#9: godness arrived
栖男の部屋に到着したトリオ一行。着いた時には夜が更けていたが、栖男は慌てなかった。
「やっぱり夜が更けていましたか、今回もやるんですか?」
「相棒、そのことなんだが、できなくなってしまった」
「え?」
前回できたのができなくなった。安心しきっていた栖男にとって豆鉄砲を食らったような感覚が襲われる。
「本当にできなくなったのですか?」
「じょ、冗談だよ真に受けるな。すぐにやってやるって」
「……」
栖男は困惑した。普通なら怒る場面であるはずなのにトリオがこんな焦りを隠したような冗談で言ったようにも思えなかった。が、自分にはどうすればよいかわからず、とりあえず流れに乗るようにした。
「そ、そうですかー冗談ですかー。全くもー驚かさないでくださいよあにきー」
「す、スマンナー。チョットカラカッタダケダヨー」
(絶対嘘だ……)
二人のごまかしに千代女はツッコミたかったが、内心にとどめておくことにした。
「トリアエズ、イッタンココヲハナレヨウカーナニカアッタラキケンダー」
と、棒読みむき出しのトリオの提案に乗り、一旦ここを離れることにした。
*
(おかしい……いままでできていたことが急にできなくなった。あらゆる機能を試したが、どれも不調が目立つ。いったい誰が……)
「大丈夫ですか?」
「あぁ、千代女か。まぁ大丈夫だ。だが、何者かが邪魔している可能性が高い」
「私たちの計画をよく思っていない者がおられるのですか?」
『その通りだ、反逆者』
「「!!?」」
突然どこからか聞こえた声。声が聞こえたと同時に全員の警戒心が高まった。
「誰だ!?」
『私か?私はディスティー。運命の守護神。運命に逆らうものに天命より罰を与えし者』
「守護神……?やはり来たか神め」
『トリオよ、前は相当運命を捻じ曲げたらしいな。貴様には神界より危険因子とみなされ、万死にも値するであろう。よって私が直々に執行に参った』
「はん、こうでもしなきゃ生きていけないもんでね」
「問答はここまでだ。処刑執行する」
するとトリオの上空からどこからか無数の剣が現れ、すさまじいスピードでトリオに向かって飛んできた。
万事休すかと思いきや、すべての剣が消滅した。兎莉生だ。
「……」
「相変わらず、すげえなりおちゃん……ま、俺の武器を無効化したらしいが、俺は簡単には殺させねぇ、何せ、超強力な守護人がいるからな!」
『む、神殺しの将軍の娘か……貴様の将軍にも大層お世話になった。が、やはり先手を打たれていたか。ここは、いったん撤退しよう。それと……そっちの普通の者よ』
「え?」
突然神に語りかけられた栖男。まさか神に声を掛けられるとは思いもしなかった。
『主は確かに平凡だ、しかし運命ではかつてないものが主によって起こるという結果が生じている。現時点では主は無害だが、もし運命に危害が及んだ時、直ちに抹殺を行う。以上だ』
そう言うと守護神はそれ以降声がしなくなった。どうやら撤退したとトリオは感じた。
「…………」
栖男は、呆然と、ただ生きる心地がしなくなった。
「おい、あいつの言葉には気にするな。仮にあいつが殺しに来たとしても俺たちが守ってやる。だから安心しろ」
「安心って……さっき約束破ったじゃないですか」
「あれは……想定外の事で……」
「でも神が来るのは知っていたんですよね。なら対策はできていたはずです。それでもできなかった。私はあなたを信頼しません。さようなら」
「おい、ちょっと!」
栖男はトリオの制止を振り切り、どこかへ行った。
「参ったな……」