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「……本当にいいの?」



期末テストも無事終了。卯月もバッチリ補修が決定した



「勉強しないからじゃん……」


「してたよ!してこの結果だったの‼︎」



通知票が渡され、卯月の通知票には赤く表示された数字が2つあった



夏休みが少し潰れて、涙を流す卯月。ただ、それは自己責任だ。私は勉強を教えてあげたし、琴乃もちゃんと赤点は免れていた



「まっ。頑張れー」


「そんな人事みたいに!」


「だって人事だもん」



私はちゃんと赤点は回避している。それどころか頭は良いから危機でさえなかったが……



と、ここで学校のアナウンスが流れた



「姉妹 由比羽さん。夜須加 琴乃さん。八幡 太一さん。至急、家庭科室までお願いします」



アナウンスの内容は、私を呼び出すものだった



「あ!いよいよなんじゃない?」


「……はぁ。いよいよきちゃったかぁ」



呼び出された理由は分かっていた。そして、クラスメイトの視線も、こちらに向いていることも分かっていた



「……行くかぁ」



気怠けな足を動かし、家庭科室へ向かった



♢ ♢ ♢



「……由比羽ちゃん……綺麗……」


「……は、恥ずかしいからあんまり見ないで欲しいんだけど……」



私は真っ白な衣装を身に纏っていた。いわゆるウェディングドレスというやつだ



そう。今日は琴乃と太一と……私の結婚式だ



結婚するお決まってから1週間近くしか期間は経っていない。だが法律改正により、結婚の手続きが安易になり、そして式場で結婚式を挙げない場合は最短で3日後には結婚式を挙げることが出来る様になったのだ



ただ、奏斗の時と違い、お金はないので学校の体育館で結婚式は執り行われる。お金持ちの場合は奏斗の時のように、市民体育館を借りたり、式場で挙げる者もいる



ただ、大半は私達が今から行うような、学校の体育館での結婚式だ



ちなみに、ウェディングドレスは無料貸し出しだ



「……今更だけどさ、本当にいいの?」


「……いいの。何回も聞かなくていいから」



琴乃は私に申し訳なさそうにしている



「八幡からも琴乃に言ってやって……って、もう私も八幡だったわ……太一。太一からも琴乃に問題ないって言ってやってよ」



私の名前はもう姉妹(あねも)ではなくなった。難しい読み方で、なんて読むの?と聞かれることはもうないだろう



「……俺も琴乃と同じ事を聞くよ。……本当に良いのか?」


「太一もそれ聞くの?もうすぐ結婚式だよ?」


「だからだよ。今ならまだギリギリ引き返せる」


「……引き返さなくていい。前も言ったけど、私にとってもメリットのある事なの。私だけじゃなくて、家族的にもありがたがってる。私が結婚するなんて思って見なかったってね。結婚の話をした時、一番喜んでたのは、私の母親なの。だから心配なんてしなくていいから」



誰よりも私の結婚を喜んでいたのは母だった。あれだけ結婚しないと息巻いていた私が結婚するんだから、さぞ嬉しかったのだろう



「……ありがとな。……由比羽」


「……あんたから名前で呼ばれると、背筋がゾワッとするわね」


「頑張って慣れてくれ。ちなみに俺もお前に名前呼ばれて鳥肌立ってたからな」


「じゃあお互い様ね」


「ああ。お互い様だ」



不思議と普通に話せている気がする。嫌悪感が全く無いといえば嘘にはなるが、他の男と喋る時よりかは遥かにマシな気がする



……()()()()()()()



「……それよりすっごい喉渇いたから、自販機でジュース買ってくるわ」


「俺が買ってくるよ。動きにくいだろ?」


「いいの。あんたに私の飲みたい物なんて分かりっこ無いんだから」



私は自分の財布からジュース一本分のお金を持って、自販機のある場所へと向かった



♢ ♢ ♢



「……ふぅ」



自販機で買った飲み物は缶コーヒー。普段コーヒーなんて全く飲まないけど、何故か無性に飲みたくなった



近くにあったベンチに腰掛け、私はウェディングドレスにかからないように、慎重にコーヒーを啜った



「……にっが」


「当たり前だろ。ブラックなんだから」



一息つく私の下に現れたのは、奏斗だった



「……あんた達はまだ教室で待機しないといけなかったんじゃないの?」


「今来たんだよ。学校にな」



よく見ると、たしかに学校様のカバンを持っていた



「……寝坊?」


「ああ。3人ともいつも朝は誰かに起こしてもらってたから、起きれなくてよ」



奏斗は結婚するまで一度も遅刻がなかった。ただ、結婚してからは、もうすでに4回の遅刻をしていた



「加蓮も?」


「加蓮が一番朝弱いんだよ。全然起きなくてな」


「……そうなんだ」



お嬢様の意外な弱点を教えてもらった。……何かに使えるような内容じゃないけど



「……お前が結婚するなんてな」


「ね。人生何があるか分かんないもんだね」


「……本当にな」



少しだけ気まずい雰囲気が流れる。今まで奏斗と話すときにこんな空気になったことはなかった



「でも、私も奏斗が結婚するなんて思ってなかったよ?」


「……()()()()()()()()?」


「……まあね」



直接聞いたわけじゃない。ただある程度の予想はしている。そして、その予想はおそらく当たっている



「……もしさ。本当にもしかしての話をするけどさ」


「……うん」


「俺が……お前のことが好きだったって言ったら……どうする?」



……何を今さら



「……ビンタするかな」



私は缶コーヒーを持って、太一から逃げるように家庭科室へと戻った



……本当にもう



……遅すぎるのよ……バカ


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