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「卯月の夏休み」



「私の夏休みはね……楽しかった!嬉しかった!」


「……幼稚園児かな?」



感想の述べ方が幼稚園児のそれ。幼稚園児が言ったのなら「可愛いねー!」とか、「良かったねー!」ってなるが、この歳でその感想を言われると「この子ちょっとやべぇ……」とか「ガキか‼︎」などなど辛辣な言葉が届くだろう



「……何が楽しくて、何が楽しかったの?」


「うーん。楽しかったのは毎日かな?家にいる時もやりたいことやってたし、友達とは遊園地行ったり、泊まりがけで海行ってバーベキューしたりしたかな!」



すごい典型的な女子高生の過ごし方してる……インドア派の私にはあり得ない過ごし方だ……



「じゃあ嬉しかったのは?」


「……実はね」



卯月はこっちに寄ってきて、私に耳打ちした



「……それで……こうで……ああなって……」


「えっ……ええええええっっっっっっ⁉︎」



私は街中で大声を上げてしまった。周りを歩く生徒達の目や、街の住人達の目が私達の方へと一点集中した



「し、しー‼︎声大きいって‼︎」


「い、いやだって卯月ったら、せんせーー」


「わー‼︎わぁぁぁ‼︎やめて‼︎他(・)の(・)人(・)に(・)バ(・)レ(・)ち(・)ゃ(・)う(・)か(・)ら(・)‼︎」



卯月は私の口を必死に押さえた



「……落ち着いて深呼吸してー」


「……すぅー……はぁ……」



口を塞がれたまま、深呼吸した。塞がれているせいでほとんど空気が入ってこない



「落ち着いた?」


「……」ふるふる



全然落ち着けていないので、首を振った



「じゃあまた深呼吸してー」


「……すぅー……はぁ……」



やはり空気は全然入ってこない。てかそろそろ苦しい……



「……落ち着いた?」


「……」ふるふる



落ち着いてはいないので、また首を横に振った



「じゃあまた深呼吸してー」


「……すぅー……うぐっ……」



や、やばい……空気が……



「落ち着いた?」


「んんっ!んんっ!」



息苦しすぎる。落ち着いてはいないが、このまま離されないと死んでしまう



「……絶対まだ落ち着いてない」


「んん⁉︎」


「はいまた深呼吸!」



卯月は手を離してくれなかった



「んん゛‼︎んん゛っ‼︎」



私は無理矢理卯月の手を振り払った



「はぁっはぁっはぁっ……こ、○す気か!」


「くそっ……バラされるぐらいなら○そうと思ったのに……」


「確信犯かよ‼︎」



吸えなかった分の息を吸い、私は一旦落ち着きを取り戻した



「……詳しい経緯、教えてくれる?」


「あれ?聞きたい?」


「いやもうそのノリさっきやったから」


「天丼って大事じゃない?」


「今に限ってはいらないかな。ほら早く教えてよ。私が卯月の話で興味示したの初めてなんだから」


「やばっ……悲しすぎてすごい泣きそうなんだけど……」



なんて言いつつ、泣く様子はない。ただのブラフだ



「まあいいや。じゃあそうなった経緯を教えるね」



卯月は夏休み中にあった嬉(・)し(・)い(・)出(・)来(・)事(・)を話し始めた



♢ ♢ ♢



「うーす。久しぶりー」


「……綿田先生」



夏休みももう折り返し地点。この日夏休みを迎えてから綿田先生は初めて美術部に顔を出した



「全然顔出しませんね。先生は」


「まあ色々忙しくてなぁ。それより順調か?」


「……それなりに」


「もう5日後だったか?コンクールは」


「……はい」



前回のコンクールで、私は最優秀賞を頂いた。そして今書いているのは、また別のコンクール用の絵だ



「にしても良く書くよなぁ。今日本当は休みだったろ?」



美術部自体は休み。だが私は休みを返上し、学校の許可を得て美術部を使わせてもらっていた



「1人の方が、進みがいいですからね」


「あー、落ち着くからか?」


「そうです」



私には分かる。今、全く以前の教訓が活かされていない



私は存ぜぬ間に、先生相手に冷たい態度を取っているらしいのだが、今は分かる。普段の私と違うことに



私はなんでこんなにも先生相手に冷たい態度を取ってしまうのだろうか……



「そうかー。ほどほどになー」


「……分かってますよ」


「んー。あ、そうだ。卯月、お前今回のコンクール、最優秀賞取ったら何が欲しい?」


「……何が欲しい……とは?」



私の描く手が止まった



「いや、谷澤先生からもだし、美術部の奴らからもお前の頑張りは聞いててな。結果もちゃんと伴ってるみたいだし、俺からご褒美をやろうと思ってな」



谷澤先生は美術部のもう1人の顧問だ。……それにしても余計なことをしてくれる。私の頑張りを先生に教えるなんて……皆んな大好き愛してる



「……なんでもいいんですか?」


「おう。そんなに高くなければ問題ないぞ」


「……そうですか」


「欲しいもの決まってるか?」


「……はい」


「お、なんだ?」


「……それは最優秀賞取ったら言います」


「ほぉ、なら頑張って最優秀賞取れよー?」


「言われなくても取りますよ」



……私が欲しいものは決まってる。これは私に与えられたチャンスだと思う



……何がなんでも、最優秀賞は取らせてもらう‼︎

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