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とある魔王の無双譚  作者: azl
魔人との激闘
23/145

決戦前夜

挿絵(By みてみん)

この世界の地形は大体こんな感じです。

名前は一部省略しております。

見切れていますが本大陸は海に囲まれている設定です。

 主の命を受け、ウェイトリー村の調査を続けていたクレイ。


 時刻は夕刻、明日で魔人の宣戦布告から三日、そろそろ動きがあってもおかしくはない。

 そう考え普段以上に慎重になっていたのだが、その考えは正解だった。


「森が騒がしい?」


 静かな夜に草木が揺れる音が響き渡る。

 それは風が草木を揺らすから。

 だけど今日はそれ以外にも原因がある気がして・・・、


「ッ!!アレはッ!!」

 

 驚いたような声を上げたクレイ。

 だが無理もない。不帰の森から現れたのは、凄まじい数のゴブリンだったのだ。

 とてもではないが両の手では数えきれない。

 極極稀に人里に出没することもあるゴブリン、だが今回はそんなチンケなものではない。


 数が異常すぎるのだ。

 ゴブリンが人里に現れるのは食料を奪うため。だがこの数ではそれが目的とは思えない。

 この量は人里への侵略レベル、そしてその推測は正解だろう。

 恐らくこのゴブリンたちが今回の戦争相手となる。


 そう考えつつ、不帰の森を観察し続けるクレイ。

 そして見た。おぞましいそれを、生命への冒涜を。


「・・・外道が」


 クレイの口から漏れ出た言葉。

 彼が見たのは三つの肉塊。その三つの肉塊は、ゴブリンの群れの後ろを追随するように歩行している。

 そしてその表皮には、人の皮膚のようなものが散見された。

 恐らくはウェイトリー村で起きた事件での、被害者のものだろう。


 そしてその肉塊は、それぞれ男性、女性、子どもを模したかのような形をしていた。

 明らかに何者かが、死者を材料にして作ったとしか思えない。


 クレイはそのことに怒りを覚えながらも、自分の責務を果たすため、報告に戻ろうとして、


「フハハハハ、どうだ、人間。お前らを模して作ってみたのだが?」


 そんなおぞましい声が耳元から聞こえてきた。


 急いでその場から離れるクレイ、そこにいたのは赤髪の魔人だった。


「で、どうなんだ?素晴らしいと思わないか?」


「・・・最低だな」


「ほう、お前たちを模してみたのだが駄目だったか・・・」


そう残念そうに呟いた魔人は、口角を三日月のように吊り上げ、


「だったら新しいのを作らないとなッ!!」


 クレイ目掛けて拳を放った。


 だがしかしそこにクレイの姿はない。

 あったのは人の形を模した木、クレイの応用能力(アプリードスキル)”変わり身”である。


 クレイは初めから魔人と交戦するつもりはなかった。

 自分の実力では、魔人に敵わないことを悟っていたのだ。

 彼の目的は情報を持ち帰ることであり、魔人に挑んで玉砕することではない。


 怒りを覚えつつも、彼の思考は冷静だったのだ。


「チッ、逃げられたか、せっかくいい餌になると思ったのだがな」


 逃げられたことに腹を立てた魔人は悪態をつく。


 そして、


「クソがッ!!」


 整列が完了したことを伝えるため、自分のそばに駆け寄って来ていたゴブリンを殴り潰した。


 「グギャア!!」という悲鳴とともに血肉が飛び散る。


 それでも魔人はぐちゃぐちゃと何度も殴りつける、もはやそれがゴブリンだったと分かるものがいなくなるほどに。


「チッ、人間どもが俺様を虚仮にしやがって!!」


 魔人が怒気だけをはらんだ叫びをあげる。

 その顔も怒りに歪んでいた。


「お前ら、行くぞ!!人間どもの街を血祭りにあげてやる!!」


 その命令の後、侵攻を開始するゴブリンの群れ。

 決戦まで残り十三時間。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「リュート殿、少しばかりよろしいですかな?」


