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「良い妻になれるように頑張りますね」



「……」


「……」


「……」


「……」



結婚式が終わり、家に帰ってきた。……余計な人を1人連れて



誰がこの話を振ればいいのか分からず、静寂が流れる。一つの部屋に4人いるとは思えないほど、静かだった



「……あの、どちら様です?」



ここで話の口火を切ったのは琴乃。まあそりゃそうだろう。何も知らないのだから



「私?私は太一くんの婚約者です」



やばっ……さっきあんなことがあったばかりなのに、もう太一の婚約者名乗るメンタルの強さやばっ……



琴乃は太一を睨みつけた。琴乃が太一に対して睨んだ姿は初めて見た



「……どういうことですか?」


「……説明するよ」



太一は今日起こったことを説明した



♢ ♢ ♢



「……そういうことでしたか」



事細かに結婚式で起こった事情を説明した。琴乃は若干納得していない……というより疑っていた



「琴乃。太一の言ってることは全部本当だよ。嘘は一つもない」


「……分かってます。嘘ついてもバレるだけですし、最初から浮気なんて疑ってません。ただ状況を知りたかっただけです」



琴乃は軽く溜息をついた



「……名前は何でした?」


「樹咲 伊津。さっきの話で何回も出てるでしょ?」


「あー。確かに聞こえてきた気がしなくもないね」



あ……琴乃怒ってるなぁ……あれ



あの悪態……あの口調……あの声のトーン……間違いなく怒ってる……琴乃が怒ってるのを見るのは、これで3()()()



「それで?どうするつもりなの?」


「このまま太一さんと結婚するつもりですが?本当は2人きりが良かったですが、複数婚しか認められないから、仕方ないからあなたにも太一の妻である権限は与えたままにしておいてあげます」



琴乃の拳が震えてる……間違いなく今までで1番怒ってる……



「あのですね……そもそも元々の結婚はどうするつもりです?」


「当然破棄されましたよ。まあお2人は()()()()()()するらしいですが」



婚約者準備婚とは、もう1人の妻が居なくても結婚出来る制度。ただ、半年以内にもう1人の婚約者を設けないと、強制的に離婚。そして再婚不可にされるのだ



「そこじゃなくて、結婚破棄したのですから何かしらの責任は取らされるはずでしょう?」



婚約破棄。当然破棄した側に責任があり、場合によっては7桁〜8桁の慰謝料を請求される。琴乃はこれについて聞いたのだろう



「そんなのもう既に払ってくれました」



7桁以上の金額をその日のうちに渡す……さすが金持ち……



「……親御さんは何と言ってるの?」


「「本当に好きなら太一くんと結婚しなさい」って言われてる」



放任主義なんてレベルじゃないな……



「……太一はどうするつもりなの?この子のこと、受け入れるの?」



この事象の決定権は太一にある。太一が樹咲さんを妻として迎え入れるというなら、私達に()()()()()()



妻は夫が新しい妻を連れてきた時、その人を妻として迎えて欲しくない!と拒否することは出来ないのだ。権限は夫にあたる人のみにある。そう法律で決まっている



なので、もしここで太一が新しい妻として、樹咲さんを迎えると宣言した場合、私達にはどうすることも出来なくなるのだ



「……樹咲のことは好きだが、それは友達としてだ。異性として好きかって言われたら、好きではないかな。だから結婚する気はないよ」



太一はきっぱりと断った。良かった……これで結婚するって言い出してたら、私は太一を見損なっていたと思う



ただ、その言葉を黙って聞く樹咲ではなかった



「太一くん。残念だけどあなたは私と結婚しなければいけないの」



と、断られたばかりだというのに、樹咲はなぜか自信満々な様子だった



「……どういうこと?」


「……実はね、私の父の会社はそこの女の父親が勤めてる会社なの」



樹咲は琴乃の方を指差しながら言った



「それで、もし結婚を断られるようなことになったら、そこの女の父親を解雇するって約束してくれたんだー」


「なっ⁉︎」



琴乃の父親を樹咲は脅しの材料に使ってきたのだ



「太一くんの妻2人の事を調べてたら、たまたま分かっちゃってー。これは使えるなーっと思ってね」


「……樹咲。お前いつからそんな風になっちゃったんだ?」


「そんな風……?」


「そんなゲスい事を考えたりするやつじゃないはずだろ?お前は気が利いて、優しい人間だったはずだ。なのに何で……」


「んー……まあ私が変わってしまったのは太一くんのせいかな?」


「……俺の?」


「そう。太一くんが私の前から離れちゃったから……いなくなっちゃったから……私はこうなっちゃったんだよ?」



太一の手を握る樹咲



「……私はもう、あなたから離れない。あなたを離さない。あなたを逃がさない。あなたを……諦めたくない」



太一の手を握る力が強くなっていく樹咲



「だから手段なんて選ばない。一緒にいるためなら、私はどんなことでもするよ?」



樹咲の覚悟は本物だろう。断れば何しでかすか分からない……そんな怖さを感じさせた



「……太一」



琴乃は不安そうな表情で太一を見ていた。琴乃自身もどうすればいいか分からない様子だった



太一を取られたくない。でも、太一が断れば、自分の家族が露頭に迷うことになるかもしれない……複雑な心境に琴乃は今陥っているのだろう



「……分かった。結婚すれば、琴乃の父親は解雇しないんだな?」


「約束します。それどころか、一つ上の役を与えるように、私が父に進言しますわ」


「……そうか。なら結婚しようか」



太一の答えは、樹咲を妻の1人に加えるというものだった



「……私、良い妻になれるよう、頑張りますね」


「……ああ。ただ結婚式とかは挙げないが、別にいいか?」


「ええ。構いません。一緒にいられれば文句なんて言いません」



こうして私達の家に、突如として新しい妻が1人増えることになったのだった……




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