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とある魔王の無双譚  作者: azl
新たなる魔王
53/145

試練の終わりは

「ユウキ様。魔王へのご就任、おめでとうございます」


 俺が会議室に入って一番初めに掛けられたのは、ユイさんからの賛辞の言葉だった。


「うむ、うむ、おめでとう!!」

「私も新しい仲間が増えてうれしいわ~」

「久しぶりの常識人、本当にありがたいです」

「ふむ、それに関しては同意見だね」

「お前、ギルレオンと仲いいんだってな。その内お偉いさんたちで話し合おうぜ」


 そして他の魔王たちからも、俺に対する賛辞の言葉が掛けられた。

 一部個別で返事しておかないといけない話題があったが、それは見過ごしていない。


「相談についてはまた別途にしましょう。俺はギルレオンとの仲はいいけど、ギルレオン関係者じゃないので」

「分かった。その辺に関しては伝書か魔法通話で連絡するぜ」

「ありがとうござ・・・」

「おい、俺様に畏まってくれるなよな。俺たち魔王は平等なんだから」

「そうそう、魔王間は平等、そういうルールが作られたんだ。だって誰も僕に対して敬語を使わなかったからね。ほんとっ、困っちゃうよな」

「お前がいいって言ったんだろうが・・・」


 ルーさん、いや、ルーがフェルシアに対して、これでもかってくらいのジト目を向けている。多分彼もフェルシアに苦労させられてるんだろうな。


「ま、そういうこった。けどお前の素がそれなら無理強いはしねぇよ」

「いや、俺としてもこっちのほうが話しやすい。これからもよろしく頼む」

「あいよ、任せときな」


 握手を交わした俺達。最初見たときはヤバい人かと思ったが、こうやって見ると結構まともな人なのかもしれない。


「仲良くできそうで良かった。それじゃ、ユウキ」


 そう言ってフェルシアが差し出したのは、黒いチェーンブレスレットと黒い指輪。どちらも巨大な宝石がワンポイントではめられており、かなり高価そうだった。


「こいつは魔王になった奴ら全員に配られる、量産型の古代遺物(アーティファクト)さ。好きな方を選んでくれ」


 量産できるなら古代の遺物ではないのでは?そう突っ込みたいがそれは野暮だというもの。

 さてさて、どっちにするか、か。イズナとルキフゲ以外は指輪だな。全員右手の親指にはめている。ルキフゲに関してはブレスレットがつけられなかったんだろう、スリムな骨なので。

