満天の星の下で 【月夜譚No.14】
彼を乗せた宇宙船は、今どの辺りにいるのだろうか。この星空の下では、どんなに目を凝らしても、それを確認することはできない。
そうと解っていながら、毎日こうして夜空を見上げてしまう自分に思わず自嘲が零れる。彼女は上衣の前を掻き合わせて、ほうっと白い息を吐き出した。
宇宙へ行くのが夢だと語った彼の瞳はキラキラと輝いて、それこそ今目にしている星のようだった。あの時の顔が忘れられなくて、彼女は彼の夢を応援した。それが現実になって嬉しいと心から思うし、夢を叶えた彼のことを尊敬もしている。けれど、やはり淋しいのだ。傍に彼がいてくれないと。
彼の姿が見たい。声が聞きたい。話がしたい――そんな思いばかりが膨らんで、その内外に溢れ出てきてしまいそうだ。白く儚い、宙に霧散する吐息のように。
早く帰ってきて欲しい。そうしたら笑顔でお帰りと言って、それから――。