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とある魔王の無双譚  作者: azl
魔人との激闘
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会合と邂逅

*あらすじ:リュートがウルスラに勝利しました。

 リュートとウルスラが激闘を繰り広げたその日の夜。

 魔法軍副軍長オズは、急遽受け取った大きな情報を国王ロイドに伝えるべく、彼の執務室を訪れていた。


「夜分遅くに失礼いたします」

「気にするな、大方緊急の用事なのだろう」


 無駄な挨拶は不要。

 オズもまたロメオと同じく職務怠慢の兆候があるので、彼女がこんなに遅くまで仕事をするはずがない。

 にもかかわらずこんな夜中にやってきたということは、何らかの異常事態があったと考えるべきだった。

 そしてその異常事態はおそらく・・・。


「はい。ウェイトリー村で魔人が発見されたとの情報を受けました」

「・・・やはりか。して状況は?」

「ロメオが交戦中とのこと。彼以外の調査員は、この情報を我が国に持ち帰るため、至急帰国せよ。という内容の命令を遂行するため、帰国いたしました」

「被害者はいるのか?」

「死傷者はゼロ名です。ただロメオの状況ばかりは・・・」

「ふむん。心配ではあるが奴なら問題あるまいよ」


 ロメオの実力はロイドも高く評価している。

 彼は絶対に生きて帰ってくると確信していた。


「・・・してこれからどうしましょうか」

「では、お前はロメオから魔法通話をいつでも受け取れるようにしておけ。情報が入り次第すぐに伝えるように」

「かしこまりました。それでは私はこれで」

「よろしく頼む」


 オズは一礼し執務室から出ていく。

 それを確認したロイドは、何もない部屋の片隅を見つめ、


「クレイ。お前にはウェイトリー村付近の調査を任せたい。異変が起きたら即刻伝えるように。ただし死ぬことは許さん。危なくなったら死ぬ気で戻って来い」


 自身の右腕に命令を下す。


「かしこまりました」


 その声の主は、オズにすらその存在を気付かせず、ただ部屋の隅に立っていた男、クレイである。

 そんな彼は国王の命令に返事をした後、霞のように消えっていった。


「・・・頼むぞ、お前たち」


 誰に言うでもなく、ぽつりとつぶやくロイド。

 一人一人が国のために戦っている、それはロイド自身も例外ではなかった。


「・・・念のため書簡を送っておこうか」


 そうつぶやき、筆を執るロイド。

 彼には彼の戦いがあるのだ。



 そんなことが起きていたとも知らず、すぅすぅと寝息を立てるリュート。

 だがそんな彼でさえも、明日は波乱の一日を過ごすことになるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どのくらい寝ていただろうか?俺の耳にはちゅんちゅんと小鳥たちがなく声が聞こえてきていた。

 そろそろ起きないとな。そう考え起き上がろうとする。

 だが目が上手く開かない、そして体も起き上がらない。まるで重石をのせられたかのように頭が圧迫されている。その重石はふさふさとした感覚だった。一応手で触ってみる、やっぱりふさふさしてる。

 この変なのの正体を突き止めないといけない。そう考え俺はがばっ、と力を込めて上体を起こす。

すると俺の体の上を何かがくるくると転がっていくのが分かった。その転がった先に目をやると、白い毛の塊があった。

 寝ぼけた頭でそいつを観察しているとその塊が突然、俺のほうに飛び掛かってきた。寝ぼけた脳みそでは当然処理が追い付くはずもなく、俺はそいつに押し倒される。あ、やべ。と思ったのだけど・・・。


「わんわん!!」


 そいつはそう吠えながら、俺を襲うでもなくぴちゃぴちゃと顔を舐め始めた。その生命体の正体は・・・。


「お前ガルドか!!目が覚めたんだな」


 ガルドだった。尻尾を振り振りしながら俺の顔を舐めるさまは、オオカミというより犬のようだ。

 だが、


「お前なんかでかくなってないか?」

「わんわん!!」


 心なしか一回り大きくなっている気がする。前は腕の中にすっぽり収まりきっていたが、今はおそらく収まりきらない。

 変わったというなら毛並みもそうだ。昨日は赤い毛が数本散見されるだけだったが、今はまるでメッシュでも入れたかのような見た目となっている。

 気になって解析・鑑定をかけてみたところ、種族名が”フォレストウルフ”から”デモンウルフ”へと変化していた。

 う~ん、何故だ?よく分らないのでロメオさんにでも聞いてみることにしよう。そう考えていたら、ドアをノックする音がした。


「リュート様、朝食の準備が整いました」

 

 え、朝食?


「朝食?もう朝なんですか?」

「はい。昨日も夕食をお知らせに参りましたが、すっかりお休みになられた様子でしたので」


 なんということだ。俺は昨日、一日中寝て過ごしたらしい。

 その事実に若干陰鬱になりながら、今日は真面目に生きよう心を入れ替える。そのためにはまず朝食から、俺は少し駆け足でドアのもとへと向かった。

 だがその前に、


「わんわん!!」


 ガルドがドアを蹴り開けてしまった。


「あ、こら!!」

「きゃ!!いったい何事ですか・・・ってあら?」


 慌てて駆け付けたら、ガルドがラトさんを押し倒して顔をぺろぺろ舐めている。

 ラトさんは出るところは出てる、いわゆるモデルスタイルだ。あらゆる男の視線を釘付けにする、凄まじいボディーラインを有していらっしゃる。

 そんなわけで文章だけ見ると危険な感じがぬぐえないが、一応ガルドは女の子なので、そのぺろぺろは親愛の情によるものだろう、きっと。

 そもそも犬が人間に欲情するはずがない。


「あら、ガルド。元気になったのね?」

「わんわん!!(ぺろぺろ)」

「でも前見たときとちょっと違うような・・・。もしかして進化したのかしら?」

「わんわん!!(ぺろぺろ)」


 残念なことに俺にガルドの言葉は分からない。

 けど嬉しそうな気持ちだけはひしひしと伝わってきた。だけど進化か。一体それって何なんだ?


「あのラトさん、進化って何なんですか?」

「・・・ご説明したいところですが、それは朝食に向かう途中にでも」


 きりっとした表情で答えるラトさんだが、その間もガルドに舐められているので、彼女の真面目な表情が笑いを誘うものに変貌してしまっている。

 頑張って笑いをこらえながら、「そうしましょうか」と俺は答えた。


「それじゃあガルドはお留守番しててくれ」

「悪いけどよろしくね」


 ラトさんが聖女のような柔らかい表情で、ガルドを部屋に押し込む。

 だがその押し込まれたガルドの目は今にも泣きだしそうなほどに潤んでいた。つい先ほどまでぶんぶん振られていた尻尾も、すっかり垂れてしまっている。


「・・・リュート様」

「なにか?」

「この子、連れてっちゃダメですかね?」

「俺に聞かないでくださいよ」

「・・・きっと大丈夫ですね。さぁこっちにおいで」

「わんわん!!」


 ラトさんが両手を広げ、そこに飛び込むガルド。

 二人は終始和やかな雰囲気で食堂に向かっていた。その後、彼女がほかの召使さんにしこたま怒られたのは言うまでもなかった。

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