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#5: 現代戦国.将軍 ~少女を添えて~

 次の朝。


「じゃあ、今度はりおちゃんの世界に行くか」


「えっ」


 栖男は困惑した。いきなり兎莉生の世界に行くことになるときたので至極困惑した。


「一応ほかの世界も見ておきたいだろ?そんなときのために転送装置を作っておいた」


「そんなすぐにできるんですね」


「まぁ、今まで作ったものを改造しただけだけどな」


「あぁ。なるほど……」


 栖男は謎に納得したが、トリオはすぐさま栖男と兎莉生の腕をつかみ、強引に転送装置に投げ入れた。

 空間がぐにゃりと変形し、めまいを起こしてるのか空間が変形してるのかわからず、なんとも不思議な空間に栖男は気を失ってしまった。


 *


「……おーい、大丈夫か?」


「……んー。ん?ここは……」


「どうやらちゃんと兎莉生の世界に着いたみたいだ。さすが和風。竹がそこら中に生えてやがる」

 栖男がぼんやり意識を戻しながら辺りを見渡すと、竹が当たり全体に生えわたり、空は黄昏のように少し黄色に染まっていた。竹の合間には江戸を感じさせる町が見えた。


「ほんとだ、同じ時代とは思えないですね」


「しかし、向こうの町にとんでもない城のような……要塞か?あれが気になるな」


 トリオの視線の先に明らかに黒い塊のような建物がそびえたっていた。黒い建物にトリオの好奇心は止まらない。


「よし、行こう。すぐ行こう。あそこにりおちゃんの育て主がいる!!!」


「あ、まってください兄貴!」


 トリオの駆け出しについていく栖男。それを見つつも無表情の兎莉生は栖男の後をついていった。


 *


 町にて。

 まるでお祭り化のような活気づいている様子。商人の投げ売りや客の会話がより賑やかを増している。


「すごい活気ですね……」


「さすがいままで貫き通したことだけだ。皆やる気と希望に満ち溢れている。そんなことができた主はあそこにいるってわけだ」


 トリオ達は駆け抜けるように黒い建物に向かった。


 …………


 と、一人の人物が兎莉生の姿を目撃した。


「ん?あれって……」


 *


 黒い要塞の入り口手前に到着したトリオ達。大きな扉の前に門番がいる。


「すいませーん。ちょっといいですか」


「!!!嬢様!!!どこに行ってたんですか!」


 門番は尋ねたトリオではなく、兎莉生の方に反応した。


「あのー」


「あなた方が見つけてくれたのですね!!殿がお待ちかねです。ささ、中へ!案内します」


「ちょ……」


 と、トリオ達は門番に急かされるように中へ入った。


 将軍のいる部屋へと到着したトリオ達。


「うーむ、最近いかりの調子が悪いとみゆ。保安大名に申してみるか」


「承知致した。伝令。保安大名にいかりの調子が悪う言伝う者はおらぬか」


「はっ、伝令申し承った」


 なにやら聞きなれない言語に困惑する栖男。一方トリオは興味津々であった。


「むっ、お主達が兎莉生を連れてきたものか」


「は、はい」「そうです」


「うむ、大義であった。私は影山信弘。世間では神殺しの将軍と呼ばれておるがの」


((あっ……))


 兎莉生から聞いた名前、神殺しの将軍を見たとき、やはり二つ名にあっていると栖男とトリオは感じた。黒い袴に圧倒される目力。それでも威厳を静寂にひそめている雰囲気が余計にプレッシャーになるほどの存在だった。