 さてさて、いろいろ言ったが多数決なら指輪である。だから指輪にしようかと思ったけど・・・。


「ブレスレットでお願いします」

「オッケー。替えは効くから、気に入らなかった時は返品してくれ」

「分かりました」


 今回はブレスレットにすることがした。

 服にぶら下げられるので、失くすことがなさそうだったからな。

 あと指輪は貰いたい相手がいるからね。


「そういえば領土について話してなかったね、その辺どうしようか?」


 フェルシアが思い出したかのように、そんなことを聞いてきた。

 これの答えに関しては保留である。近いうちにキルクルス三国で会談が行われるだろうから、その時に決めればいい。


「それはまた後日。その辺の取り決めについて、会談が開かれる予定なので」

「分かった、しっかりやってくれよな?」

「任せてください」


 フェルシアも了承してくれたし、この問題はここでおしまいである。

 でもフェルシアのお話はまだ終わっていなかった。


「うし、じゃあこの幽冥城について教えておくよ」

「と、言いますと?」

「施設の利用案内みたいなもんさ」

「分かった」


 そう頷き返す。

 するとフェルシア、幽冥城の施設について懇切丁寧に紹介してくれた。


「まずこの城には書斎と実験室と訓練場と仮眠室とキッチンとガラクタ倉庫があってね。書斎はこの会議室の裏、裏っていうのはいつも僕が出て来てるところなんだけど、そこに二階に繋がる階段があるんだよ。その階段を上るとT字状なってるんだけど、そこを左に曲がったところにあるのが書斎なの。いつも開いてるから暇なときとか、調べものするときとかに利用するといいよ。本の持ち出しは自由だからそこは気にしなくてもいい、だけどあんまり持ち出し期間が長いとコールが怒り出すだろうからその辺注意してね。次に実験室だけど、実験室は二階の階段を上った先にあるT字状の所を左に曲がったところにあるよ。ここも書斎と同じでいつも開いてる。中にある備品は自由に使っていいから、暇なときとかに是非。ちなみに量産型の古代遺物もここで作ってる。訓練場は説明しないよ、頑張って思い出してね。次は仮眠室だね。仮眠室はそっち側の廊下の突き当りを左に曲がったところにあるT字をもう一回左に曲がった後、もう一回左に曲がったところにある部屋だね。眠くなったときは使ってね。ちなみにユイとロフォカレも使ってる時がある。一応寝室は用意してるんだけどね。なんでも狭いから使いやすいそうだ。キッチンは仮眠室の反対側にある部屋だよ。そこにある調理道具は勝手に使ってもらって構わない。ここもたまにユイとロフォカレ、あとコールがたまに使ってるから、一応覚えておいて。後はガラクタ倉庫、これはついさっき言った・・・」


