内装なのだが、俺が思っていた以上に質素だった。黒を基準とした家具類と、所々に置かれた美しい陶磁器。贅を尽くしたというよりも、わびさびに近い、何とも落ち着ける空間である。
「この部屋は私の好みに合わせているのだ。なかなか悪くないと思うのだが、君はどう思う?」
「えぇ、俺・・・、じゃない、私もこの雰囲気は好きですよ」
「ははは、それは結構。あと、そう畏まる必要はないぞ。今は我々二人きりだからな」
「ですね」
「だろう?それにそう畏まられると、我としても困るのだ」
とは言われても、この人相手だとなかなか難しい。
ルーみたいな馬鹿っぽい奴には簡単にできるんだけどね。
「そうですか・・・。まぁ、気楽に話すとしますよ」
「うむ、それがいい。それじゃあ、そこのソファに腰かけてくれ」
言われた通りソファに腰かける。
黒い革製のソファだ、最近よく腰掛けるタイプである。
「さてと、時間もあまりないから、さっさと本題に移るとするか」
俺がロイド王に呼び出されたのは、いよいよ明日に迫った三国会談の打ち合わせをするためである。何を話して、何をどうするのか、そう言ったことを何一つ決めていなかった。
ロイド王は現地に行ってから考えるタイプの人らしいのだが、そう言ったことの経験がない俺のために、わざわざ時間を割いてくれたのだ。ありがたい限りである。
「とはいっても、相談というのもなかなか難しいぞ。幾分行ってみないことには、何を聞かれるのか分からんのでな」
「・・・そもそも三国会談って何を話し合う会議なんです?」
「それも場合によってまちまちだな。ただ今回の場合は、リュート殿の領地をどこにするかの話し合いが行われるだろうな」
「でしたらその領土について話し合いませんか?」
「ふむん、それがいいかもしれんの」
ロイド王が頷いた。
とはいえ領土か、なかなか難しい話だな。
「何か案はありますかね?」
「あるぞ。我としては不帰の森を提案するつもりだ」
「・・・あいつらに聞いておけばよかったな」
的を得た案であった。あの森は前人未到の地であり、俺に忠誠を誓うものが住む土地なのだ。一応ショクチェンドゥとギルレオンの国境線上に存在しているが、ショクチェンドゥはあの森をさほど重要視しておらず、ギルレオン側はあの地を俺の領土とするのに賛同してくれている。今思うと、あの地は俺の領土とするに、ぴったりの場所だったのかもしれない。
「ふむん、でしたら確認のため、この後に向かわれてみてはいかがかな?」
「それが良さそうですね。そうさせてもらいます」
「うむ、それが良い。その時に護衛の人物を連れてくるとよいでしょうな」
「護衛、ですか?」
「あぁ。三国会談には一人だけ、護衛を連れてくることが許可されておるのだ」
曰く、これは史上最初の三国会談から続く決まりごとなのだと。
「でしたら森について詳しい奴を連れて来ましょうかね。俺はあの辺詳しくないので、質問されると少し困る」
「それが良いの。特に特産品について、造詣が深いものを連れてきた方がよかろうな」
「というのは?」
「貿易に関する交渉も行う可能性があるのだ。無論取り急いで行う必要はないのだが、早いに越したことはなかろう?」
「ですね。有用性を示せれば、人手がもらえるかもしれない。今の所発展途上なので、手の数は多いければ多いほどいいですから」
「そういうわけなら我がギルレオンも人の手を寄越すとしよう」
「それはありがたい。その時はよろしくお願いしますね」
「うむ、任せておけ」
ロイド王がそう言ってくれた、ありがたい限りである。
さてさて、これで打ち合わせは完了だろうか。本来ならもう少し話しておきたいところだが、それはあまり意味がないだろうな。現地に行ってみない限り、どんなことを聞かれるのか分からないから。
「これで打ち合わせは終わりですかね」
「そうだな。これくらいやっておけば十分だろう。後は現地で上手くやるほかあるまい」
「ですね。そう言えばその現地にはどうやって行く予定なんですかね?馬車ですか?」
そう言えばこの辺について聞いていなかった。
三国会談が行われるショクチェンドゥは、山々の連なる連山地帯にあるそうなので、馬車の移動はかなりきつそうである。まぁ出来なくはないんだろうけど、体のあちこちが痛くなりそうだった。
「さすがにあの山道を馬車でいくのはキツイわい」
「ですよね。それで、どうやって行くんです?まさか歩きじゃないですよね」
「なわけない無いだろう。ワイバーンを使っていくのだ」
ワイバーン。ワイバーンって言うとあのドラゴンみたいなやつのことか?
「ワイバーンっていうのは、空を飛ぶドラゴンみたいな・・・」
「その通り。そいつにぶら下げた籠に乗って、ショクチェンドゥに向かうことになっている」
「つまりは空を飛んでショクチェンドゥに向かうってことですかね?」
「正解だ」
ワイバーンによる移動。庶民にはあまり馴染みがないそうだが、王侯貴族などの間では結構メジャーな移動方法だそうだ。
ちなみにこのギルレオンには三匹のワイバーンがいるそう。名前はない、ワイバーンは結構上位の種族なので、下手すると死ぬ可能性があるかららしい。
ちなみにゴケンコウには一匹、ショクチェンドゥには数十匹ほどのワイバーンが飼育されているそう。卵生で、一度に二つほどの卵を産む。最近繁殖期に入ったそうで、ショクチェンドゥにいるメスのワイバーンたちが卵を産んでいるとのこと。
とはいえそれ全部をショクチェンドゥが孵化させているわけではない、いくつかは貴族に向けて販売しているらしい。折角だし、この機会に入手しておくのも手かもしれない。
閑話休題。
「で、明日の出発はいつごろの予定で?」
「会談は昼過ぎくらいに行われる予定だから、明日の早朝には出発することにしようか」
「早朝ですか・・・」
「安心したまえ、給仕が起こしてくれるだろう」
「なら安心だ」
「であるな。我も早起きは苦手なのだ」
そう言ってロイド王が笑う。
そんな風なくだらない話を少しだけして、俺はソファから立ち上がった。
「さてと、そろそろ不帰の森の奴らと話をつけて来ますよ」
「ふぅむ、確かに良い頃合いじゃな。気を付けて行けよ」
「はい。それじゃあ失礼しますね」
そう言って部屋を出る俺。面接みたいに、ゆっくり丁寧に扉を閉めた。
そしてその後すぐに、魔法通話でサノスと連絡を取った。
『おいサノス、聞こえてる?』
『ッ!?熱ッ!!』
ヤバそうな叫び声が魔法通話越しに聞こえてくる。
もしかしたらやっちまったかもしれない。
『サノスすまん、大丈夫か?』
『あぁはい、すいません。大丈夫です』
大丈夫じゃない叫び色だったけど、大丈夫だと仮定して話を進める。
『悪いんだけどさ、今からそっち行くわ』
『え、今から、ですか?』
『おう、今から』
『畏まりました。直ちにお出迎えの準備を・・・』
『いや、転移でいくから屋敷で待っててくれ。ちょっと話し合いたいことがあるんだ』
『話し合いたいこと、ですか?』
『結構大事な話し合いだ。現地に行ってから話すよ』
『畏まりました』
『うし、それじゃあ後で』
そう言って魔法通話を切った俺。後は宣言通り現地に向かうだけである。
俺は転移魔法を発動させ、例の屋敷に向かうのだった。
次の投稿は二十五日です。
思ったよりも仕事が落ち着かないので、再来週の月曜である二十九日は、思い付きで作られた短編の投稿になるかもしれません。よろしくお願いします。




