#1: 3人の自分{栖男、トリオ、兎莉生}
連載、始めました。
ちょっと短いかもしれませんが、どうぞご堪能くださいませ。
※とりあえず毎日0時投稿。もしかしたら予定変更するかもしれません。ご了承ください。
もし、自分が三人いたら――
もし、平行世界が三つあるとしたら――
もし、三つの平行世界が一つになるとしたら――
*
一日の始まりは鶏がなく頃に始まる。
高校受験を終え、ひと時の休暇を過ごしている影山栖男は朝の日課を済ませ、いつものように散歩をしていた。
正直やることがわからない、趣味といったものもないため、暇つぶし程度で時を過ごしている。
ただ自然を感じるだけ。後は何も感じない。
そのまま大人になって終わるのかとも感じた。
もし、自分が大天才だったら、絶大な力を持つ存在だったら、不老不死だったら――
まれにそんなことを考えるが、だからといって何も起こらない。
起こるわけがない――
その時、栖男は意識がなくなった。
*
栖男は自分の部屋で気が付いた。おそらく、生きている。
わけのわからないまま起き上がるとそこには白衣を着た男と和装の少女がいた。
あからさまに知り合いではないと栖男は直感した。
しばらく沈黙が続いたあと、栖男は二人に質問した。
「……どちら様ですか?」
すると。白衣の男は口を開く。
「栖男だな?」
「栖男です。で、どちら様?」
「あぁ、自己紹介だな。俺はトリオだ」
「????」
栖男は呆然とした。自分と同じ名前であるからだ。
「なんだ、自分と同じ名前だなんて顔しやがって」
読みが当たってただ呆然とし続ける栖男を気にせずトリオは会話を進めた。
「ちなみにそっちのちこいのもとりおらしい。漢字はちがうっぽいがな」
「……兎莉生」
「まぁ、なんだ。簡潔に言うと俺たち3人は同一人物ってことだ」
次から次へとぶっ飛んだ情報に栖男はただ流される。これは夢でないのだろうかと考えるのも自然であるのではないかとそのまま意識が遠のきそうになった。
が、トリオの一声でこれまでの経験が現実になってしまった。
「おい、聞いてるか?」
「あ、はい。全然わかりません」
「なんだ、俺の言ってることがおかしいとでも?」
「当たり前じゃないですか、信じられるわけないですよ」
「まぁ、いい。後々信じられるようになる」
「はぁ……」
こうして、同一人物が三人という不思議な展開が幕を開けた。