#10: error :虚空の旅人
あれから、トリオを信頼していた。今だって、トリオのそばを離れない方がよかったかもしれない。
しかし、それでも栖男はあえて選んだ。自ら危険にさらされる道を。
「……」
しかし、今は自分を信じてトリオと距離を置いておこうと。家族のことは心配だが、今は許してほしいと願う。ほんの少しの反抗として栖男は思いこんだ。
すると、どこからか栖男に近づく音が。栖男はふと振り返るとそこには女らしき人物が街灯から照らし合わせた。
「やぁ君、栖男だね?」
「え……どうして知ってるのですか」
「いやはや思い切った道を選んだねぇ、やっぱり人間は面白いよ」
一方的な会話を遮るように栖男は女に問う。
「えっと……どちら様でしょうか」
「僕かい?そうだね……名前考えたことなかったな」
「どういうことですか?」
「僕はいろんなところを旅しているんだ。それも空や時空を超えてね。僕はどこから来たのかどこから生まれたかもわからないんだ。まるで虚空をさまよっているみたいだよ。そう考えると僕は虚空の旅人のような存在かもしれないね」
余りにも難解な言葉に困惑する栖男。女は続ける。
「さて、君はもう一人の自分と離れちゃったんだね。守護神の事もあって大変。それでもあきらめてそうではなさそうだ。うんうん。ますます君のことが気に入ったよ」
「あなたは一体何が目的なんですか」
栖男の問いに女は首を傾げる。
「目的?僕は面白いものがあったら観察するタイプだよ。そして面白そうな選択肢があれば迷わず選ぶ。それがたとえ悪でも混沌を招くものでもだよ」
『それが貴様のやり方か。重要観察因子』
「おっと、守護神だね。見つけるの早いなぁ」
女は栖男の向こうから守護神の存在を見ているようだった。栖男が振り返ると、そこには仮面をかぶり、かなり大きな槍を持った重装備の騎士のような姿があった。
『予想外の例外が発生したか。やはり運命を阻害する存在が多すぎる』
「なんだよもー。まるで敵だと思われてるの?」
『無駄かもしれんが念のため警告だ。変な真似はするな。事は運命によって定められているのだ。それを邪魔するものは容赦なく排除する。いいな?』
「その運命が面白いかどうかかなー」
『チッ……』
(騎士が舌打ちした……?)
守護神の予想外な行動に栖男は少し気が緩んだ。がしかし、守護神はまた緊張な場の雰囲気に戻した
『まぁいい。それよりも栖男だ。主に提案だ。私と協力しようではないか』
「え?」
『運命に従う。それは世界にとって良いことである。それに逆らえばかつてない地獄が待ち受けるだろう。ともに運命とともに楽園への扉を開こうではないか』
守護神の提案に悩む栖男。守護神の言い分は要するに信じれば報われるようなものだ。しかしそれでいいのだろうか。それは保証できそうもない。誰にも未来は何が起こるかわからないのに……
いや、自分は信じる道を行きたい。それはトリオが示した誰も失わない理想の道だ。それがどんな困難でも自分にとって理想の道だと信じる。
「ディスティーさんでしたっけ……」
『そうだ。答えが出たようだな』
「は、はい。やはり守護神の提案は理解しました。しかし、私はトリオの提案に乗ることにします。誰にも失わせたくないから」
『ほう、それはかつてない困難と絶望が主に降りかかるぞ。それでもか?』
「それでもです。やはり私は信頼してくれてる自分がいるから。頑張れるかなと……」
「そうだよな!やっぱりそうだよな!!!やっぱり自分だな!!!!!」
「兄貴!?」
栖男の目の前にトリオが颯爽と現れた。兎莉生と千代女を連れて。
『来たか……』
「ま、そういうことだ。運命なんて結果論だ。俺たちはそんな概念をぶっ壊す。来るXデーに証明してやるよ」
『ふん……せいぜいあがくがよい。タイムコネクト……貴様の言うXデーで楽しみにしているぞ』
と守護神は言葉を残して姿を消した。続けて女の方も
「ふふ。やっぱり面白いね、君はどう行動するのか見届けさせてもらうよ」
と言葉を残したと同時に消えていった。
「……行動か」
「ん?どうした相棒」
「さっきの女の人……不思議な人でした。虚空の旅人かぁ……」
「なんだそれ?俺が見たのは守護神だけだったぞ」
「私もです」「……?」
「え?」
どうやら先ほどの女はトリオ達には気づいてなく、栖男だけが気づいていたようだった。
(何者だったんだろう……虚空の旅人って……?)
その後、トリオは何とか直せたようで、深夜帯に帰ってきても栖男はいつも通り寝ていることになっていたそうだ。




