「没収ですわ」
「とりあえず私の荷物はこれぐらいですわね」
「俺ももう運び終わってる分でオッケーかな」
無事に学婚式を終えたその夜。学校から1番近くの学婚生用のマンションに引っ越してきた。ちなみにこのマンションの中では1番広い部屋で最上階にある
「それにしても狭いですわね……」
「いや……これでも大きいぐらいだから」
確かに一度入れてもらった加蓮の部屋に比べると狭く感じるが、以前の自分の部屋の2倍以上の大きさなので、俺には十分すぎるほどの広さだった
「日伊乃さ……日伊乃は明日の朝から来るって」
「あの子ったら……荷物を纏めておくようにとキツく言っておいたのに……」
日伊乃はまだ荷物を纏め切れていないらしく、今日は実家に戻っていた
「とりあえず部屋分けでも決める?」
「そうですわね」
♢ ♢ ♢
加蓮と共に、一通り部屋を見回った
「リビングにバスルーム。トイレとキッチンに空き部屋が2つか……」
一つ一つの部屋は大きいのだが、部屋数が少ない。実はこれも学婚生用の仕様で、一緒に過ごす時間を多く取れるようにと部屋数を減らしているらしい
「2部屋だと1人だけ個人部屋がなくなっちゃうのか……」
「なら、私と貴方でこの部屋を使いませんこと?」
加蓮の提案に、俺は少し驚きを隠せなかった
「な、なんで俺と?日伊乃さ……日伊乃と2人なら分かるけど……」
「あの子とずっと2人はキツいですわ」
「なんで?」
「だってずっと構って欲しがるんですもの。身体が休まりませんわ」
意外……あまり日伊乃にそのイメージが無かった。お姉さん系のしっかり者のイメージが自分の中では確立されつつあったのだが……
「ま、まあそれなら俺は部屋無しでもいいけど?」
結婚したとはいえ、偽造結婚。加蓮が本当に好きな人を見つけられるまでのただの偽物の関係。それなのに一つ屋根の下どころか同じ部屋になるのは気が引ける
「それはいけませんわ!貴方にも私物を置く場所は必要ですわ!」
「俺はゲームしか持ってきてないし、別に大丈夫だよ。リビングのテレビさえ貸してくれればいいし」
「……ゲームですの?」
明らかに加蓮の声色が変わった
「没収ですわ」
と、俺の荷物の入ったダンボールを持ち上げた
「ちょちょちょちょ!な、なんで没収するのさ⁉︎」
「ゲームが入っているのでしょう?」
「そうだけど?」
「はい没収」
「ちょっと待ってって‼︎」
俺は必死に加蓮を引き留めた
「なんで没収⁉︎」
「ゲームは時間を無駄に浪費するだけの物だと教えられましたわ」
「……あのお父様に?」
「あのお父様に」
厳格そうで、ゲームに興味なさそうではあるなぁとは思っていたが、まさかそんな考えを持っていたとは……
「人生の時間は有限ですの。有効に使わないといけませんわ」
加蓮の考えは固すぎた。ただ、それは加蓮のせいではなく、そう教え込んだお父様のせいなのだろう
「……一回やってみる?」
「ゲームをですか?」
「うん。楽しいからさ。楽しいことは時間の無駄な浪費じゃないだろ?」
「それはそうですが……」
と、加蓮が持ったダンボールを取り上げ、中を漁った。加蓮が楽しめて、そして操作が簡単なゲーム……何があるだろう?
RPG……は楽しさが分かるには時間がかかるし、ボードゲーム系はゲーム機でやらなくていいじゃんって言われそう……
パズルゲームは受けるかもしれないけど、俺が興味ないから持ってないし、FPSはゲーム初めて触る人にやらせるのはバカだしなぁ……
なら アレしかないな
「これちょっとやってみない?」
「……なんですのこれ?」
「自分が男の主人公になりきって、好きな女の子とハッピーエンドを迎える為のゲーム……いわゆるギャルゲーだ」
「ギャルゲー?ギャルの人がいっぱい出てくるんですの?」
「そういうことじゃないんだけど……まあギャルも少なからず出るかな」
俺はギャルゲーというコンテンツを推したのには理由がある。一度加蓮の部屋に入った時に漫画、小説などを沢山持っていたのだ
意外と二次創作物などが好きなのかと思い、ならばストーリーが充実し、なおかつストーリーがメインなギャルゲーならばハマるのでは?となったのだ
主人公が女で、男を攻略タイプのゲームならなお良かったのだが、さすがに自分の趣味ではないので持っていなかった
「とりあえずやり方は教えるから1時間ぐらいやってみない?」
「……奏斗がそこまで言うなら……でも、1時間だけですわよ?」
「分かった。じゃあリビングのテレビに繋げるからね」
これで不評だったらゲーム没収……俺の生きがいが一つなくなるということ……お願いだから加蓮にドンピシャであってくれ……




