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「学婚式」



「新郎、比呂 奏斗。あなたは緋扇 加蓮。若菜 日伊乃を妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「……はい。誓います」



……私は今おそらく……いや……確実に夢を見ている



どんな夢かって?奏斗があのお金持ちお嬢様と一つ年上の女性と結婚するっていう夢



なんで夢だと思うかって?奏斗がお金持ちお嬢様と出会ったのは、まだ1週間前の出来事で、しかもお互い良い印象なんて全く受けなかったからだ



……でも現実らしい



奏斗、お金持ちお嬢様の緋扇 加蓮。そして一つ年上の女性である若菜 日伊乃の結婚式……いや、学生婚用の結婚式……〈学婚式(がっこんしき)〉が執り行われていた



場所は市内の体育館で行われ、参加者は新郎新婦の配偶者。そして、新郎新婦のクラス全員が参加していた



学校によるが大抵の場合、クラスメイトは必ず参加することになっており、私も奏斗のクラスメイトということで参加することになった



場所が結婚式場でないだけで、他はほとんど変わりはない。新郎はタキシードを身に包み、新婦達はウェディングドレスを身に包んでいる



「新婦、緋扇 加蓮。若菜 日伊乃。あなた達は比呂 奏斗を夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「「……はい。誓います」」



新婦の2人は誓いを立てた。本当に結婚するのかぁ……



「では、誓いをキスを」



奏斗はまず、日伊乃のベールをめくり、そして……キスを交わした。ただ、見られるのが恥ずかしかったのか、自らの後頭部で、キスする場面は見えないようにしていた



そして同じように、加蓮ともキスを交わした。先ほどと同様に、見えないように……



クラスメイトからは拍手。そして一部の悲鳴が聞こえてきた。おそらく加蓮の事が好きだった男達の声だろう



どれだけ告白されても、どれだけハイスペックな男だったとしても、決してOKサインを出さないことで有名だった加蓮



プロ入り確定的と言われるほどの逸材のサッカー部のエースを断り、神童と呼ばれる程の頭脳明晰な男も断り、自身と同等レベルのお家柄の後継者でさえも断った加蓮が、出会ったばかりのごく普通の高校生男子の奏斗と結婚するのだから

悲鳴を上げる気持ちが分からないでもない



「それにしても……なんか引っかかるんだよなぁ」



結婚すること自体に引っかかりは覚えてる。奏斗から結婚することだって聞いていなかったし、そもそも相手が加蓮と一つ上の先輩。部活をやってるなら先輩と交流があってもおかしくはないが、奏斗は帰宅部。先輩との交流なんてほとんどなかったはず



そして1番気になるのが3人の今の状態だ



加蓮と奏斗は仲良さげに話しており、加蓮と日伊乃も同じく仲良さげに話していた。ただ、奏斗と日伊乃からは何か戸惑いのようなものを感じ、とてもではないが、これから一緒に暮らしていくようには見えなかった



ただの私の思い違いかもしれない。もし何かあるとしても、私が口を出しちゃいけないようなことなのかもしれない



「……でもまあ。せっかくのおめでたい日だし、深く考えないでおこう」



私は考えることをやめ、目の前にある様々な豪華な料理を堪能することにした



緋扇家の一人娘の結婚式とだけあって、豪華な料理がずらりと並んでいた。本来なら結婚式場で挙げたかったのだろうが、法律で学生婚の場合、結婚式場で挙式は上げることは許されない。理由は一つ。人数的に入らないからだ



法律で決められた項目の一つに、学生婚を挙げる者は盛大に挙げること。理由としては、今後結婚するかどうか迷っている学生達に、結婚をすればこれだけ皆から祝ってもらえる。ということを認識させ、結婚に対しての概念を緩くしたいかららしい



本来の理由なのか、それとも上辺だけの理由なのかは分からないが、とにかくご馳走にありつける絶好の機会でもある。今のうちに堪能させてもらうことにした



「……疲れたぁ」


「お疲れ様ですわ。奏斗」



お色直しで一度席を外した俺達。皆は食事を楽しんだり、泣きながら「加蓮様ぁぁぁ……」と叫ぶ人達で溢れていた



「にしても上手く()()()()()()()()()かな?」


「おそらく大丈夫ではないですか?不審がっていた人はありませんでしたわよ?」


「なら良いんだけど……」



上手く()()()()()()()は出来ていたみたいだ



「日伊乃さんもお疲れ様でした」


「呼び捨てにしないと、怪しまれますよ?」


「あっ……ひ、日伊乃……」


「結局、ぎこちなさは残っちゃったね」


「先輩相手だとどうしても……ね」


「まあこれから慣れてくれればいいから」



……俺も加蓮も、なぜこの人が俺達の結婚の片棒を担ぐようなことをしているかは分からない。理由を聞いてもはぐらかされるだけ



家柄も普通。緋扇家との関わりも、加蓮が昔遊んでいてもらっていただけらしい



加蓮も不思議がっていた。父親と日伊乃は会ったこともなく、そもそも私の友達だったことさえ知らなかったはずだと言っていた



謎が多い人……でも、悪い人ではないことは分かる



「とりあえず、このまま結婚式を無事終わらせようね」


「……そうですね」


「敬語禁止‼︎」


「そ、そうだな‼︎」



でも、尻に敷かれるのは間違いないだろうなぁ……




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