 あまりにもくどい。

 流石にこれを覚えるのは・・・。


「ねぇフェルシア、要点だけ話してくれないかしら。あなたの悪い癖が出てるわよ」


 おっと、コールがフェルシアにそう伝えてくれた。

 ありがたい限りである。


「そんなに長かったかな?」

「長いわよ」

「ふ~ん、まぁ君が言うならそうなんだろうね」


 そう言うと少し考える仕草をしたフェルシア。

 しばらくの逡巡の後、口を開く。


「じゃあ要点だけ話すと、この城にある設備は自由に使ってくれて構わない。ただし魔法陣部屋のすぐ近くにある地下室には入っちゃだめだ」


 おっと、急激にわかりやすくなった。ありがとうございます。


「入っちゃダメなのは地下室だけなんだな?」

「うん、他は自由に入ってもいいよ。ただ俺たちに部屋に入るときはノックしてくれよ?」

「その部屋はどこに?」

「見ればわかると思う。掛札があるから」

「分かりました、もう大丈夫です」

「うし、ならいい。絶対地下室には入っちゃだめだからね、覗いたら殺す」


 冗談みたいな口調だが、目はマジだった。

 多分本当にやると思う。


「ちなみに何があるんです?」

「それは内緒」

「俺様は知ってるぜ。大量のエロ本さ、それもアブノーマルな奴」

「え、覗いたの?だったら殺しちゃおっかな~?」

「ッ!?本気にしないでくれよ、冗談だから。な、だからその武器をしまってくれ。ちょっと、無言で近づいてこないでよ!?なぁ、冗談だよな、な!?」

「冗談でこんなことしないよ~?」

「ひ、ひぃ~!!」


 ルーが今までに見たことがないくらいの怯え顔である。

 でもそれは無理のないこと、だってフェルシアの放つ殺気が本物だったから。

 ルーみたいな強者じゃなかったら、泡吹いて死んでたかもしれない。


「な~んてね、冗談だよ。鍵かけてるからそう簡単には入れない、力づくじゃ壊せないから、少なくとも君には無理さ」

「ははは、もう俺も冗談言わねぇよ。だからさ、その冗談で出してる鞭をしまってくれよ」

「えぇ、でもなぁ、言うことを聞かない獣は調教しないとだよね?」

「え、いや、冗談ですよね?」

「なわけないでしょ~、僕は君に一回教えてやったはずだけどな~。言う事聞けない奴には体に教え込んでやらないと~」

「フェルシアよ、その辺にしておけ。ユウキが引いておるぞ」


 抑止の声を掛けたルキフゲ。

 そしてそれを聞いたフェルシア、首をぐるりと回す。

 マジで怖い、ホラー映画みたいな顔である。ルーがビビるのも無理はなかった。


「え?あ、ほんとだ。いや~、ね、これは冗談だから」

「そうですか」


 こんな乾いた返事しか返せない。

 絶対にこの人には逆らわない、心の底からそう思った。


「こほん。ま、この話はここまでにして、ユウキ魔王就任を祝って、打ち上げでもやろうじゃないか」


 咳払いして、フェルシアがそう促す。

 魔王連中の中から、反対の声は上がらなかった。


「おお、そりゃいいな。折角の機会だし、俺様も参加させてもらうぜ」

「夜更かしはお肌の大敵だけど・・・、今日くらいは良いかしらね」

「然り、然り、たまには羽目を外すのも悪くはなかろうて」

「ははは、それもそうだね。ただお前は飲めないし食えないよな?」

「でしたら酒と食事の準備を。嫌いなものはありますか?」


 皆様盛り上がっている。 

 だけど俺には一つだけ、心配事項があった。


「・・・どうした、ユウキ?浮かない顔して」

「すんません。今何時くらいですかね?」

「ふむん、大体午後九時、良い子は寝る時間だな」


 この世界の時間も、ちょうど二十四時間周期である。

 そして朝昼夜の区分も、大体同じくらいだ。


「別に気にすることないよね?子どもじゃないんだし」

「確かにそうだけど、俺って会議を抜け出してきたんだよね。ついでに言うとギルレオンにお邪魔させてもらってる身だから、遅くなるなら連絡を入れておきたいんだ」

「でしたらそうした方が良いかと。私も打ち上げの準備をするので」

「悪いな」

「お気になさらず。それで、嫌いな食べ物はありますか?」

「酒は飲めない、まだ飲んだことがないんだよな」

「おっと、お前もユイみたいなこと言うのな」

「ユイさんがどうかしたって?」

「打ち上げ中に話す。今は連絡を入れたほうがいいよ」


 フェルシアがそう促してくる。

 そしてコールも、打ち上げの準備のためにキッチンに消えていった。


「じゃあそうしますね」


 一応そう言ってから、魔法通話を起動する。

 だけど応答が帰ってこない。

 そうじゃん、中から外への魔法が使えないんだった。

 

 ・・・あれ?じゃあフェルシアはどうやって俺をここに転移させたんだ?


「フェルシア。どうやって俺をここに呼んだんだ?」

「座標を特定したのさ」

「座標?」

「そう。一口に炎の魔法って言っても、火炎放射みたいなやつもあれば、一点だけ爆発させるタイプもあるだろ?ここの結界、前者の場合は阻害するけど、後者の場合は阻害しないのさ」

