「だから私は疑ってるんだ」
「日伊乃よ。経過はどうだ?」
「変わりなーし。至って普通ですよー」
私は月一恒例の経過報告を入れていた
「本当に変わりはないのか?」
「ないって。怪しいとこも何にもね」
これで3回目だが、報告することなんて本当にない。そしてこの強面を毎月拝まないといけないのも疲れる……
「……とか言うておいて、実は何かあるだろう?」
「……今日はやけに疑い深いね」
前回までならここで帰してもらえたのだが、今日はやけに突っかかってくる。まあどれだけ私を諭そうとも、何も出てこないんだけどね
「……日伊乃よ。次の報告ももし何もないと言うのなら、お前の家の会社との関係は切らせてもらう」
「は、はぁ⁉︎」
私は久しぶりにこんな大声を出してしまった……
「なんで⁉︎それとこれとは関係ないでしょう‼︎」
「いいや。私が命令したことを聞かず、仕事をしていないからだろう」
「だから一緒に暮らしてても何も出てこないからっーー」
「それは日伊乃がしっかりと見ていないからだ。もし私の望む成果でなくとも、お前が報告するのは「変わりはない」しかない。それでは仕事を全うしてるとはいえんな」
「……じゃあ何の報告をすればいいのさ?社長様はどんな情報をお望みなのかなぁ?」
私は皮肉ったらしく問いかけた
「1番は、2人が本当に好き同士で結婚したわけではないという確証が欲しい」
「……2人の関係を疑ってるの?」
「ああ。お見合いの話が出てすぐにあの奏斗とかいう男を連れてきたからな。少し怪しく感じていたんだ」
「……前から関係を持ってて、お見合いの話を出されたから紹介しただけでしょ」
「まあそうとも捉えられる。だがな、同じクラスになったこともなく、ましてや学校では幾度となく男からの告白に冷たい対応を返していたと聞く」
「それは奏斗という彼氏がいたから断ってたんでしょ?」
「結婚する程の仲が進行してるのに、周りが加蓮に彼氏がいたことを知らないのはおかしなことではないか?告白するということは、彼氏がいたことを知らないということだからな」
「隠して付き合っていたのかもしれないじゃん」
「隠せるものか。だから私は疑ってるんだ」
……根拠は浅い。でも確かに違和感はある
「……望んだ報告は出来なくても文句言わないで下さいね」
「ああ。だが次に報告をする内容は……ちゃんと濃いものにしてくれよ?」
「……分かった」
私はそう言い残して、重苦しい空気が流れる部屋から飛び出した
「……会社を盾にしやがって」
私の父の会社はそこそこの大きさを誇る。ただ提携している会社は加蓮の親が運営している会社のみ。それを打ち切られてしまえば、私の家は路頭に迷うことになる
だから私は加蓮のお父さんに何かわだかまりが出来ないように振る舞ってた。加蓮と太一の結婚にだって、本当は巻き込まれたくなんてなかった
……別に好きな人もいなかったから許容はしたけどね
♢ ♢ ♢
「……さてどうしようか」
私は近くにあった喫茶店で一服した。あ、タバコは吸ってないよ?コーヒーとケーキを頼んだだけ
そんなことよりも何を報告するべきだろう?確かにサボりながら監視をしてたことは事実だ。でも伝えるような事がないのも事実
2人は家では常に一緒にいるし、会話にぎこちなささも感じない
……ただ、恋人同士に見えるかと言われれば、それも少しおかしく感じる
恋人というより……共同で何かを成し遂げてる……って感じがする。近すぎず遠すぎず……そんな印象はある
いっそのこと嘘を並べてごまかしてみる?いやでも、深く追求されて矛盾が生まれたらアウトだし……難しい話だ
「……あれ?若菜さん?」
悩む私に声をかける美少女
「……確か姉妹さんでしたよね?」
「そうです。もう姉妹ではなく、八幡ですが」
「それを言うなら、私も若菜ではなく、比呂ですよ」
「確かにそうですね」
私は彼女に前に座るように指示し、姉妹さんと同席した
「今日は1人ですか?」
「私は1人の方が多いですよ」
「……1人が好きなんですか?」
「いえ、特別そういうわけじゃないんですけどね」
……そういえば、姉妹さんは奏斗と仲が良いはず……何か聞き出せるかもしれない
利用するようで悪いけど……ちょっと奏斗の話を聞かせてもらうとしますか




