「何か思い出しそう……」
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい」
学婚休を使ってやってきたのは、琴乃の叔母の家だった
旅行のパンフレットなんかを見て、皆んなの意見を聞いたところ、やはり秋ということで、美味しい物が食べたいということで意見が一致した
だが、資金面に余裕があると思っていたのだが、やはりキノコ狩りや栗などの採取ツアーにかかるお金は高い。行けないことはないが、しばらく節制した生活を強いることになるということで、却下となりかけていたのだが、琴乃が叔母の管理する山にキノコと栗があるらしく、 叔母とはなしをつけてくれたのだ
「太一くん。久しぶりじゃね」
「あ、お久しぶりです。おばさま」
「あれ?太一は会ったことがあるんだ?」
「え?あ、ああ!そうそう!実は会ったことあるんだよ!」
「へぇ……あ、初めまして!私、琴乃と同様、太一の嫁の由比羽と申します!」
「……うん?あんた、この前もウチに来たことがあったはずじゃが?」
「え?私がですか?」
来たことはなかったはず……そもそも琴乃の叔母と会うのは結婚式以来、2回目だったはず……
でもなんだろう……確かに何故か知らないけど、見覚えがある。そして……何故か寒気がする……
「あ、あー!由比羽!とりあえず早く取りに行こう!」
「え?あ、うん……」
私は少し挙動不審な由比羽に背中を押されつつ、裏にあるという山に向かった
「取りすぎだけはやめておくれよ」
「はーい。おばあちゃんの分も取ってくるからね」
「ん。期待して待っておるわ」
軍手と太一が背負った籠のみで、私達は食材探しに出かけた
「やっぱりなんか見覚えがあるような気が……うっ……頭がっ‼︎」
この景色、やっぱり見覚えがある。ただはっきりと思い出せない……なんだ?結構最近見た気が……
と、私の目の前に大きな木が立っていた
「あ、あぁぁ……」
この木……すごく嫌な感じがする……そう、何か嫌なことを思い出すような感覚……
「ううっ!あぁぁ‼︎」
何か思い出しそうだ……トラウマが呼び戻されそう……
「……そうだ。私はここで顔にカブーー」
「あー!手が滑ったー‼︎」
琴乃のチョップが、私の脳天に叩き込まれた
「痛っ‼︎」
「ごめんごめん!大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だけど……」
……あれ?私は今、何か思い出しかけていたのに。琴乃のチョップで全部吹き飛んじゃった
「うーん……」
「ごめん!やっぱり頭痛いよね?」
「あ、いや大丈夫!ただ何か大事なことを思い出しかけたんだけど……忘れちゃった」
「すぐ忘れちゃうくらいだし、別に思い出すことのものじゃないんじゃない?」
「……それもそうね」
あと……思い出したくない。本能がそう言っている気がした
♢ ♢ ♢
山の更に上の方へと登っていく。かなり広い山で、一応許可なしの登山は禁止らしい
理由としては食べ物があるから。ここではキノコ、栗、山菜などの採取が出来るらしく、それを取られると困るかららしい
「にしても黄金のキノコ……気になるね」
「そう?私的に、そんな金ピカになってたら健康面が不安だけど……」
叔母様曰く、この山には10年に一度、たった一つだけ、黄金に光るキノコが生えるらしい
「琴乃は見たことないの?」
「実際には見たことない……でも、おじいちゃんとおばあちゃんが白黒の写真で、金ピカのキノコと一緒に撮った写真なら見たことあるよ」
ということは実在するみたいだ……
「でも、ロマンがありますわね!」
「確かになー。まあ見つけたら超ラッキー程度に探してみるか」
今日の一番の目的は、金ピカのキノコに決まった
「というか……まだ登るの?」
家から登り始めて30分が経過していた
「うーん。あと45分ぐらいかな?」
「……嘘でしょ?私もう体力と足が限界なんだけど」
「あら?私はまだまだいけますわよ」
確かにピンピンしている伊津。疲れているようには見えなかった
「意外と元気な子なんだね……」
「私もまだ大丈夫」
「え?琴乃も?」
運動音痴の琴乃もまだ余裕とは……運動が出来ないだけで体力はあるのか?
私は逆に、運動神経はいいけど、体力は全くない。まあずっとぐうたらしてるだけだから、あるわけないんだけど
「マジか……疲れてんの私だけ?」
「いや、そうでもないよ」
琴乃が指差す方を見ると、若干息切れをおこしている太一の姿があった
「……疲れてんの?」
「……実は結構しんどい。休憩ほしい」
体力がありそうな二人がダウンして、体力なさそうな二人がまだ元気だった
「仕方ないですわね。では10分ほど休憩とりますか?」
「そうだね。もうっ……二人ともゲームばっかりしてるからだよ?」
琴乃の言葉に、私達は反論の余地無しだった……