「なるほどね。で、その座標の特定はどうやって?」

「俺の能力さ」

「能力か。じゃあ能力以外では不可能なのか?」

「いいや、その限りでもないよ。今のユウキなら僕の座標が特定できるでしょ」

「あぁ確かに、見える範囲なら可能だな。でも結局遠隔の特定は無理なのか?」

「能力無しなら僕でも無理だ。ただ心と心の間に、強い結びつきがあったなら不可能でもないらしいけど」


 強い結びつき、ね。

 一つ試してみるか。


『アリナ、聞こえるか?』

『ま?リュートさん、急に話しかけてきてどうされたんですか?ひと段落付いたんですの?』


 やはりうまくいったか。

 念話の相手はアリナ、少しびっくりした感じだったが、すぐに落ち着いていた。

 王の盾の本質は”信頼”。その結びつきは非常に強固なものなのだ。


『あぁ、めでたく魔王就任だ。ただこのあと打ち上げがあるらしくて、今日はちょっと帰れない』

『分かりましたわ。ちゃんと伝えておきます』

『悪いな』

『いえ、気にしないで』


 本当に親切にしてくれる。

 今日までは甘えっぱなしだが、明日からはまた変わってくるだろう。


『明日からちゃんと、受けた恩を返せるように頑張るから』

『もう十分ですよ、そう気張る必要はありません』

『・・・そっか、そう言ってくれるとうれしいよ』

『うふふ、それに、頑張らないといけないのはお互い様ですもの。これから忙しくなりますわ』

『だな』

『えぇ、よろしくお願いしますね、旦那様っ』

『・・・切るぞ?』

『えっ、何でですの?もう少しお話ししたいのですが・・・』

『明日の早くに帰るから、そん時でいいだろ?』

『えぇ?ま、まぁそれならいいですけど・・・』

『うし、じゃあな』

『あ、ちょっと・・・』


 抗議を無視して魔法通話を切る。

 あのままだとアリナのペースに吞まれてただろうからな。


「ふぅ」


 いったん一息ついて、周りを見渡す。

 すると残った魔王共全員が、にやついた顔でこっちのほうを見ているのに気が付いた。


「何だ?」

「ユウキ、顔が赤いぜ。女とでも話してたのか?」

「・・・まぁそんなところです」

「初心だな、お前。俺様はとっくに忘れちまったぜ、そんな気持ちはよ」

「・・・付き合いが長いと忘れるもんなんですか?」

「安心したまえ。それも理由の一つだろうが、一番の理由はこいつら獣人が一夫多妻制を取ってるからだろう。だからこいつみたいな強い男の周りには、沢山の女獣人が集まるのさ」

「その通り。だから毎日退屈しねぇ、毎日違う女が抱けるからよ」

「ふんっ、貴様のような色好きに、イズナ嬢はふさわしくないな」

「おっと、イズナが望むなら、俺の周りの女全員捨てる覚悟はあるぜ?」

「ふざけないで。誰が貴方みたいなところに嫁ぐもんですか」

「その通り、イズナ嬢を幸せにできるのはこの・・・」

「あんたのとこもごめんよっ!!」


 そうはっきり言い放ったイズナ。

 だがクゥエンディはさほどショックを受けた様子もなかったので、普段からこんなやり取りをしているのかもしれない。


「そうやって言うけどさ、イズナの理想の相手って誰なの?今まで聞いたことがないけど」


 フェルシアがそう問いかける。

 そしてクゥエンディとルーは、この答えを絶対聞き逃すまいと、とんでもない集中力を発揮していた。

 そしてその本人であるイズナ、頬を少し紅潮させ、こう言った。


「白い鎌鼬に乗った王子様」

「へ?」

「だから、白い鎌鼬に乗った王子様を私は待ってるのっ!!」

「「・・・」」


 そう宣言したイズナ。

 クゥエンディとルーがお互い顔を見合わせている。

 どうしたらいいの?とでも言いたげだ。


「ははは、まぁ来るといいね」

「きっと来るわ。その日までずっと待ち続けるわよ」


 頬を紅潮させて、そう言ったイズナ。

 こういう仕草一つ一つが、男を惚れさせるんだろうな。


 そんな風にくだらない会話を交わしていたのだが、突然”解析・鑑定”がある提案をしてきた。


ー告。主様の制限解除によって、精神体のエネルギーが飽和され始めました。このエネルギーを余すことなく使用するためには、一度”創造者”によって能力を最適化する必要があります。


 曰く、俺が進化したことによって、”魂”から放出されるエネルギーの量が増えたのだと。

 しかしそれらすべてを余すことなく利用するのは難しいらしく、今の所垂れ流し状態になっているようだ。

 その垂れ流しを防ぐために”創造者”を使う必要があるみたいだけど、それを俺に伝えてどうしたいんだ?


ー”創造者”の行使権を”解析・鑑定”に譲渡していただきたいのです。そうすればすぐに作業に取り掛かれます。


 そういうことね。

 要は俺の代わりに”創造者”を使って、能力の最適化を行ってくれるのか。

 だったら断る理由はないな。


『オーケー、譲り渡すよ』


ー・・・告。譲渡されました、すぐに取り掛かります。


 そう言うと、”解析・鑑定”は俺の能力をいじくりまわし始めたようだ。

 何か俺の中で、大きな力がぐるぐるし始めた気がする。


「皆様、準備が出来ました」


 そしてコールさんのほうも、打ち上げの準備ができたようだった。

 その両手にはこれでもかってくらいの酒と料理が乗せられている。


「よし、じゃあ、始めるか」


 コールさんが酒と料理を円卓の上に置く。

 いつの間にやら白布と食器類も用意されていた。


「じゃあ、ユウキの魔王就任を祝って、乾杯ッ!!」


 満面の笑みで、フェルシアが宴の開催を宣言する。

 夜はいまだ始まったばかり。

今週末に注射打つので、来週の投稿はありません。

次の投稿は十一月八日です。

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