「?どうした。恐れ多いか?」


「あ、はぁ……」


「はい。どうりで存在感が違うと思いました。私、兎莉生を連れてきたトリオと申します。そしてこちら

 のものは栖男と申します」


 圧倒される栖男をかばうようにトリオは紹介した。すると信弘は不思議そうな顔をして


「ほう。同じ呼び名とな。いわゆる同一人物とやらか?」


「!!!もしかして同一人物と信じてもらえるのですか」


「はっはっはっ。いまや神を見たものだから今更何をみてもおかしくないわい。それに兎莉生のことだからさぞかし立派なものに相違ない。歓迎するぞ」


「はっ、ありがたき幸せ」


 信弘の存在感に負けず、敬意を表するトリオ。つられて栖男も敬意を表した。


「あぁ、ついでにもう一人紹介しておこう。寵姫よ」


「あら。どうしたの」


「寵姫。このものが兎莉生を連れてきたものだ」


「あらまぁ。それは大変だったことでしょう。妾は寵姫。恥ずかしくも大鬼魔王と呼ばれておる者よ」


「ちなみに、寵姫は私の妻である。わはっはっは!!!」


((……わぁ))


 圧巻な夫婦に終始圧倒されていた栖男達。兎莉生はそのことをよそにすやすやと眠っていた。その間、トリオ達はこの世界の常識、現状を聞いた。そのことによると、ここはなんとネットのようなものがあり、そのことを『いかり』と呼び、現代に使われている技術がそのまま江戸時代の風貌で反映されている様子だった。例として、洗濯機は水流洗。電子レンジは熱箱といった感じだ。また、幕府や侍といったものに加え、大鬼魔王が作られたロボットのような兵器や超高火力を備えた要塞が兼ねし備えられ、圧倒的な武力を持っていた。開国しなかったことによりあらゆるところから攻め入ったが、すべて返り討ちにして世界を屈服したという。


 ……という話を伝説の夫婦から聞かれたが、何よりも神が現れ、それすらも追い返したという話もあった。数京にも及ぶ軍をこの圧倒的要塞で追い返した話はまさに圧巻もの。こうして、日が山へと傾くまで会話は続いた。そして、城前でトリオ達は送られ、別れの挨拶をした。


「今日は貴重な話ありがとうございました」


「あぁ、また会えるといいがの」


「……まって」


 と兎莉生が引き留める


「む?どうした」


「……一緒に行く。異論不可」


「あぁ……仕方がないの。行ってくるがよい」


「……ん」


(あっさり!?軽っ!りおちゃんってどんだけすごいの!?)


 栖男は内心で突っ込んだ。


「……わかりました。責任もって私が守ります」


「あぁ……お主らなら大丈夫じゃろう」


 トリオは信弘と約束し、城を去った。


 *


「さて、行くか」


「そうですね……あの人すごかったです。何もできませんでした」


「まぁまぁ敵じゃあるまいし。でも、あの存在感は慣れが必要だな。イメトレでもしとけ」


「精神壊れそう……」


 栖男達はそう会話しながら栖男の世界に帰ろうとした。その時――


「そこの人!お待ちください!」


「?なんだ?」


 呼び止めたのは赤い和の衣装に身を包み、茶色の髪をなびかせた兎莉生と同じくらいの身長の少女だった。


「……千代女ちゃん」


「兎莉生ちゃん!行っちゃうんですか?」


「……ん」


「なら私も行きます!」


「「えぇ!?」」


「……危険」


「大丈夫です!私達親友でしょう?」


「……そうだった。なら良き」


(いいのか……)


「ありがとうございます!あ!あなた方が兎莉生ちゃんを見つけてくださったのですね!私は千代女と申します。兎莉生とは大の親友でいろいろなところに遊んだものです。また一緒に行けるなんて今でも夢に見てるようです。お二人さんもお世話になります。よろしくお願いいたします!」


「えっちょ……」


「いいんじゃない?危険でも大丈夫ってニュアンスが兎莉生から出たし」


「でも……」


「俺が何とかするからその点大丈夫だって!よし行こう!」


「……」「はい!」


(もうどうにでもなれ……)


 栖男はこの状況に振り回されながらも不思議と面白いとも感じていた。その思いを片隅に元の世界へと戻った。



「そういえば、りおちゃんの呼び方のアクセントって何か違いましたよね」

「あぁそうだったな。『お』がアクセントだったな。なら俺は『と』で相棒は『り』な」

「あ、わかりやすい」


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