「学婚休の使い道」
家族っぽいこと……か
前の奏斗浮気疑惑は加蓮の杞憂に終わった。あの後、奏斗は加蓮と日伊乃に1万円程するプレゼントを渡し、加蓮と日伊乃に今まで帰りが遅くなったりしていた理由を話した
加蓮は安堵のあまり、また泣いたそうだ。そんなに涙脆いようなタイプではないように思ったけど、……それだけ奏斗のことが好きなのだろう
そして私は少しだけ嫉妬した……のかな?私も今の家族で、家族らしいことをしてみたくなった
奏斗のように浮気を疑われたりするようなことがしたいわけじゃない。聞いたところ、奏斗達は夏休み中に旅行、バーベキュー、海、登山、レジャー施設などなど、色々な所に出掛けたらしい(加蓮の親の命令により)
反して私達は、伊津のお陰で行けた温泉旅行しかない
なにも一緒に出かけることが家族っぽいこと。なんて思ってはない。ただ私達は家で皆で食卓を囲み、テレビを見て笑う。たまに全員でゲームをしているだけ
悪いことなんて全くない。むしろ、他の家族から見れば、そんな当たり前のようなことが羨ましく思う人だっている
ただ……少しだけ……ほんの少しだけ、皆んなと出かけて、絆を深めたい。琴乃とだけじゃない。伊津と……太一ともね
……昔の私からなら考えられないことだなぁ
もしかしたら私……変われるかもしれない
♢ ♢ ♢
「……旅行?」
「そう!どっかの平日に4人でさ!」
「学校はどうするんだよ?」
「学婚休を使う!」
「あー。そういえば使ってなかったっけ」
学婚休。結婚をしてから1週間以内でしか使えないいわゆる有給休暇のような物
本来ならもう2ヶ月経った私達に権利はない。だが、夏休みを迎える1週間前、もしくは夏休み中に結婚した者は、夏休み明けから2ヶ月の間、この休みを行使出来る
私と琴乃、太一は夏休み2週間前なので適応外ではあるが、樹咲が結婚したのはちょうど夏休み中
1人でも新しい妻を迎える度に、その家族全員が、その権利をリセット出来る。つまりまだ有効期限が過ぎていないのだ
実はこの休みの政策、今ちょうど議論が行われているようで、『通常、1週間の期限を2ヶ月にも伸ばすなんておかしい』といったもの。夏休み中に結婚、又は春休み中、冬休み中の結婚者が多く、理由はこの制度のせいであると言われている
だから実質、もうすぐ有効期限が過ぎると思っても差し支えない。だからこそ、使っておきたかった
「そんな制度がありましたのね」
「伊津の学校で教えてもらわなかったの?」
「ええ。そもそも私の通っていた学校では、結婚が禁止されておりましたから」
結婚制度が変わってから、結婚を禁止する学校もあった。だが、その割合は極端に偏っており、結婚を禁止する学校はかなり珍しい
「確か小中高一貫校なんだっけ?」
「そうですわ。だから、学生婚のルールについて習ったことはありませんでしたわね」
まさに箱入り娘といったところか
「でもどこに行くの?」
「それも皆んなで考えよう!旅行は計画立てる所から面白いんだからさ!」
私はパンフレットを机の上にぶちまけた
「いっぱいもらってきたね……」
「まあね!無料だったからあるだけ取ってきた!」
何を目的とするか、どこでその目的を達成させるか。観光したいなら、夜景が綺麗なところか、太陽が周りを映えさせるところかなど、決める項目はいっぱいある
あとは予算。誰一人としてバイトはしていないし、伊津の家に頼るわけにもいかない。パァッと豪勢にはいけないが、普通に楽しむ分には問題ないほどのお金はある
それらを加味した上で、私達は旅行先を決めることにした
「とりあえず、しばらく各々で行きたい場所を選んで、そっから全員ですり合わせしようか」
「ん。じゃあ量もあるし、30分間自分達で見て決めようか」
「分かりましたわ!」
各々、気になったパンフレットを手に取って、琴乃と伊津は自室に、太一はベランダで外の風を浴びながらパンフレットを真剣に見ていた
私はリビングで、寝転びながらパンフレットを漁った
……楽しみで仕方がない




