表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/142

「無理に合わせられる方が嫌だと思うけどね」



ぷかぁ……



「卯月!」


「分かった!」



ザッバーン……



♢ ♢ ♢



ぷかぁ……



「卯月‼︎」


「ま、また⁉︎」



ザッバーン……



♢ ♢ ♢



……ぷかぁ



「卯月‼︎‼︎」


「も、もういい加減にしてよ‼︎」



ザッバーン……



琴乃が泳ごうとするたびに卯月が琴乃を回収。それをひたすらに繰り返していた



「卯月ちゃん……ごめんね」


「ま、まあいいんだけど……それより溺れすぎじゃない?」



一向に上達する気配のない琴乃。いや、そもそも上達とか以前の問題で、泳ぎのモーションにすら入れていないのだ



「やっぱり手をついた状態じゃないとダメなのか……?」



プールサイドに手をついた状態だと、バタ足は出来ていた。ということは手を離した状態だと琴乃自身が何かストッパーを引いてしまって動けなくなるのか……



理由はハッキリとしない。どう打開したものか……



「琴乃ちゃんさ。一回ビート板使ってみたら?」


「……ビート板?」


「ビート板……それはあり‼︎」



何かに手をついた状態だとバタ足出来るのならば、ビート板でその状況を打破することが出来る!



「卯月……あなたたまには賢いこと言うじゃない!」


「あ、あれ?貶したよね?褒めてないよね?」



卯月の言葉を無視し、私は無料貸し出しをしていたビート板を取ってきて、琴乃に渡した



「……?これどうやって使うの?」


「えっ……もしかして知らないの?」


「……うん」



プールに入れない私でも使い方を知っている。琴乃はたまにこういった基礎知識みたいなのが抜けてるところがある



まあ……それが可愛いんですけどね



ビート板を用いての練習を開始した



バチャバチャバチャバチャ……



「……私の目が悪いのかな?その場から進んでないように見えるんだけど……」


「大丈夫。正常だから」



バタ足をしっかりして、水しぶきもしっかりと起こっている。ファームもぎこちないながらも安定している。でも進まない。ずっと同じ場所でただ水しぶきを起こす人になっていた



「ど、どう!進んでる?」


「いや全く」


「う、嘘でしょ⁉︎」



必死にバタ足をしているが、進まない。ここまで来ると理由が本当に分からない……



「これはこれで才能なのでは?」



言われてみれば確かに……バタ足をしながらもその場に留まり続けることなど不可能に近い。泳げるようになるんじゃなくて、こっちを極めた方が有益なような……



って……極めてどうするんだって話だ……何の役にも立ちはしない。考えすぎて頭がおかしくなってるみたいだ



一生懸命バタ足を続ける琴乃。今まで努力している姿は何回も見てきたが、その中でも特に頑張っている様子だった



「……ねえ。そんなに八幡と海に行きたいの?」



私はふと、琴乃に質問を投げかけた



「……うん。行きたい」


「海嫌いじゃなかったっけ?」


「太一くんは海が好きみたいなの」



琴乃はいわゆる、彼氏に合わせるタイプの人みたいだ。彼氏の好きなものを自分も好きになろうと努力する人なのだ



「……八幡が好きだから、嫌いな海に……泳ぎの練習するの?」


「……うん」


「そっか……」



やっぱり……もう私だけのものじゃないんだね……



「私は無理に八幡に合わせる必要なんてないと思うけどね」


「……ダメだよ。太一くんが好きなことなんだもん」


「無理に合わせられる方が嫌だと思うけどね」


「……えっ?」



琴乃はバタ足をやめた



「嫌いなことを無理に克服するのは辛いこと。そんな思いしてまで合わせてほしいだなんて思わないよ。少なくとも私はね」



嫌いなものを克服することは必要。でも別にしなくていいことだってある。海が嫌い。泳げない。これは特に克服する必要はない案件だと、私は思う



「……」



琴乃は少し考え込んでいる様子だった



「琴乃ちゃん。私も由比羽の言う通りだと思う。合わせるのも大事だけど、程々でいいと思うよ?」



卯月もわたしの意見に賛同してくれた



「……そうだね」



琴乃はそういうと、ビート板を持って、プールから上がった



「泳ぎの練習はもうやめておくね。正直、上達する気がしなかったから……でも、海には行く!泳がなくても出来ることはあるからね!」


「……うん。それが1番かもね」



私としてはあんなに必死でバタ足してその場から進まないなんていう面白い姿を周りに見せずに済んで、心底ほっとした。そもそも海にビート板持っていく人なんていないからね……



「でもせっかく来たから少し涼む意味合いも込めて、もう少し入ってるね」


「ん。私のことは気にしなくていいから存分に入ってきな」


「そんな長く待たせたりさせられないよ。……あ、卯月ちゃんも入ろうよ」


「え……私?」



そういえば卯月はしっかり水着に着替えていたのにプールに一度も足をつけていなかった



「卯月も涼んできなよ」


「あ、いや……私はいいかな?」



……もしかして



「……えい」


「あっ!わっ!ちょっと‼︎」



ザバーン



私は後ろから卯月を蹴飛ばし、プールに飛び込ませた



「ぷはっ、、はっはっはっはっ!た、助けてぇ‼︎」



足が余裕で着く水深のプールでバタバタともがく卯月



「いやお前も泳げないのかい!」



私は思わず、ツッコミを入れてしまったのだった……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