「尾行開始?」
「じゃあ先帰っといて。あ、今日も遅くなりそうだから、日伊乃と一緒に先に食べて大丈夫だよ」
「……分かりましたわ」
奏斗は加蓮と別れ、走ってどこかに向かった
「……お願いしますわね。由比羽さん」
「うし!任せといてよ!」
今日から調査開始。放課後、急いでどこかに走り出した奏斗を追うことにした
「……にしても由比羽さん。なんですのその格好は……」
「ん?これ?カッコよくない?」
私の格好は制服の上からベージュ柄のマントみたいなのを(ネットで探偵コスプレとして売ってたやつ)羽織り、口にはパイプと呼ばれるタバコを咥えていた(これもネットでコスプレアイテムとして買ったやつ)
「……目立ってバレませんか?」
「大丈夫!身バレしないように動くのが探偵だから‼︎」
「はぁ……」
まずは形から入るってね。今の私はどこからどう見ても探偵だわ!
「よし!じゃあ早速ーー」
「コラー‼︎」
と、廊下で大声で怒鳴る声が聞こえた
「なんだその格好は‼︎」
「げっ!」
私はよりにもよって、熱血教師で有名な体育の先生に出会ってしまった
「こ、これには事情が……」
「あ、あー!お前っ‼︎高校生の癖にタバコなんて吸いやがって‼︎しかもパイプじゃないか‼︎」
「だからこれには理由が……」
「言い訳は聞かん‼︎生徒指導室まで来なさい‼︎」
「はえ⁉︎ちょ、ちょっと待っ!り、理由だけでも聞けってばー‼︎」
♢ ♢ ♢
「さて!今日から尾行していくよ!」
「昨日のこと、無かったことにはできませんわよ?」
「うっ!ご、ごめんなさい……」
結局昨日はあの脳筋先生に捕まってしまい、後を追うことは出来なかった
「でも、今日は普通の私服で行くから安心して!」
「……まあ私服なら大丈夫でしょうけど」
「でしょー?じゃあ早速ーー」
「コラー!誰だ私服で学校に来てるやつはー‼︎」
またしても脳筋先生が怒鳴っている
「またお前か‼︎昨日注意したばっかりだろうが!」
「い、いやいや待って‼︎今日はただの私服だし!」
「うちは制服以外での登下校は禁止だろうがー‼︎」
そういえばこの高校、部活生であろうと、登下校の際は必ず制服でっていうルールがあった……
「昨日反省したと思ったらまだ懲りずに……今日もみっちり指導してやるから来い‼︎」
「え!い、いや!今日は本当に悪気なかったんだってー‼︎」
♢ ♢ ♢
「よーし!じゃあ今日から奏斗の調査開始!」
「……由比羽さん。あなたポンコツですの?」
「……否定したいけど出来ないわね」
7日間のうちの2日間を無駄にしたのだ。探偵を本業にしてる人なら、顧客から怒られても文句は言えない
「でも今日は大丈夫!ちゃんと制服で追いかけるから!」
パイプも探偵用のコスプレも無駄になってしまったが仕方ない。これならあの脳筋も文句ないだろう
「よし!じゃあ今日こそ追跡をーー」
「あ、いたいた!姉妹さん!」
私を旧姓で呼んだのは、日本史の女性の先生だった
「……なんですか?今忙しいですけど」
「忙しいってあなたね。今日図書委員の当番でしょ?」
「……あ」
そういえばそうだった。すっかり忘れていた
「ほらっ!八幡くんを待たせてるんだから早く行きなさい!」
結婚したという理由で、変に気を使わせてしまったのか、当番は毎回太一と一緒なのだ
「い、いや!今日は本当に忙しくて……」
「加蓮さんと喋ってるだけじゃない」
「いや、今から用事があって……」
「そんな嘘はいいから早くしなさい!」
先生は私の腕をガシッと掴んで、無理矢理引きずった
「ちょっ!た、太一だけでいいじゃん!どうせ対して人来ないんだし!」
「そうやってサボると、他の生徒に示しがつかないでしょう?」
「なら代役用意するからー!加蓮にやってもらうからー!」
「図書委員の生徒以外はダメって決まりがあるの。だから観念なさい!」
「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
♢ ♢ ♢
「……いい加減ちゃんと調査して頂いても?」
「はい……頑張ります……」
私は調査を開始する前と今とで、モチベーションにすごく差が出たのだった……




