「あんたの思い通りに世界は回らないの」
「おっす!ゆい姉!」
「げっ……光太郎……」
日曜日の今日。特にやることもなく家でゴロゴロしていると、今年小学五年生になったばかりの親戚が家にやってきた
「何しにきたのよ……」
「遊びにきたんだよ!お母さん達は出かけるからお留守番しててって言われたんだけど、それなら外で遊びに行くって言って出たんだけど、結局誰とも遊ぶ予定立てられなくて……」
「で、私の家に来たの?」
「うん!」
「あっそう。なら今すぐ家帰りな」
「なんでさ⁉︎」
よりにもよってうちも親が出てしまって私一人しか家にいない。自ずと光太郎と遊ぶ相手が私になってしまう……
せっかくの休みの日を邪魔されるのは困る。さっさと追い出そう……
「うちに来てもやることないんだから帰りなよ」
「えー?いっぱいあるじゃん!」
「何があるっていうのよ……」
家にはテレビはある。だが、私愛用のゲームは毎回押し入れの中に隠すので、光太郎はゲームがある事を知らない。その為、ゲームという選択肢も光太郎の中にはないはずだ
「例えばスカートめくりとかさ!」
普通に考えたらこのガキんちょが何を言っているのか分からないだろうが、私にはわかる。このガキんちょはいわゆるヤンチャ坊主で、クラス内でも女の子にちょっかいをかけまくるタイプの男なのだ
私も何度かめくられている
「って!スカートじゃないじゃん!」
生憎だが、今日は短パンを履いている為、めくることは出来ない
「スカート履き替えてきてよ!」
「あんたはバカなの?なんでめくられるって分かっててわざわざスカート履き替えるのよ」
「遊びにならないじゃん!」
「あなたは遊んでるのかもしれないけど、私はめくられて不愉快になって終わるだけだから」
さすがにあり得ないとは思うけど、このまま成長したら逮捕されるだろうなぁ……
「じゃあ胸触らせて!」
バシンっ!
私は無言で光太郎の頭を叩いた
「痛ってぇ‼︎何すんだよ!」
「なんであんたに胸を揉ませないといけないのよ」
「俺が揉みたいからだよ!」
ヤンチャ坊主だけでは飽き足らず、考え方がジャイ○ンだと……
「あんたの思い通りに世界は回らないの」
「回るもんね!俺、将来大統領になるから!」
ヤンチャ坊主にジャイ○ン的思考回路に頭お花畑とは……これは本気で将来が心配になる
「大統領になって、俺の好きなように国を動かす!」
「……そもそも日本に大統領はいないけど。総理大臣ならいるけど」
「あっえっ……?大統領いないの?総理大臣ってなに?」
この調子で国のトップを目指そうとしているのか……光太郎が国のトップを張る日が来たら、それはこの国の終わりを表すんだろうなぁ……
「人の上に立ちたいなら勉強するべきだと思うけど?」
「そんなのいらないよ!俺にはカリスマ性があるから!」
なんと……ヤンチャ坊主でジャイ○ン的思考回路に頭お花畑で更に天狗とは……訂正。国の終わりではなく、世界の終わりだった
「勉強なんてしてる時間はもったいないから、俺をどこか遊びに連れてってよ!」
「嫌だよ」
「お母さんに言いつけるよ⁉︎」
「どうぞー。どうせ怒られないから」
勝手に家に押しかけて、遊びに連れて行けと言われ、それを拒否したら怒られる訳なんてない
「ん゛ん゛!どこか連れてってよー!」
「しつこいなー。私はせっかくの休みを満喫したいの」
「……女子高生が休日に家でゴロゴロするのって満喫してるって言えるの?」
「うぐっ……」
意外と痛いところを突いてくる。確かに何故か世間一般では、女子高生は祝日にはどこかに遊びに行くのが普通だと思われてしまっている。そして家に篭る人の方がおかしいなんて見方もある
「私は家にいた方が楽しいの」
「……彼氏とかいないの?」
「いないというかいらないの。私が男嫌いなの知ってるでしょ?」
「でも俺とは普通に話すじゃん。もしかして……俺に気があるの?」
「……ふっ」
「鼻で笑うな‼︎」
あまりの的外れな言葉に思わず鼻で笑ってしまった
「あーもう怒ったもんね!」
「はいはい。勝手に怒ってなさい」
「ふん!ゆい姉が構ってくれないなら、こと姉のとこに行ってくるもん」
「なっ!」
こと姉とは琴乃のことだ。昔からしょっちゅう琴乃と遊んでいた私。そしてその場に光太郎も何度かいたことがあり、お互い知っている仲なのだ
「だ、ダメ!琴乃は今忙しいから!」
「なんで忙しいって知ってるのさ」
「そ、それは……私も今日誘ったけど用事があるって言ってたからよ!」
「ふーん」
私の言ったことは嘘だ。ただ本当にどこかに出かけている可能性はある。でも万が一家にいた場合、優しい琴乃のことだ。このガキんちょの言う事を聞いてしまうだろう
さっき私に言ったように、琴乃のスカートとかめくられてはたまらない……なんとしてもこのガキんちょを琴乃の所にいかせないようにしなくては……
ピンポーン……
と、家のインターホンが部屋に鳴り響いた
「あ、はーい!」
「ちょ、ちょっと!なんであんたが出るのよ!」
光太郎は玄関の鍵を開け、ドアを開いた
「こんにちはー」
「あ!こと姉!」
「ん……?あ、もしかして光太郎くん?」
「うん!」
「大きくなったね!」
「でしょー?」
……最悪だ




