遺跡探索1
サノスに連れられて遺跡にやってきた俺たち。
その遺跡は鬱蒼とした森林の中で、すさまじい存在感を放っていた。
まぁ大自然の中で、急に人工物が現れたらそれも当然か。
「ここが目的の遺跡です。中に何があるのかわからないので、私が先導しましょう」
「でしたら私も。これでも魔法には自信がありますので」
「え、だったら俺も・・・」
俺もそこそこ実力に自信があった。
だからそんな提案をしたのだが、二人によって断られてしまった。
というのも彼らにはそれなりの考えがあったようだ。
「いえ、リュート様は我々の後ろに。後方からの奇襲にも備えなければいけませんので」
「そうそう。索敵の自信はあまりないからね」
何でも入り組んだ地形ゆえ、奇襲の察知がしにくいらしい。
そういう事ならこの布陣も納得である。
「分かった。後ろは俺に任せてくれ」
二人が頷く。
作戦会議もこのくらいにして、俺たちは遺跡内部に侵入するのだった。
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遺跡の中は光源の類が何もなく、まさしく暗闇の中といった感じである。
流石にこの状態で探索をするわけにはいかない。
ロメオさんが照明の魔法を放って、周囲の光景を照らし出した。
「これは、迷路ではなく一本道だったようですね」
そして現れたのは迷宮とは程遠い一本道。
てっきり遺跡=迷宮の構図だったので、少し面食らった感じである。
映画や小説だったら落胆ものである。だがしかし今の俺たちはたいしてがっかりしていない。
むしろ喜ばしいことであった。
「だったら迷うことはないですかね?」
「今の所はないでしょう。もう少し先のことは分かりませんけど」
迷ったり奇襲を受ける可能性が、ガクンと下がるからだ。
ああいったものは非現実だからこそ楽しめるものである。
「まぁ念のため気を付けて進みましょう。何があるかはまだ分かりませんから」
サノスがそう言って注意を促した。
俺たちもそれに頷いて、慎重に探索を進めていった。
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「ここに来てやっと遺跡らしいものが出てきましたね」
一本道の突き当り、そこを左に曲がったところにあったのは、石製の巨大な扉。
その扉には何らかの絵のようなものが刻まれていて、歴史的な価値も結構ありそうだった。
「リュート様、中の反応を察知できますか?」
「ちょっと待ってね・・・。えっと、結構たくさんいるな。部屋の中は結構広いんだけど、壁とか天井とかにも張り付いてるみたい」
張り付いているというか、染み込んでいるようだった。
これはたぶん・・・。
ースライムの類でしょう。
あ、俺が言おうとしたのに!!
もういい。
”解析・鑑定”も言っているように、多分スライムの類だ。
スライムといえば出典によって強さも見た目も様々。
例えば国民的RPGなら弱弱しいことこの上ない種族である。
だが俺の愛読書である某ライトノベルの場合、一口でスライムといっても結構な種類がいた。
主人公は最強クラスだし、その支配下にある迷宮生息のスライムたちは、阿鼻叫喚の形相を作り出していたし。
というわけでここは俺が先頭を切るのが正解だと思う。
この中で一番打たれ強いのは俺だろうし、不測の事態にも対応できる。
「多分中身はスライムみたいだ。ここは俺が先陣斬って倒してくるよ」
「スライム程度なら私が・・・」
「いや、サノスは後ろで待っててくれ。もしかしたら変な種族かもしれないだろ?」
「まぁ確かに否定はできないね。スライムって生息地によって結構差があるようだし」
「なるほど、確かにその通りですね」
「分かってくれたか?」
「はい、十分に理解できました。リュート様、ご武運を」
サノスも納得してくれたみたいだった。
というわけで俺は石製の大扉を、ギイギイと音を立ててこじ開けた。
そしてダッシュで突入し、照明の魔法で辺りを照らす。
「おやおや、結構のお出迎えだね」
そこにいたのは大量のスライムだった。
まぁ事前にわかってはいたが、実際に目の当たりにすると結構ビビる。
そしてそのスライムたちだが、俺を認識するや否や、一点に集まり始めた。
天井から、床から、壁から、染み込んでいたスライムたちも巻き込んで、どんどんと巨大化していった。
「なるほどなるほど。これが”なんとスタイムたちが…!?”ってやつか」
そして最後の一匹を吸収し、合体を終えたスライム。
頭のてっぺんには王冠を模したかのような突起が出来上がり、肌?の色も無色透明から黄金色へと変色している。
そしてそのサイズも、先ほどとは比較にならないほどに巨大化していた。
変身前は膝まであるかないかくらいだったが、今では俺の身長を優に上回っていた。
まぁ俺からしたらありがたいけどね。
だって的がでかくなっただけだから。ついでに言えば俺の魔法によって、遺跡を壊す心配もなくなったわけだし。
ブルルルルォォォ!!
巨大スライムが体を震わせ、雄たけびのような声を上げる。
そしてその刹那、その体から触手を伸ばし、俺の体を貫こうとする。
結構な速度で放たれたそれだったが、ウルスラさんの剣戟には遠く及ばない。
特に焦ることなくその触手を回避する。
そして振り向きざまにそれをつかみ、とある魔法を発動した。
「蝕雷」
蝕雷。これは例の魔人の使っていた”死毒”をもとに作成した、俺のオリジナル魔法である。
アレの力を借りるのは少々癪だが、この世界ではそんなことを言ってられない。
蝕雷はその名の通り、体に侵食し、その内側から焼いていく魔法である。
今回の場合は、触手から雷が入り込み、だんだんと本体へ侵食していくわけだ。
バチバチと火花を立てるスライムの触手、触手は黒焦げになり、雷は触手をたどって本体にたどり着いた。
「弾けろ!!」
そしてその号令の後、俺の放った雷は爆弾の如くはじけ飛ぶ。
スライムはその体を内から焼き尽くされ、その身を灰へと変えていった。
「おい、片付いたぞ」
スライムが絶命したのを確認し、二人に合図を送る。
「流石はリュート様。素晴らしい蹂躙劇でありました」
サノスがそう言って褒めてくれた。悪い気はしない。
「まさかあそこまで圧倒するとは思わなかったよ。それじゃ、先を急ごうか」
そう言ってロメオが先を促す。
サノスも俺の前に立ち、先導して歩き始めた。
ルンルン気分で歩く俺。
この時の俺はまだ知らなかった。
この遺跡探索が、俺の今後を大きく動かす、大事件をもたらすことに。
悪い事件ではない。
今後も起きないんじゃないかな。




