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「これを見れば思い出さないか?」



「こっちこっち!」


「わ、分かったから引っ張らないでよぉ」



私は久しぶりにルンルンでウキウキな気分になっていた。理由はただ一つ!休日に琴乃とショッピングに来ているからだ



琴乃が付き合い始めてから初の2人っきりの外出。ついこの間まで毎週のように遊んでいた頃が懐かしい……



……私の琴乃を独り占めする八幡になんか苛立ってきた



なんて……今せっかく楽しい時間が流れているのにあの男の事を考える時間がもったいない。私から八幡の存在を抹消し、楽しむことにした



「ここ!ここのワンピースとキャミソールが可愛くてさ!」



私は以前に卯月と見つけた可愛いワンピースを琴乃に見せた



「琴乃ワンピース好きじゃん?安いしお買い得じゃない?」



値段もいつも使う額とほとんど変わらない。琴乃が似た柄を持っていないことも知っている。琴乃が買わない理由はないはず



「うーん……」



あ、あれ?



「んー……」



思ったより……反応悪い?



「確かに可愛いんだけど……()()の好みじゃないかも……」



……太一?誰?太一とは誰?男?友達?



あ、違う……私が今日だけ無理矢理記憶から抹消した人だ……確か……琴乃の彼氏……



頭がふらついた。昔なら即買いの商品だったはずだけど、今はもう彼氏の好みに合わせるんだね……



「あっ……でもキャミソールの方は買おうかな?」



私がもう一つオススメにしていたキャミソールを手に取る琴乃。琴乃の部屋着は大体キャミソールを着ていて、こちらも琴乃がまだ持っていないテイストのデザインである事は分かっていた



「サイズもピッタリだし……買ってくるね」


「……うん」



琴乃はカバンから財布を取り出して、レジへと向かった



「……はぁ」



大きなため息が出てしまった。彼女が彼氏の趣味に合わせる……別におかしなことじゃないが、やっぱり琴乃が実施していると思うとショックだったりする



「外で待ってよ」



私は店の外で琴乃の買い物が終わるのを待つことにした



♢ ♢ ♢



「……遅い」



レジに向かってから3分程経過していた。レジ前に客が並んでいた様子もなかったし、部屋着用のキャミソールを買っていただけだったから着替えてる訳もない。なら何故こんなにも時間がかかっているのか……



「琴乃ー?」



私は再び店の中に入り、琴乃を探した。そして琴乃を見つけたのだが……


「や、やめて下さい……」


「いいじゃんいいじゃん!遊ぼうぜ!」



身長が高く、少しチャラついた格好の男が琴乃をナンパしていた



「服とか選んであげるからさ!オシャレすれば絶対可愛くなるって!」



ほぉ……琴乃の可愛さに気づいている。あの男は女の子を見る目がある



「もっとチークとか足して……脚ももっと出した服装の方が似合うって!」


「え……えぇ……」



あの男……出来る!琴乃の可愛さを見抜くだけじゃない。更に上のステージへ引き上げるやり方を知っている……



だけどまぁ……琴乃が困ってるし、助けてあげないとね



「ちょっと!この子に何か用なの?」



私は琴乃と男の間に割り込んだ



「ゆ、由比羽ちゃん……」


「由比羽?お前もしかして姉妹 由比羽か⁉︎」


「男が私の名前で呼ばないで‼︎……まあそうだけど。なんで私のこと知ってるの?」


「俺だよ俺‼︎覚えてない?」



男は自分の顔を指差し、顔をアピールしてきた



「……誰?」



私は男の顔は覚えていない。顔どころか存在から忘れることの方が多い。当たり前だが、この男の事も記憶にない



「あーまあそうだよな。結構自分でも雰囲気変わったと思うし」



そういうと男は手の平を私に見せてきた



「これを見れば思い出さないか?」



じーっとこの男の手の平を見ると、人差し指の付け根に深く残った傷痕があった



「……夏下さん?」


「おー!良かった!覚えててくれたか!」



彼は私の父親の兄の娘……つまり親戚の 夏下(なつか) (つばさ)だった



「5年ぶりぐらいか?久しぶりだなー!」


「お久しぶりです。確か……もう大学生でしたか?」


「そうそう!お前の3つ上だからなー」



私はナンパしてきたのが夏下さんだと分かり、警戒する事をやめた



「てか、気付きませんよ普通……」


「ん?まあそうだよな!悪い悪い……お前は知らなかったんだな」


「本当ですよ……」



「まさか()()()()()()()()思わないですよ……」




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