「付き合ってるんだから問題ないのでは?」
「あっつぅ……」
5月も下旬に入り、日照りが一層強くなってきた。熱気がすごく、セミの声もポツポツ聴こえてくる
「……ねぇ、もうやめにしない?」
「ダメ‼︎琴乃に何か変なことしようとしたら誰が止めるの⁉︎」
私と卯月は今、琴乃と八幡の……デートを追跡している。
「変なことって……何よ?」
「○○したり△△したり□□したりするかもしれないの!」
「いや記号で言われても伝わらないんだけど……」
「え?琴乃なら分かってくれるんだけどなぁ」
「あれ?もしかして琴乃ちゃんも変人枠なの?」
帽子を被り、サングラス、マスクをつけて2人の尾行をしている。分かっている。どうみても怪しい人達に見えることは重々承知している
「そもそもあの2人、付き合ってるんだから問題ないのでは?」
「認めませーん。私は琴乃の相手が八幡なんて認めませーん」
「ただの友達に認めてもらう必要ないでしょ……」
「友達じゃない‼︎大親友‼︎」
「あーはいはい」
最近卯月が私の言い分を軽く受け流す節がある。……ここら辺で一度卯月を締めておく必要があるかも知れない
「それにしてもどこに向かってるんだろうね。ずっと歩いてるけど……」
2人は集まってから約1時間。どこかの店に入るわけでもなくただずっと街をぶらぶらと歩いていた
「……あ、お店に入るみたいだよ?」
「あそこは……文房具屋?」
ポツリと立った文房具店に2人は入っていった
「……さすがに入ったらバレるね」
店は昔ながらの雰囲気で、お店自体がかなり小さい。店に入ればおそらくバレるだろう。ましてや不審者に見える私達。騒ぎになってしまうかもしれない
「……待機しますか」
「じゃあせめて影のあるところにしよ……」
私達は店の入り口が見える影のある場所に移動した
「喉渇いた……飲み物買ってくるね。何か飲みたいものある?」
「炭酸系がいいなぁ」
「りょーかい」
卯月はポケットから財布を取り出し、自販機に向かって走っていった
「ふぅ……ってやばっ⁉︎」
2人はもう店から出てきてしまった。足早に次の目的地に向かうようだ
「ヤバイヤバイ‼︎卯月!早く戻ってきて!」
そんな祈りも虚しく、2人の姿は見えなくなってしまった……
「お待たせー。ってあれ?どうしたのそんな今にも灰になりそうな雰囲気出して」
「……2人とももうどっか行っちゃったよ」
「あ、え?本当に?3分も経ってないよね?というかわざわざ待ってくれたんだ」
「さすがに卯月を置いてくわけにはいかないでしょ?」
卯月は私の言葉を聞いて表情が固まった
「……もしかして熱中症?」
「……なんで?」
「由比羽が琴乃より私を優先するとか絶対何かしらの身体に問題が起こってるはずだもん!」
「……本当だ。置いてけば良かったんだ」
「納得するな‼︎」
向かった方向は分かるものの闇雲に探して見つかるわけもない。加えてこの暑さ……
「仕方ない……今日はもう諦めて帰ろうか……」
「琴乃ちゃん探さないの?」
「多分見つからないだろうし、仕方ないよ」
「じゃあさじゃあさ!私とデートしようよ!」
私の顔が歪んでいく
「そんな露骨に嫌そうな顔しなくてもいいじゃん……」
「……はぁ。まあいいよ。代わりに全部奢りね」
「むぅ……仕方ないなぁ」
あっさりオッケーを出す卯月。冗談のつもりだったのだが……以前の情報提供代の1000円といい、さっきのジュース代といい、卯月はもしかしてお金持ちなのか?
「早速だけどちょっと行きたい所あるから行っていい?」
「……奢ってくれるならなんでもいいよ」
「良し!じゃあ早速レッツゴー‼︎」
卯月は琴乃達の向かった方向と反対方向へ向けて歩き始めた。私も卯月を見失わないようにと、歩き始めるのだった