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「ぎこちなさ」



「八幡さん」


「……その呼ばれ方慣れないので、由比羽って呼んで下さい」


「い、いきなり名前でですか?」


「ええ。……嫌ですか?」


「そ、そういうわけじゃないです。分かりました。じゃあ……ゆ、由比羽さん」


「敬語もやめませんか?」


「……えっ?」


「私の方が後輩ですし、敬語使われるのは少しむず痒くって……」


「……分かりま……分かった。ただ由比羽も敬語なしね?」


「了解!」



適応力早っ……



「それでどうしましたか?」


「え、えっとね、ちょっと奏斗のことを聞きたくてさ」


「ふんふん」



まず手始めに軽い質問からしてみよう



「奏斗の昔話とかない?」


「昔話……ですか?」


「そうそう!面白かった出来事とかさ何か無いかなーって」


「うーん……本人に聞いた方が色々話が出るのでは?」


「うっ……」



痛いとこを突いてくる……



「い、いやー奏斗ってば、全然そういう話してくれないからさ!」


「あーそういうことね」



そういうと由比羽は少し頭を悩ませる素振りを見せた



「そうだなー。小学3年生の頃の遠足で「バナナはお菓子に入ります!」って先生が高らかに宣言してたから、「ならみかんならセーフじゃね?」って言ってみかん持っていってすごく怒られてた時がありましたね」


「へ、へぇー」



面白いけどその考えに達する意味が分からない……



「あとは……小学4年生の頃に、男勝りな女の子にちょっかいかけては追いかけられて、逃げるって事を繰り返してたんです。そしたらある日男子トイレに逃げ込んで「ここには追って来れないだろう」ってたかを括ってたらその女の子が普通に入ってきてボコボコにされたことはありましたね」



「は、はぁ……」



この話だとやっぱりあの人に伝えるほどのことは何も無いな……



「他にはーー」


「あー!つ、次は最近あった出来事とか聞かせてもらえないかな?」


「最近ですか?」


「う、うん!なんか変わった様子だとかないかな?ちょっとしたことでもいいんだ!」



さらにまた頭を悩ませる由比羽



「あ、少し太りましたね」



……その原因は知っている。加蓮の料理の練習で生み出された数多の失敗作を食べているからだ



「……他にない?」


「あとは……最近学校で寝るようになったかな?」



……その原因も知ってる。加蓮がゲームにハマったおかげで自分も夜遅くまで付き合わされてるからだ



「……もうちょっとない?」


「うーん……ちょっとオシャレになった?」



……その原因も知ってる。加蓮が「私の夫なのですから、身に付ける物は一級品でなければなりません」と言って、ファッション関連の仕事の人をわざわざ呼び出して、奏斗に合う物を選んだからだ



……奏斗の変化の原因は加蓮だ



やはり聞いても報告するような内容は無い。……バレるの覚悟で偽話でも作るか……



「あ、あと加蓮との関係がちょっとぎこちないかな?」


「……えっ?」



私には分からなかったが、由比羽はそう感じていたらしい



「なんでそう思うの?」


「仲は良いんだと思います。クラスは別だけど、たまに見かける加蓮はどこか遠慮してる感じがして。でも奏斗とは素で話しが出来てると思います」


「なら、ぎこちなくないんじゃない?」


「いや、なんていうか……夫婦っていうか、私には友達って感じがしてならないんですよ」



由比羽の言葉を私はなんとなくわかる気がした。何故だか説得力があった。……いや、実は私も薄々気付いていたのかもしれない



「まあ私の思い過ごしだと思いますけどね」



有意義な話が聞けた。たまたまだが、これだけでもこの子に会った意味はあった



「……色々聞かせてくれてありがとう。お礼として、私が奢るから好きなもの頼みなよ」


「えっ⁉︎い、いいの?」


「うん。まあ私も加蓮に比べればちんけだけど、お金持ちの部類ではあるからね。たーんと食べな」


「やったー!」



由比羽は持っていたメニューを食い入るように見ていた



……意外と食いしん坊キャラなのかな?

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