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とある魔王の無双譚  作者: azl
魔人との激闘
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頼まれごと

そろそろリュートには無双してもらいたい。

タイトル詐欺になってしまう。

 食堂にガルドを連れてきたことの責任を問われ、ご年配の召使さんに連れられて行くラトさんを横目に食べる朝食は非常に美味しかった。

 連れ去られなかったとしても美味しかったんだろうけど。


 さて、そんな感じで朝食を済ませた後、俺が向かっていたのはロメオさんの研究所である。

 朝起きたらガルドの体が大きく変化していた。そしてその原因は進化が起きたからとのこと、その進化についてロメオさんに聞いてみようと思ったわけだ。


 その進化した本人であるガルドも、俺の後ろを尻尾振りながら付いてきている。

 これを見てこいつがオオカミだって分かる人などいるのだろうか?

 百人中百人が犬だと回答するだろうな。


 そんな可愛い犬(ガルド)を連れて城の中を歩き回っていたら、


「おはようございます、リュートさん。その子はもしかして・・・」


「わんわん!!」


「あら、ガルド!!元気になったのね!!」


 アリナに声を掛けられた。


 アリナの声を聴いたガルドは嬉しそうに走り出した後、アリナの周りをぐるぐる回っている。

 楽しそうだ。


「あらあら、元気そうでよかったわ」


「だろ?朝起きたらこんな感じだよ。でもまぁ元気になって本当に良かった」


「えぇ、本当に。ところでリュートさんはどこかに用事かしら?あなたの部屋は反対方面だったはずだけど・・・」


「あぁ、ロメオさんに用事があって・・・」


「ロメオさんなら多分留守だと思いますよ」


 え、まじ?


「そうなの?」


「はい。なんでも昨日の早朝から、調査で出かけられているそうですよ」


そう言われてみると、昨日の朝に馬が出ていくのを見た気がする。

だけどそれは残念だ、元気になったガルドを見せてやりたかったのに。


「それは残念、せっかくガルドが元気になったのに・・・」


「本当に残念ねぇ。・・・ところで」


「なんだ?」


「ガルドってこんなに大きかったかしら?それに毛の色もちょっとだけ変わってるし・・・」


 やっぱ気になるよな。


「ラトさん曰く進化したからだってさ。本当はそのことについてもロメオに聞きたかったんだけど」


「あら、進化ですって?珍しいわね」


 おや、アリナは進化について知ってるのかな?

 まぁ”進化”って言葉のニュアンスで大体どういう事か分からんでもない。

 だけどまぁ念のためって言葉もあるしね。


「なぁ進化って何なんだ?あんまりよく知らないんだよ」


「私も詳しくは知らないわ、昔本で読んだだけだもの」


「知っていることだけでいいんだ」


「分かったわ。・・・でもせっかくだし歩きながら話しましょ?ガルドにも会わせたい子がいるし」


 そう言ってガルドを抱きかかえるアリナ。

 抱えられたガルドは目を細めて幸せそうな表情だ。


 でも一体誰に会わせたいんだろうね?


「別にいいけど、誰に会わせたいんだ?」


「ヴァナルに会わせてあげたいのよ。同じ狼だし多分仲良くできるんじゃないかしら」


 そういう事か。

 ガルドも同族の友達が欲しいだろうし、それがいいかもね。


「確かに良い考えだな」


「でしょ!!彼はこの城の中庭にいるの、結構広いけど呼んだら来るはずだから安心して頂戴」


 そしてアリナは意気揚々と歩きだす。

 ガルドもアリナも楽しそうだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「「わんわん!!」」


 ヴァナルにガルドを会わせたところ、思ったよりも相性が良さそうだった。

 今は二匹そろって、城の中庭を駆けまわっている。


「仲良さそうでよかったですね」


「そうですね」


 差し込む太陽と心地よい涼風で、爺さん婆さんみたいになっている。


 そしてしばらくのほほんとしていたのだけど、終わりの時間はすぐにやってくることになった。


「リュートさん、ちょっといいかしら?」


 後ろから声をかけられたので振り返ると、ウルスラさんが立っていた。

 その後ろには、調査に出かけていたはずのロメオもいる。


 だが彼ら二人の表情は真剣そのもの、呆けている場合ではないのかもしれない。


「いいですよ?何の用です?」


「それに関しては私から」


 そう言ってロメオさんが俺のほうに近寄ってくる。

 そして、腰を折り、頭を下げたかと思うと、


「どうか、どうか、魔人討伐へのご協力をお願いできないでしょうか!!」


 そんなことを言ってきた。

 今までにないほど切羽詰まった様子である。

 だがいきなりそんなことを言われても、うまく返答できない。


「一端落ち着いてください。状況の説明をしてくれませんか?」


「はい、実は・・・」


 ロメオ曰く、ウェイトリー村で魔人を発見、その後交戦するも敗北し、逃してしまったらしい。

 そしてその魔人は、三日後にこの国を攻めてくると言い残したそうだ。

 その宣戦布告からは一日経っている。つまりその魔人は明後日、この国に攻め込んでくるというのだ。


「本来であれば我々ギルレオン軍が始末するべき事案です。ですが我々の力では奴の討伐は不可能だと判断しました。差し出せるものなら何でも差し出します。ですのでどうかご協力お願いします!!」


「・・・分かりました。ただし、少しは協力してくださいよ?」


「!?よろしいのですか!?」


「まぁな。俺もこの国を気に入ってるし、俺の居場所はここなんだ。だったら俺も戦う、今の俺にできるのはせいぜいこれくらいだからな」


 俺は異世界に転生して、素晴らしい技術で素晴らしいものが作れるようになったわけでも、全てを知る知恵を手に入れて、世界全体をよりよく導ける存在になったわけでもない。

 俺が異世界に転生して得たのは凄まじいまでの力だった。


 向こうの世界では、力というものはあまり大きな影響を持ちえない。

 金と物が世界を動かし、知恵がそれを操る。

 そこへ力を介入させることはご法度とされていた。


 だがこの世界は違う。

 金と物が世界を動かし、知恵がそれを操るのだとしても、その盤面をひっくり返せる力があるのなら、そんなものは何の意味も持たない。

 力を持つ者こそが全てを得て、持たぬものは全てを失う。


 ほんの数日しかこの国には滞在していない、だけど俺はこのギルレオンが大好きなのだ。

 アリナ、ロメオ、ラガルト、ガルド、大切な人もたくさんできた。


 だからこそ、


「俺には力がある。大切なものを守るために、この力を振るいましょう!!」


 逃げるわけにはいかない。

 恐れや恐怖は不思議なことに湧いてこなかった。


「・・・ありがとうございます、ありがとうございますッ!!」


「あ、でも、さっきも言ったとおり多少は手伝ってくださいよ。例えば魔法とか」


「お任せを。粉骨砕身の覚悟で臨ませていただきます」


「お、おう。ほどほどにな」


 鬼気迫る表情だったので、こんな返答になってしまった。

 軽くけん制しておかないと、本当にやりかねない形相であった。


 そんなこんなで本日もまた、魔法訓練場へと足を運ぶことになったのだった。


というわけで次回の戦闘は無双させます。


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