「いい感じですわ」
「とりあえず違うもの作ってみたら?」
私はとある物を見て、目玉焼き以外のものを提案した。そのとある物というのは卵パックだ
昨日、「卵がないから明日買ってくるよ」と、奏斗が言っていた。そしてゴミ箱には十個入りの空の卵パック……そしてキッチンに置かれた二つの卵……そして冷蔵庫には卵が入っていない……
ということは、私が食べた分を合わせて、卵を8個消費したことになる
まだ加蓮に目玉焼きを作るのは早いということ。……目玉焼きより簡単な料理の方が少ないけど……
「例えば何を作ればいいんですの?」
「そうだなぁ……あ!いいのあるよ!」
♢ ♢ ♢
「いいぞ!あともう少しだ!」
「そうそう!しっかりと見て!入れすぎないで!」
加蓮はゆっくりゆっくりお湯を注いだ……そして、お湯の量が線に達した時、ピタリと注ぐのをやめた
「で、出来た……?」
「出来てるよ!奏斗!加蓮が料理出来てるよ!」
私は思わず、奏斗と抱き合いながら喜んでしまった。だってあの加蓮が完璧に作り上げたのだから!
カップラーメンを!
「……バカにしてますの?」
喜ぶ私達とは裏腹に、加蓮は喜ぶどころか不満そうな顔を浮かべていた
「なんでそんな不満そうなの?ちゃんと料理作れたじゃん!」
「お湯を注いだだけじゃありませんか!」
バレてしまった……
「お、お湯を注ぐのも立派な料理工程だよ?」
「私は焼いたり、切ったり、煮たりしたいのです!そういう料理を作れるようになりたいのです!」
「水を焼いてカップラーメンに流すのは?」
「温めただけではありませんか!」
加蓮は一度やりたいと決めたことを本気で取り組む人間。やはりお湯を注いだだけの料理じゃ満足なんてしなかった
「……仕方ないなぁ。じゃあベーコン焼いてみて」
「分かりましたわ!」
「あ、それと私達は出来上がるのをテレビを見て待ってるから。ちゃんと自分が出来たと思ったら持ってきてね」
「えっ?見なくていいのか?」
「もしかしたら見られててプレッシャーを感じてミスしてたのかもしれないでしょ?」
「そ、そうですわ!奏斗が今まで横から目を光らせてたから作りづらかったのです!」
「そうなの?……なら日伊乃と待ってるよ。あ、油だけはちゃんと敷いてね?」
「分かってますわ!」
私は冷蔵庫にあったベーコンをキッチンに置き、奏斗と共に食卓の机の前で待つことにした
「加蓮ってば、油も使ってなかったの?」
「あー、俺が手本を見せた時に……「こんなに油を摂るなんてカロリー過多ですわ!」っていってたんだよ」
「そこまで知識がなかったとは思わなかった……」
♢ ♢ ♢
「……遅くない?」
調理開始から5分が経過した。ただベーコンを切って焼くだけの工程に時間がかかりすぎていた
「まさかこげるまで焼いてるんじゃ……」
「……さっきも焦がしたの?」
「う、うん。「卵はよく焼かないとお腹を下してしまいますわ!」って言って真っ黒になるまで焼いてたよ」
「今まで真っ黒になった卵を食べたことないだろうに……なんでそういう考えになっちゃうかなぁ……」
もしかしたらベーコンも真っ黒になるまで焼いてるかもしれない。……心配になってきた
「……ちょっと見てくる」
私はじっと待っているつもりだったが、いてもたってもいられず、キッチンに様子を見に行った
「ちょ、調子はどう?」
「いい感じですわ」
見たところ黒い煙は上がってない……
だが、違和感はある
「……何その寸胴鍋?」
なぜかベーコンを焼くだけの作業なのに、鍋に火をかける加蓮
「ああ……昔に私の家に仕えるメイドに聞いたことがあったの。ベーコンは蒸してから焼くと美味しいって」
「へ、へぇ……」
どうやって蒸すつもりなんだ……
鍋の中を見ると、少量の水に、ラーメンなどの湯切りに使う網杓子を鍋の引っ掛けていた。こんな蒸し方は初めて見た
「ま、まあ頑張って……」
「はい!」
焦がしてないことを確認出来ただけで良かった。……果たしてあれで蒸せているかは分からないけど……
♢ ♢ ♢
「出来ましたわ!」
あれからさらに10分経過し、加蓮から料理が運ばれてきた
机と皿が接触する音が鳴ったと同時に、私は絶望した
「え、えっと……これは?」
「見ての通り、ベーコンですわ!」
皿の上には、燃料に出来そうな真っ黒な物体が置かれていた
「ひ、日伊乃?大丈夫って言ってなかった?」
「焼く工程まで見てなかった……」
しっかりと最後まで見ておけば……と、私は後悔した
「さあお食べになって!」
加蓮は自分のこの炭になったベーコンの味に自信があるようだったが、どう見ても美味しい訳がない。一度でいいから加蓮からはこのベーコンがどういう風に写ってるのか見てみたい……大層美味しそうに見えているのだろう
私達は意を決して、ベーコンもとい炭を口に運んだ……
♢ ♢ ♢
「……あれ?奏斗と日伊乃さんはどうしたのよ?」
「お腹を壊したみたいで2人とも休んでますわ」
「あの健康だけが取り柄の奏斗が休むなんて……何か悪い物でも食べたの?」
「さあ?わかりませんわ」




