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「そういうものなのです」



「うぅ……」



頭が痛い……瞼が重い……涙も勝手に出そうになるし、口を大きく開けたくなる



それぐらい今、私は眠たいのだ



時間はお昼休み。皆が各々お弁当や購買、食堂などでご飯を食べていた



「……大丈夫か?」



と、私の心配するのは私の夫……偽の夫である奏斗だった



購買で買ったパンを中庭のベンチで2人で食していた。夫婦になったばかりなのに、行動を共にしていない所を見られると疑われてしまうかもしれない。その少しの疑惑さえも立たせないように、お昼ごはんは毎回共にすることを決めていた



本来は日伊乃もなのだけど、今日は何故だか学校を休んでいるらしい



「……大丈夫も何も通常通りですわ」



私は心配かけまいとまたもウソをついた



……いや、これもウソ……本当はギャルゲーに熱中しすぎて寝れなかったなんて言えませんわ……



今日だけで何度ウソをついたのでしょう……



「顔色悪く見えるけど?」


「朝見てたでしょう?今日は化粧ノリが悪いのです」


「そういうものなのか?」


「そういうものなのです」



普段全然化粧しないのですごく適当に言ってるけど……



「まあ体調悪くないならいいんだ。とりあえずどっち食べる?」



奏斗はツナマヨおにぎりとメロンパンを私に見せた



「……ツナマヨで」


「ん。メロンパンはいらない?」


「ええ。それほどお腹すいていませんから」


「そっか。なら俺が貰うな」



奏斗は自分用に買っていた食べかけの焼きそばパンを置きき、メロンパンを頬張った



「メロンパン食べ終えてからにしなさいよ」


「んー?まあいいじゃん」



辛味のあるものと甘みのあるものを交互に頬張る奏斗。絶対別々に食した方が良い気がするけど……



「今日は委員会はないの?」


「え、ええ。ありませんわ」



私はクラスの学級委員。やりたくなんてなかったけど、他のクラスメイト達に推薦され、半ば強制的にやらされていた



「そうか。じゃあ終わったら下駄箱前でいいか?」


「構いませんわ」


「よし。とりあえず今日は帰りに食材とか、日用品をある程度見て帰ろうか」


「分かりましたわ」



……そろそろ限界が近いですわね



「私、そろそろ教室に戻りますわね」


「ん?おにぎり食べないのか?」


「よくよく考えれば、お腹は空いてませんわ。今日の夜にでも食べますわ」



私は眠い目を擦りながら、教室へと戻った



♢ ♢ ♢



戻ったからといって眠気が覚めるわけじゃない。教室の机に突っ伏して寝ている人もいるけれど、私にはあんなこと出来ない



そんなことをしてしまえば、皆んなの私へのイメージが崩れてしまう



かといって授業中に寝てしまうのも大問題……私に残された選択肢は、いつも通り振る舞うことしか出来ない



あくびもできない。あくびを我慢して流れてくる涙も堪えないといけない。重い瞼を無理矢理にでも開かないといけない。もし先生に当てられたりしたら、回らない頭を無理矢理にでも回して答えるしかない



あと2時間……私史上最も長い2時間になりそうですわ



♢ ♢ ♢



「ふっ……ふあーー」


「加蓮様ー!……加蓮様?涙が出てらっしゃいますが、何かあったのですか?」


「め、目にゴミが入っただけですわ!」



♢ ♢ ♢



「……」ウトウト


「じゃあこの問題を……緋扇……じゃなかった。比呂!」


「……」


「比呂?聞こえてないのか?」


「んっ……んん?……あっ!ひ、比呂って呼ばれ慣れずに気が付きませんでしたわ!」


「そうだったか。まあそれも仕方ない。昨日なったばかりだもんな。とりあえず比呂。この問題、お前なら分かるな?」


「も、もちろんですわ!」


「じゃあ答えはなんだ?」


「えーっ……これがあーしてこう……だから……5番ですわ!」


「正解だ!さすがだな」



……危なかった。こんな簡単な問題を理解するのにこれほど時間を要するなんて……



早く……学校終わって欲しいですわ……



♢ ♢ ♢



眠い時の時間の経過ってなんでこんなに遅いんですの?



体感既に2時間以上経過している私。ただ実際の経過時間は経ったの45分。やっともうすぐ1時間目が終わろうとしていた



なんとか耐えに耐え、眠らずにいることが出来たけど、正直もう1時間は無理。寝てしまうことは目に見えていた



あぁ……もう限界ですわ……



頭の痛さ、瞼の重み。もう耐えることは出来ない……



私は机に突っ伏しかけたその時……教室の扉が開いた



「どーも」



と、ここ最近で1番聞いた声が聞こえてきた



「……奏斗?」



と、授業中にも関わらず他クラスから奏斗が現れたのだ



「君、授業中だぞ!」


「え?あーいや、これから加蓮を連れて一度実家に帰る予定なんですよ」


「ん?()()()するのか?」



学婚休(がっこんきゅう)。婚約してから一週間の間。どこかで欠席、早退が出来る。この学婚休を使うと、その日は学校に来たことになり、単位が減ることはない



このシステムは、まだ新居への移住が完了しておらず、家の設備を整えるための時間であったり、新生活に慣れるための時間を捕獲するためだったり、少量だが新婚旅行に出るために使われたりする



ちなみに、日伊乃も今日は学婚休を取っている



「ん?でもそんな申請は出てないはずだが……」



学婚休を取るには学校の許可がいる。前日、もしくは当日には学校に連絡を入れ、学婚休を使用することを連絡しないといけない



「自分自身、担任に伝えるのを忘れてまして、お昼休み頃に伝えたばかりなので、まだ連絡が回ってないんだと思います」


「……そうか。ちゃんと忘れずに言わないとダメじゃないか」


「すいません。色々とバタバタしてましたから」


「まあいい。そういうことなら、早く帰りなさい」


「うっす。ほら加蓮。行くぞ」


「え、あっ……うん」



私は言われるがまま、荷物を纏め、カバンを持って教室を後にした



「……学婚休なんて取ってなかったわよね?」


「取ってないよ」


「ならなんでっ……」


「……まあなんだ。俺が眠たくて早く帰りたかったからウソついただけだ」



……あー。バレちゃってたみたいですわね



「……そうですのね。で、学婚休を理由にするなら、私を連れて行かないのはおかしいからですわね?」


「……まあそういうことだ。だからさっさと帰ろうぜ。帰って速攻で寝て、その後に買い物だ」


「……仕方ありませんわね」



全く眠そうな目をしていないくせに何をいっているのやら……ウソをつくなら、せめてウソのあくびの一つや二つしたらいいのに……



奏斗は……誰も気づかない私の変化に……気がついてくれるのですね


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