「フレンドリーマッチという名のガチ勝負」
次は琴乃の番だ。男子と違い、距離は100mと半分だけになっている
運動音痴の琴乃が選ばれた理由は、単にこの競技の希望者が少なく、ジャンケンで負けたからだ
琴乃がジャンケンで負けて絶望してた時の顔は凄かった……あんなにどんよりした空気が視認できたのは初めてだ
あ、ちなみに私はもう走り終わっている。ぶっちぎりの1位で
クラス対抗リレーの女子の部門で出るべきだ!って陸上部の子に推されたんだけど、面倒だから嫌だ‼︎と押し切ってやった
さて、順番は琴乃。そして運悪く周りは運動部に所属している人だけだった。それが原因か、顔を更に青ざめさせていた
ちょっとでもリラックスしてもらわないと……途中で過呼吸で倒れちゃうかもしれないし……
「琴乃ー!落ち着いてー!」
私の声が届いたようで、琴乃はこっちを見た
「勝とうなんて思わなくていいから、自分のペースで頑張れー!」
「そうですわよー!無理なさらずに走ってください!」
「琴乃ー!頑張れよー!」
私の声に続いて2人も琴乃に向けて声援を送った
……家族って形には見えないけど、私達がお互いに励まし合ってる……これはもう立派な家族と言ってもいいのかもしれない……
《位置について……よーい……ドン‼︎》
一斉にスタートした。ただ、やはりスタートの地点で少し差がついてしまった……
ただ琴乃は緊張から放たれた様子。青ざめた表情はなく、ただ一生懸命、足と腕を振っていた
《ーーゴール‼︎4位は紅組です!》
結果は最下位。ただ、今まで琴乃を見てきたから言える。間違いなく、今までで1番足が早かった。琴乃のベストタイムだと私は確信していた
応援は人を強くするっていうのは、あながち嘘じゃないのかもしれない
♢ ♢ ♢
お昼を挟んで第一競技。ここで男達にとって最大のイベントである綱引き勝負の幕が上がった
《次は綱引きです!今回特別に、クラス対抗だけでなく、既婚者男性対未婚者男性選抜で戦う事になっています!》
入場門では、エンジンを温めまくっている男達の姿があった。腕立てしている者、スクワットで足腰を鍛えている者、ダンベルを持っている者、プロテインを飲んでいる者、寒風摩擦をしている者。多種多様だが、気合の入り方はどの競技と比べても高かった
「男達、なんであんなにテンション高いんだろうね?」
「さあ?男同士の闘いってやつに燃えてるんじゃない?」
今回の賭け事を知らない女子生徒達は、不思議そうにしていた
まあ男達の闘いに燃えてるのはあながち間違いではない。でも、理由はすごく不純で、勝手なもの
ただ、騒動の真ん中にいるはずの姫は、ずっと寝たまま。対策があるって言ってたけど、何もしていない。……正直心配だ
どちらが勝っても、しばらく姫に男達がハエのようにたかってくることは変わらない。寝たいはずの姫が、こんな暴挙のせいで自分の睡眠を邪魔されるなんてたまったものじゃないはず……
いっそのことこっちで手を打つか?私の妨害案の一つ、皆に今回の賭け事を明かすという手を考えていた
賭け事での勝負、そして姫に無許可。これだけでも女子全員を味方に付けることが出来ると思う
ただ……この方法は姫の助けになるかと言われればそうではない。たかってくる人が、男から女に変わるだけだ
男から守る!と団結した女達が、姫の周りを固めるのも目に見えている。姫の人気は男からだけではない。女からの人気も抜群に高いのだ
だからこそこの手はあくまで最終手段。どうにもならないと悟った時に使うつもりだ
《さて、まずはフレンドリーマッチの既婚者対未婚者選抜の入場です‼︎》
なぜか全員上半身裸の状態で入場。口から煙を吐きそうなほどの熱気と威圧感を全員からヒシヒシと感じた
男は懸けるものがあれば強くなると聞いたことがあったけど、これもどうやら本当みたいだ
……まあその懸けてるものが最悪なんだけどね
ちなみに太一と奏斗は断ったらしい
「やってやるぞごらぁ‼︎既婚者組の力思い知らせちゃるけんなぁ‼︎」
「方便混ざりすぎて何言ってっか分かんねーよ‼︎」
「方便じゃねーよ‼︎方言だよ‼︎日本語くらいしっかり喋りやがれ‼︎」
「うるせー‼︎○すぞ‼︎」
「こんなどストレートに言われたのは初めてだぜ‼︎」
怒号が飛び合う。喧嘩が起こる勢いだ
……いっそ喧嘩して全員病院送りになったらいいのに
……さすがに不吉すぎたかな?