 俺は昼食を食べた後も、大広間での訓練を続けていた。

 その途中で、突然背後から声を掛けられた。


 その声の主はこの国の現国王ロイド・ギルレオン。


「あ、お父様。どうなさったのですか?」


 俺の作ってやった木彫りのクマを大事そうに抱えたライナスが、そう問いかけた。


「む?今日の夕べ、民たちに演説を行うだろう?」


「そういえばそうだったね・・・。もしかしてリュートさんにもやってもらうつもり?」


 ロイドはその質問に首肯で答える。

 そして俺の方に向き直り、言葉を発する。


「先ほども言った通り、今日の夜、我は国民たちに向けて演説を行うつもりなのだが・・・」


「そこに俺を呼びたいってことですよね。何でです?」


 別に俺はいなくてもいい気がする。

 そう思っていたのだが、ロイドさんには考えがあったようだ。


「民たちを安心させるためですな。ぜひともリュート殿には魔法を使って、その力を示威してもらいたいのですよ」


 なるほどね。

 俺の力なら魔人なんて恐るるに足らぬ!!ってのをアピールしてくれってことか。


「そういう事なら喜んでお受けしましょう」


「おお、感謝する」


 ロイドさんが満足げに笑みを浮かべた。


「でもどうやって見せつけてやりましょうかね?」


「ははは、それに関しては我々にはわかりませんな」


「そうだね、オズも訓練場に行っちゃったし」


「我々、魔法はまるでダメなのである」


 そうなのか。

 聞いた話、魔法を使うのはともかく完全に使いこなすのは、そう簡単にできるものではないらしい。

 そう考えると俺の”能力模倣”ってぶっ壊れなんだな。


「じゃあ後で相談して決めることにします」


「うむ、よろしくお願いする。それでは我は用事があるので失礼するぞ」


「分かりました。お仕事頑張ってくださいね」


「あぁ、それでは後程」


 そう言ってロイドさんは大広間から去っていった。


「さてと、私も剣の練習でもしますかね」


「剣?」


「あぁ、ライナス兄さまはこの国でも屈指の剣士なのだよ」


「へ~」


「明日の戦いで後れを取るわけにはいかないからね」


「え、ライナスさんも戦場に?」


「はい、そうですが」


 ライナスが当然のことのように頷く。


 前に聞いたことがあるが、ギルレオン軍の戦力は非常に弱い。

 一騎当千の実力者などほとんどいないのだ。


 だけどライナスはその一騎当千の実力者にカウントされているそう。

 だから自分が出ないわけにはいかないのだ、と言っていた。


「じゃあお互い頑張ろうな」


「はい、それじゃあ僕は剣を持ってきますね」


 そう言ってライナスも大広間から去っていく。


「・・・俺も頑張らないとな」


「あぁ。我は兄さまや母様と違って、戦に関してはからっきしだ。だがそれでも、明日は自分にできるだけのことはやるつもりである」


 そう宣言するリグ、その表情は決意と覚悟に満ち満ちていた。

 俺も魔人なんかに絶対に負けるわけにはいかない。そう思った。



 ところ変わってロイドの執務室。

 その部屋の中に三つの人影があった。


 一つはこの部屋の主、ロイド。


 その彼が机の前に立つ二人に問いを発する。


「プリケ、ギース、おぬしらの祖国への報告はどうなっておる」


 もう二つの人影は、ショクチェンドゥの大使、プリケとゴケンコウの大使、ギース。


「当方はすでに”魔法通話”にて連絡を取っております」


 ロイドの質問に対して、そう答えたのがプリケ。

 茶髪の女性である。


「こちらはまだです。私は魔法通話は扱えませんので」


 そして今、その質問に答えたのがギース。

 緑髪の男性である。


「ふむ、ではどうするおつもりで?」


「部下を本国に向かわせる予定でございます」


「分かった。護衛は必要か?」


「不要です。自分の身ならば自分で守れることでしょう」


「確かにそうだったな」


 基本的に大使及びその部下は有事の際に対応するため、実力者が任命されることが多い。

 現にギルレオンがショクチェンドゥとゴケンコウに派遣した者たちも相当な実力を誇っている。


「で、あるならば早急に出発させてくれ、あまり時間がないからな」


「かしこまりました」


「では皆様方、援軍のほう、よろしく頼むぞ」


「「ハッ」」


 魔人襲来とは未曽有の大災害。

 そして魔人の言い分から察するに、奴は人間を殺すことでその力を増すことが出来る。


 仮にギルレオンが魔人に滅ぼされようものなら、それはキルクルス半島壊滅の危機となりうるのだ。

 ゆえにゴケンコウ、ショクチェンドゥともに協力を惜しむつもりはない。


 もっとロイドは彼らに頼り切るつもりはない。

 そもそも彼らの援軍が、本戦開始に間に合う保証はないのだ。


 だがそれでも負けるつもりはない、彼はこの戦いのため、最善を尽くしてきたのだから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 時刻は十九時。

 ロイドの演説が始まった。


「民たちよ、今ギルレオンは魔人襲来という未曽有の危機に瀕している」


 そう宣言したロイド。

 その演説を聞く者たちは、そろって不安そうな顔をしていた。


「だが安心してほしい。我々が魔人に屈する必要はない!!なぜならば、我が王国には彼の者を上回る実力者がいるのだから!!」


 そしてロイドはその人物に対して、側に来るよう合図を送る。


 あらわれた人物は赤髪の男だった。

 その赤はまさしく真紅とでもいうべき色をしており、彼の放つ美貌を引き立てている。


 聴衆の何人かが彼に見惚れる中、王に呼ばれた彼は天に向かって手をかざす。

 そして、


獄滅炎(デスフレア)


 彼の手から放たれた灼炎が夜空を照らした。

 夜の帳を消し飛ばすか如き閃光が、暗がりを覆いつくす。


「我が民たちよ!!恐れる必要はない。明日の戦いの勝者は、我々なのだ!!」


 聴衆から猛々しい歓声が上がった。


 彼らの中に敗北を疑うものなどいなかった。

 皆自国の勝利を確信しているのだ。


 決戦まで残り十二時間。

次回導入は変わりませんが、その次にもう一つお話を挟もうと思います。

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