調査開始
ギリギリタイトル詐欺でない
*あらすじ:ロメオが調査に向かいました。
アズリア領主の屋敷のとある一室にて、二人の男が対峙していた。
金髪の男、ロメオ・アズリアと、このアズリア領の領主、ハイド・アズリアである。
「いやぁ、久しぶりだね兄さん。元気してた?」
領主相手に一切の気を使わない発言、この発言の主がギルレオン魔法軍軍長ロメオ・アズリア。
本来であれば領主相手にこの態度は適切ではない。だがしかしロメオとアズリア領の領主は兄弟であった、だからこの態度でも許されるだろうと考えていた。
「まぁな。だがお前、どの面下げて帰ってきやがったのだ?」
立場の割に全く礼儀が成長していない、と若干いら立ちをもって答えたのが、このアズリア領の領主ハイド・アズリア。
普段は温厚な性格なのだが、弟の態度や家督相続の際に色々あったのを未だに引きずっている。その時のわだかまりはいまだに解消されていないのだ。
「そういうなよ。今は言い争ってる場合じゃあないんだぜ?」
「チッ、文句の一つぐらい言ってやりたいところだが、今回は勘弁してやろう」
この兄弟はわだかまりがあれど、そこまで仲が悪いわけではない。若干の不満はあるが、恨みまでは抱いていないのだ。
「ぜひそうしてくれ。さて、今回俺が来たわけなんだけど・・・」
「例の魔人についてだろう?国王陛下からの書状はもう頂いておる」
「おぉ、早いな。俺も見習わないと」
「全くだ」
ハイドは昔からロメオの遅刻癖に悩まされてきた。幼少期の思い出に想いを馳せながらも、本題は忘れない。
「で、だ。俺はお前ら調査団に案内役を貸してやればいいんだな?」
「そうだとも。まぁ俺が知ってる場所なら不要だけどな」
「ウェイトリー村だ。知ってるか?」
「えぇと、確かショクチェンドゥとの国境沿いにある村だったかな?不帰の森の調査団も派遣されてたよな?」
「あぁ、昔は不帰の森への調査団の駐留所がおかれてたんだが、かなり前に撤去されている」
ショクチェンドゥとの国境線にあるのが不帰の森である。その森が国境線の大部分を覆っており、陸上の貿易を阻害しているのだ。
そういうわけで不帰の森の調査は最優先事項だったのだが、あまりにも生還者が少なすぎるということで調査は打ち切りになったのだった。
「で、どうする?助けは必要か?」
「いや、いらないな。場所ならちゃんと記憶している」
「そうか、流石だな」
「まぁね、それじゃあ俺はもう行くよ」
「ん、もう行くのか?」
「あぁ、善は急げっていうだろ?」
そう言ってロメオはソファから立ち上がり、部屋を出ていく。
「待て!!」
だがハイドが引き留めた。
そして真剣な眼差しで言葉を紡ぐ。
「気を付けて行って来い。死ぬんじゃあないぞ」
その言葉に少し戸惑いを見せたロメオだったが、すぐに察して少し口元を緩ませた。
「フフフ、やっぱり俺の目は正しかったみたいだね」
「何がだ?」
「兄さんは俺よりもずっと領主として適任だったって話さ」
「ぬかせ。お前は俺よりもずっと賢くて魔導の才能も・・・」
「それも大事だけどさ、兄さんは俺よりずっと他人想いだろ?」
「どうだかな」
「昔っから頑固なんだから・・・、俺はもう行くよ?」
「見送りは必要か?」
「いらねぇよ」
そうぶっきらぼうに吐き捨て、部屋を出ていく。あきれた表情を浮かべつつも、口元は思いっきり緩んでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
頭の上に太陽が昇るころ、馬を走らせ草原を駆ける調査団。彼らの眼前に小さな集落が映った。
「あれがウェイトリー村ですか?」
「そうだ。だが・・・」
ありえないほどに静か、一夜にして人がいなくなったのは紛れもない事実なのだと認識させられた。
