「……何やってるんだろ。私」
「うーん……進展なし……か」
私は実家の自分の部屋でモニターを見ていた。その映像は私と奏斗、加蓮の家の中が映し出されていた
由比羽も言っていたし、私も薄々そう感じていた事が本当なのかを知るべく、私は家の中に防犯カメラ(盗撮)を設置した
だが特に変化もなく2週間が経った。次の報告まで約2週間。期限は半分を切っていた
「やっぱり私の勘違いかなぁ……」
本当にどうでもいい会話しか流れてこない。学校の出来事や、加蓮の家の事。私が得たいような話は一つも上がってこない
ただ、たまーに私の分からない言葉が出てきたりする。『あそこはセーブしてから行かないと」とか『あそこの選択肢が8個なのはチープすぎますわ……』とか『まずは○○ちゃんを攻略してから次に○○ちゃんを攻略しますわ』などなど、私には全く話の内容が分からなかった。もしかして隠語?
『それで?今どの章をやってるの?』
『今は織田信長の章ですわ』
『へー。意外と進んでるじゃん』
これは私にも分かる。多分戦国ゲームをしているんだと思う
「……これ以上聞いてても仕方ないな」
私はモニターを消し、ベッドに大の字で寝転がった
「……何やってるんだろ。私」
花の女子高生だというのに遊びに出かけず、結婚してるが故に恋愛も出来ない
私なんかより、加蓮の方がよっぽど良い高校生活を送ってる
「……馬鹿馬鹿しい」
いっそのこと匙を投げてしまおうか……そもそもなんで私が監視役にならないといけないの?
そんな事を考えちゃいけないことは分かってるけど、そう考えずにはいられない
「……寝よ」
私はもう考える事をやめて、深い眠りについた
♢ ♢ ♢
目を覚ますと、外は真っ暗になっていた。軽く5時間程は寝ただろうか。昼寝というにはあまりに寝過ぎた
「……もう一回確認しとこ」
一度寝たおかげか少し冷静になれた。私が職務を放棄するわけにはいかない。……家族に迷惑はかけられない
私は真っ暗の部屋でモニターの確認をした
『あ゛あ゛あ゛あ゛‼︎何してんの⁉︎』
『何って、お味噌を入れてるのです』
『どんだけ入れるつもりだよ!パック半分の味噌入れてどうすんだよ‼︎』
『味が濃い方が美味しいに決まってますわ‼︎』辛くなって食えたものじゃなくなるからやめろ‼︎あと、味噌はお玉ですくって入れるって教えただろう?』
『入ればどっちでも同じではありませんか』
『違うの‼︎大事な工程なの‼︎』
「……一向に上達する気配がないねぇ」
結婚して約3ヶ月。加蓮は毎日料理の練習をしているが、一向に上手くならない
「奏斗……いずれ倒れるかもね」
私はこれ以上聞いても無駄だと判断し、再度モニターを消そうとすると……ここで私は耳を疑い、そして少し納得してしまう話を聞くことになった
『奏斗さ……結婚したこと後悔してますか?』
私は急いでヘッドホンを持って、モニターに差し込んだ
聞き漏らしがないように、音量を上げ、耳に神経を集中させた
『どうしたの。急に』
『……最近思うようになったんですの。奏斗に負担ばかりかけていると』
普段の加蓮からは想像出来ないほどしおらしい空気が漂っている
『私が無理に結婚を頼んだ手前、奏斗に不自由がないようにと努めていたつもりでしたが……上手くいかないことばかりで、最近よくそう考えるんです』
……無理に結婚を頼んだ?
加蓮の言葉で私は確信を得た。加蓮はお見合い相手との結婚をしたくがない為に、奏斗と結婚したことを
「キタ‼︎これならっ‼︎」
この情報を伝えれば、間違いなく私の家族は安泰。なんなら私の高校生活も、以前のように自由に戻る。この映像と音声は撮ってあるから残せるし、見せれば嘘ではないことは確定する
私は喜びを胸に、ヘッドホンをしていることも忘れ、飛び跳ねた
そしてその衝撃で、ヘッドホンの線が抜け、モニターから音声が流れた
『……確かに偽装だったよ。でも今は偽装のつもりなんてないよ。俺はこのままちゃんとした夫婦になっていけるって確信してるよ』
モニターに映る2人の顔を見ると、偽装なんて感じさせない……楽しそうにしている事が画面越しでも伝わった
『もちろん、日伊乃さんともちゃんと夫婦になっていきたいって思ってる。日伊乃さんとは成り行きで夫婦になったけど、良い人だし、もっと仲良くしたいって思う』
『……そうね。私も日伊乃には助けられたもの。いないと困るわ』
「……なによそれ」
私はモニターを消し、またベッドへと潜り込んだ
私は……どうすれば正解なのよ……




