「どう責任とるか聞いてんだよ!」
……私は彼が好きだ
好きな理由……?挙げたらキリがないけど、1番は優しいところだ
誰に対しても平等に接し、自身を犠牲にしてでも相手を助ける……私は、そんな彼が大好き
……昔はね
♢ ♢ ♢
午後の授業も終わり、帰宅部の私は家に帰る準備をしていた
「由比羽……またストーカーするの?」
「しないよ。心配だから琴乃の後を尾行するだけ」
「それをストーカーって言うんだよなぁ……」
琴乃と八幡も今日はオフらしく、一緒に帰るということなので、私もついていくことにしたのだ。……後ろを
「いい加減やめなよ」
「やめないよ。私はまだあの男を信用してない。ましてや私と琴乃の時間を奪ってるんだからこれぐらいしてもいいよね?」
「由比羽は琴乃ちゃんの何なのさ……」
なんて卯月とやり取りをしていると、琴乃と八幡はカバンを持って、教室から出てしまった
「……よし」
私もそれを追うために、カバンを持った
「……はぁ」
と、卯月も溜息を吐きながらカバンを持った
「仕方ないから私もついてってあげる」
「……別にいいのに」
「由比羽を1人にしたらなにしでかすか分かんないからね。あんた、トラブルメーカーだから」
「いや、逆でしょ?」
卯月も琴乃達の……様子見。ストーカーじゃない。決してストーカーではない。様子見。ただ2人の様子を伺うだけの事に参加する事になった
♢ ♢ ♢
尾行を始めて五分が経過。特に何事もなく、ただ仲睦まじく帰っている様子が伺えた
「うんうん!私にとって理想的なカップルね!」
「しっ!うるさい!会話の内容が聞こえないでしょ⁉︎」
「えっ……聞いてたの?」
2人の家の方面とは違う方向へひたすら歩く2人。どこか目的地があるのか、それとも話す為にただただふらついているだけなのかはわからない
「あっ……止まるみたいだよ?」
「ここは……公園?」
2人は公園内へと入ると、入り口近くのベンチに腰掛けた
私達は公園の外で、こっそりと身を潜めることにした
「何話してるのかな?」
「……あー!小さい子達の声で全然聞こえない!」
2人の他に、公園内でボール遊びに興じる子供達がいた
「まあ公園だしね。元気なのは良いことだよ」
「分かってるけどぉ……」
公園ではしゃぐことは悪いことではない。元々そういった目的で作られているのだから。それを私のエゴで「静かにして!」なんてこと言えるわけがない
「……で……だかっ……そう……」
「んー!聞き取れないー!」
2人の会話は途切れ途切れにしか聞こえない。距離は近いけど、子供達の声が大きすぎて阻害されてしまう。……近隣住人はよく怒らないな……と思うレベルだ
「……もうちょっと近づこう」
「えっ⁉︎これ以上詰めたらさすがにバレるって!」
卯月は私にしがみついて身動きを取れなくさせた
「邪魔だって!」
「邪魔するよ!2人の邪魔をするならね!」
「このー……は・な・れ・ろー‼︎」
卯月との攻防を2人の後ろでこっそりと行われた
……だから、私は気づくのが遅れてしまった
「……っ危ない‼︎」
公園で遊んでいた子供が、ボールを追いかけて道に出てしまったのだ
そこに運悪く、乗用車が走ってきたのだ
……このままじゃ間に合わないっ!
車の急ブレーキを踏む時に鳴る高い音が町中に鳴り響いた。私は伏せてしまっていた目を開くと、そこには2人の人影と、当たる寸前に停止した車の景色が写った
「……大丈夫か?」
子供は歩道に尻餅をつくように座り込んでおり、車の前には制服姿の男が立っていた
「……八幡」
子供のことを庇った男は八幡だった
八幡が子供のことを歩道まで引っ張ったのだろう。だが、代わりに八幡が車に轢かれそうになっていた。いや……車が停止しなければ、確実に轢かれていたはずだ
「おいクソやろう‼︎危ねえだろうが!俺を犯罪者にするつもりか‼︎」
車に乗っていた40代に見えるおじさんは車から降り、八幡と子供に対して罵声を浴びせていた
「……すいません。子供の方も僕が言い聞かせますんで」
「そういうこと言ってんじゃねーよ!俺が犯罪者になったらどうすんだって話をしてんだよ‼︎」
男は轢かれそうになった2人の心配より、自身の保身の心配をしていた
「すいません」
「すいませんすいませんって、お前それしか言えねーのか!どう責任とるか聞いてんだよ‼︎」
「すいません」
「だーかーらー‼︎」
「黙りなさい‼︎」
私は咄嗟に口論に口を挟んだ
「あん?なんだよ」
「相手の心配じゃなく自分の心配ですか?」
「当たり前だろ?こいつらのせいで俺の人生台無しになりかけたんだから」
ああ……こいつはあの時と同じタイプだ