「あの情報は嘘偽りのない真実だったのね」
「どこか話半分で聞いていたが、恐ろしいことこの上ないな」
一夜にして村の住民全てを消滅させる存在。これほどにまで常識離れした存在が、自分たちに敵対しているのだ。恐怖するなという方が無理な話であった。
「お前ら、おしゃべりはそこまでだ。気を引き締めておけよ!!」
滅多に見る事の無いリーダーの姿に驚きつつも、言われた通り気を引き締めた。
これから向かう先は危険な領域、気を緩めることは許されないのだ。
・
・
・
「さてと、お前らの実力は俺も認めている。だから俺はお前らとは別行動だ、俺がいなくてもしっかり働けよ」
それだけ言ってロメオは調査員たちと別れ、一人行動をしていた。
今回の調査にオズは同行していない。故に魔法通話による連絡はロメオからの一方通行しかできない。
だから有事の際には遠慮なく魔法を使って、音なり何なりで知らせろと伝えてある。この村の建物は調査の対象ではあるものの、人命を優先したかったのだ。
「しかし何もないな。調査開始が遅かったか?」
つぶやくロメオ。
村中くまなく探してみたが痕跡となりうるものは何もなかった。強いていうならおびただしいまでの血痕だが、魔人の追跡に役立てることは出来ない。
「・・・今日の調査は仕舞だな」
日はすでに傾き、月が空に浮かび始めていた。これ以上調査は危険と判断し、撤収の号令を下す。
『撤収だ。いったん帰るぞ』
魔法通話で連絡を入れる。
成果がないことに若干焦ってはいたのだが、それに飲み込まれるほどロメオは馬鹿ではない。魔法軍軍長の座には才能だけでは上り詰められないのだ。
とはいえ多少の時間は許されている、出口に行く道中で少しだけ調査を継続したが成果はなし。ロメオも諦めて村の出入り口に戻る。
「お前ら、成果はあったか?」
「いえ、何の成果も得られませんでした・・・」
「むぅ、残念だが仕方ない。今日はいったん撤収だ」
そう命令を下すロメオ、この村の調査は明日再開される運びとなった。
だがしかし、
「フハハハハ、それは残念だなぁ」
その言葉は突如としてロメオの耳元でささやかれた。慌ててその場から飛びのくロメオ、間一髪の回避だった。”それ”の強靭な爪は虚を切り裂く。
「フハハハハ、今のを避けるか」
「赤い髪、そうか、お前が・・・」
”それ”は赤い髪の男だった。膨大な魔素量を誇り、狂気をはらんだ瞳でロメオの方を見つめている。間違いなく今回の一件の犯人であろう。
「・・・魔人が現れた。お前らは急いで王国に戻りこの事を伝えろ」
「ッ!!まさか御一人で戦われるおつもりですか!?」
「あぁ、お前らじゃ少し荷が重すぎる」
それも理由の一つだが、大きな理由として魔法通話が使えないからというのもあった。
魔法通話は非常に便利な魔法であると同時に発動が難しい魔法でもある。魔法操作練度はもちろんのこと、発動までに時間がかかるのだ。故に咄嗟に出せる魔法ではない、だから情報を王国に伝えられるかどうかがわからない。だからこそ信頼できる部下たちに情報の伝達を頼んだのだ。
「・・・わかりました。必ずや伝えて見せます」
「よろしく頼む」
それだけ言って、調査団は疾駆する。
その間、件の魔人は彼らのやり取りを黙ってみていた。
「・・・追わないのか?」
「フハハハハ、あんな雑魚どもを食らうよりもお前を食らってほうが強くなれそうだからな」
「ということはお前、俺に勝つつもりか?」
「当たり前だろうが、狭小な人間はその程度のことも理解できぬのか?」
「お前じゃ相手にならない気もするけどな」
「あぁ!?人間風情がッ!!俺を舐めるなァ!!」
魔人の拳が飛ぶ、だがしかしロメオには当たらない。
かくして戦いは始まったのだ。
次回は遅れると思われます。
長期戦という設定なのですが、なかなか難しい。




