洞窟を抜けて
読んでいただきありがとうございます。
*あらすじ:無事に洞窟から脱出、異世界ライフのスタートです。
”取り敢えず街に出ようか”
つい先ほどまで色々考えていたが、最終的にたどり着いた結論はこれだった。
俺が読んだライトノベルのほとんどが町に向かっていたし、この世界は恐らく、その本の世界に近しいものだと思われる。だから今の俺にとってもこの行動が正解だろう。
そう考えて出口を探そうとしていたのだが、一つ失念していたことがある。
果たして今の俺はどんな姿をしているのだろうか。
転生前の人間の姿ではないのは確か、髪色からして違うのだ。
だから”先代”というのも何となく受け入れていたのだが、この世界の一般的な人間がこの姿を受け入れられるかは別。肌の色は前世とほとんど同じだが、体の全体像は掴めていない。もしかしたらとんでもない風貌をしている可能性だってある。
まぁこの風貌の基準は、某ハリネズミの会社のヘリコプター並みに信用ならない俺の美学に委ねられるわけだけど。
というわけで、鏡の代わりになりそうなものを探してみる。えっと・・・、あったあった。
そこそこ大きい湖、そこにひょこっと顔を出してみる、果たしてどんな風貌なのか。
「お、思ったよりかっこいい」
思わず叫んでしまった、自分で言うとナルシシストみたいで嫌なんだが結構かっこよかった。
髪の色は赤色、これは前々から分かっていたのだが、顔立ちが思ったよりも人間よりで安心した。服もまぁ異世界ファンタジーでよく見かける服装なので多分問題ない。多分。
というか人間といっても遜色なかった。人ごみの中にいてもさほど目立たないであろう、まるで違いが見当たらない。
オークとかゴブリンだったらどうしようかと思っていたが問題なさそうだな。
それでは街に出るとしよう・・・、そういや街ってどっち?
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街を目指して意気揚々と森の中を駆けずり回ってるわけなのだが、先ほどから全然抜け出せない。さっきからずっと同じ景色ばかりで、進んでいるのかすらわからない。
まぁ歩みを進めている以上、進んでいないということはないんだろうが、結構心配ではある。
そんなこんなで、だいぶ心細くなっていたのだが・・・。
「・・・ッ!!・・・だッ!!」
どこからともなく叫び声が聞こえてきた、普通の声だったら手放しに喜べたんだが、叫び声となるとなぁ。
まぁ、行かないという選択肢はないのだが。少しビクビクしつつも、俺は叫び声の元目指して駆け出した。
そして叫び声がひっきりなしに聞こえたおかげで、その声の出どころは案外簡単に見つけることが出来た。
「うぉぉい、リンダさぁん。こっちに来ましたよぉ!!」
「えぇい、いちいちビビるんじゃないッ!!それでも誇り高きギルレオンの騎士か!!」
「ライン、あまり動き回らないでくれ!!狙いが定まらないだろーが!!」
「無理ですよぉ!!怖いものは怖いですー!!」
老騎士っぽい人と魔導士っぽい人、そしてやたら叫ぶ金髪の男性、鎧を着ているしどうも騎士らしい。だがいささかビビりすぎな気もする。
そしてその騎士がビビっている原因は、一体の巨大なイノシシであった。まさしく猪突猛進、騎士の尻目掛けてとんでもない勢いで突っ込んでいた。
イノシシか、向こうの世界ではニュースの中とモ〇ハ〇の中でしか見たことないな。
・・・ん?あれは・・・。
「馬車か?」
如何せん馬車というものを、向こうの世界で見たことがない、だから予想の範疇でしかないんだけど馬車、か?いや馬車だな、馬もいるし。
しかし豪華な馬車だな、馬車なんてそれこそアニメの中でしか見たことがない。そして俺の目の前にある馬車は、そのアニメの中にあった馬車かのようだった。
ただどうしたものか、ここであいつらに恩を売っておくのも悪くない。
だがあのイノシシの前に飛び出して大丈夫なのか、仮に飛び出したとしてどうしたら良い?
・・・いや、もう答えは出ていたみたいだな。考えるだけ無駄みたいだ。
偉大な先駆者たちならば、誰一人としてこの場を立ち去ったりしないだろう。立ち去る奴もいるかもだけど、結局は戻ってくるはず。だから俺もそれに従うことにしよう、というかこの後の生活を円滑に進めるには、絶対にここで恩を売るべきなのだ。
それにこの体になってから体の調子が非常に良い、ここいらでこの体の使用感を確かめておくのも一つの手だと思う。周りに頼れる人たちがいるわけだし、リカバリーは効くはず。まぁ約一名は論外だろうけど。
感情的にも論理的にも行かない理由がなくなったところで、騎士たちのもとへ走り出す。
不思議と緊張はなかった。
お読みいただきありがとうございました。




