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「男は意外と脆いもの」



《始める前にルール説明をします。今回のフレンドリーマッチは一回きりの勝負。つまり一勝した時点で終了となります。ルールはそれ以外、本来の綱引きとの違いはありません》



懇切丁寧に説明しているが、綱を前にした男達には聞こえていないように見える。綱を引くことに集中しているのだろう



《それでは……全員綱を持ってください!》



合図と共に、全員が綱を握った。皆、手に血管が浮かび上がり、本気度が伺えた



《それでは……よーい……バンッ‼︎》



「「「うおぉぉぉぉぉっっ‼︎」」」



既婚者対未婚者の綱引きが始まった。近所迷惑になってもおかしくない声量で雄叫びをあげる両チーム



男達の盛り上がりとはうってかわって、女達の反応はまちまち。盛り上がる人もいれば、暑苦しい……と、冷ややかな目で見てる人もいる。私は後者だけど、その中心にいるはずの姫はどちらでもなく、寝ている。冷ややかな目で見てるどころか、見ていないのだから



「「「うおぉぉぉぉぉっっ‼︎」」」



互いに譲らず、勝負は停滞していた。綱は一向にどちらにも傾かない



「もっとだぁ‼︎もっと力を入れてひっぱれ‼︎」



既婚者組のリーダーらしき人が掛け声をあげてチームを鼓舞した



その甲斐あってか、少し既婚者側に綱が動き始めた



「くっ‼︎」



勢いが完全に既婚者側に向いていた。徐々に徐々に勝利が既婚者側に引かれている



「……おい未婚者達よ‼︎よく聞け!」



と、ここで外部から男が大きな声で叫んだ



その男は、クラス替え初日に私に絡み、誰?と返され、卯月とデート予行で告白して振られ、席替えの際に伊津がボロクソ(伊津に悪意はない)に罵った……罵った……名前出てこないや……まあその男が叫んでいた



「既婚者達に負けてもいいのか⁉︎俺達と違って、アイツらは毎日イチャイチャしてやがるんだぞ‼︎」



悲痛な叫びをあげる名前が不明な男



「俺は許せない‼︎これに負けて、さらに好き勝手させていいのか⁉︎良くないだろ‼︎許せるのか⁉︎許せないだろ‼︎だから勝て‼︎勝って権利は俺たちが頂こうぜ‼︎」



お腹から声が出ていると分かるほどの大声で自身の思いを名前が不明な男は叫んだ



「はっ!無駄だ‼︎この勝負、俺たちの勝ーー」


「「「うおぉぉぉぉぉっっ‼︎」」」



ジリジリと既婚者側に動いていた綱はピタリと止まった。そして……未婚者側にジリジリと動き始めた



「な、なにぃ⁉︎」



綱は真ん中を超え、未婚者側が優勢に立った。そして……



「これがっ‼︎未婚者達の‼︎既婚者への‼︎」


「恨みと‼︎」


「憎しみと‼︎」


「羨望が集まったパワーだ‼︎」



そのまま一気に綱を引ききった



《バンッ、バンッ‼︎勝負あり‼︎勝者は、未婚者チーム‼︎》



「「「「「「「うおおおおおおおおおお‼︎」」」」」」」



未婚者達の雄叫びが上がった。テントの下から勝負を見守った私の鼓膜が心配になるほどの音量が上がった。それでも、姫はぐっすり眠っているけど……



未婚者達は選抜に選ばれていない者も全力で喜びを露わに。既婚者達は悔しさを露わにし、涙を流す者もいた



……良い闘いだった。全力でぶつかり合って勝負する。その姿はやっぱり見てる人をも熱くするんだなぁ、と再度実感した



……それに賭けられた物を知らなかった場合はね



そして勝った未婚者組は、一斉にゾロゾロとこちらに向かってきた



周りが「何何?」「何が起こるの?」とザワザワしだした



そして、私の膝下で眠る姫の前に全員が膝をつき、そして……



「姫様は私達でお守り致します‼︎」



王に忠誠を誓う兵の如く有様だった



「……姫は寝てるんだから、静かにしなさいよ」



私がおそらく姫が抱いているであろう感情を代弁して伝えた



「悪い。ただどうしても言っておきたくて……」



……まあ私的にはこっちが勝ってくれて助かった。無理矢理結婚しよう‼︎と迫ってくる既婚者達よりかは、こうやって全力で姫を守る!って言ってる人の方がマシだ



ファサッ……



「……何か落としちゃった?」



シートの上に何か物が落ちる音がした



「……指輪?」



私の膝下に、ダイヤが装飾された指輪が転がっていた



「……姉妹さんの指輪?」


「ううん。私や琴乃、伊津は全員()()()()しかつけてないよ?」



私は左手を跪いている男達に見せつけた



証明指輪とは、学生婚をしている者全員がもらえる指輪で、これをつけていることで既婚者であるということを周りに理解してもらう事が出来る。配布用なので、シンプルで飾り気のない指輪だ



「……じゃあ誰のーー」


「……これは私のぉ」



と、いつの間にか目が覚めていた姫



「あれ?起きてたの?」


「……あんなに近くであれだけ大きな声出されたら誰でも起きちゃうよ」



いや……姫ならワンチャン寝てるかなって私は思ってしまったけどね……



「……それよりこの指輪は?」


「私の……()()()()ー」



そういうと、落ちた指輪を拾い、そして……左手の親指にはめてみせた



バタッ……バタッバタッバタッバタッバタッ……



次々と倒れる男達。全員白目を向いて、泡を吹いていた



「ど、どうしたの⁉︎」



跪いていた未婚者達全員が、その場で倒れた



「……多分アレですね。眠りの姫が結婚しているって知って、みんなショックで倒れたんでしょう」



と、さっきからやたら私にちょっかいをかけてくる後輩が、この惨状の説明をしてくれた



「……男って意外と脆いのね」



こうして、一斉に保健室に送られた男達は、全員保健室の先生からのビンタで飛び起き、そして……残りの競技全てを、泣きながらこなしたとさ……



♢ ♢ ♢



後日、聞いた話だと男達は羨望の眼差しを姫に向けつつも、今まで以上に平穏な日々が送れているそう。あと、指輪は本物だが、姫の結婚指輪ではなく、姫の親の物らしく、勘違いをさせるために、母から借りてきた物らしい



自分でなんとかするって言ってたけど、前より現状が良好になったのは良かった



……あと、めちゃくちゃ良い匂いした

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