表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/142

「私は用済みになったりしない?」



「はぁ……暇だ……」



早いことに夏休みも明け、妊娠発覚から7ヶ月以上がが経っていた。学校は特別休み期間に入った為、通えないし、日中は1人でいなければいけない。やることが無くて暇なのだ



掃除や洗濯すれば良いと思われるかもしれないけど、毎日、夜のうちに3人が終わらせるから、洗濯する服もなければ、掃除する埃もない



買い物は帰りに3人が買ってきてくれるから、冷蔵庫に空きはない。通販を利用しないから、受取人になることもない



お昼ご飯も作り置きしてくれる。本当に家でやることは何もない。だから最近は、実家に帰ってることが多い



家にいることはほぼほぼない。あと行くとすれば、加蓮のところぐらいだ



1人の時間が好きだった私は、いつの間にか1人でいることが嫌になっていたようで、実家に帰っても自室に篭らず、リビングで母親と過ごす時間がほとんどだ



「そろそろ帰ってくる頃だから帰るね」


「はーい。また明日も来るんでしょ?」


「うん……ごめん」


「謝らなくていいわよ。親には頼れる時に頼っておきなさい」


「……ありがとう」



♢ ♢ ♢



家に着くと、まだ誰も帰ってきていなかった。太一はバイトで恐らく2人は買い物だろう



「……早く帰ってこないかな」



音もなくただ静かな家。1人でいると私は不安になる



日に日に大きくなるお腹。子供が順調に育ってるって事だから良いはずなんだけど、それが私を不安にさせる



私はちゃんとこの子を幸せに出来るのか?産む時の痛みに私は耐えられるの?



子供が産まれたら……私は用済みにはなったりしない?



色んな不安が押し寄せてくる。ストレスは母体に悪いことは知ってるけど、ナイーブになってしまう



1人の時間が多くなると、なぜかすべて悪い方向に考えてしまう



……早く帰ってこないかな



♢ ♢ ♢



私が帰宅して5分後。玄関の鍵がガチャっと開く音が聞こえた



「ただいまー」



帰ってきたのは琴乃や伊津ではなく、なんと太一だった



「おかえり……珍しいね」


「実はバイト用の荷物をいつも持っていってるんだけど、忘れちゃってさ。だから取りに帰って……」



太一は私の方を見て、言葉を途切らせた



「どうしたの?私の方見て固まって」


「……なんで泣いてるんだ?」


「え……?」



目元を拭ってみると、確かに涙が流れていた。泣いてたつもりはなかったが、悪い方向へと考えてしまっていたことで、出ていたようだ



「なんでもないから!早く行かないと間に合わないんじゃない?」


「……」



太一はポケットから携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた



「もしもしお疲れ様です。八幡です」



敬語で話す太一。相手は友達というわけではないようだ



「急で申し訳ありませんが、今日のバイトを休ませて頂いても良いですか?」



太一の電話の相手は、バイト先の店長だった



「嫁が泣いてまして……はい。1人になってしまうので、一緒にいてあげたくて……」


「ちょっ!そんなことしなくても平気だから!」


「俺が平気じゃないんだよ‼︎」


「っ……‼︎」


「あ、すいません‼︎怒鳴り声あげちゃって!……はい。ありがとうございます!今日休んだ分、どこか振り替えで入れておいて下さい。……はい。では失礼します」



太一は電話を切り、ポケットにしまった



「さて、話を聞こうか?」


「……太一ってたまに男らしいよね」


「男なんだが?」


「うん……知ってる」



結婚してから、太一のことが頼りになりすぎて困る



結婚してから、太一のことが好きすぎて困る



結婚してから、私は琴乃より太一のことが好きな自信がある



それぐらい私は今、太一に惚れている



私は泣いてしまった理由を全てを打ち明けた



「そうか……」


「ごめん……これだけサポートしてもらっておいてこんなこと言うのおかしいんだけどさ」


「いや、おかしくなんかないさ。不安になるのは仕方ない。経験したことなんてないんだからさ」



これだけ手厚いサポートを受けてなお、こんなことを言い出す私に怒る言葉もなく、優しい言葉だけをくれる太一



と、ここで突如玄関とリビングの間にある扉が開いた



「「由比羽ー‼︎」」



いつの間にか帰ってきていた2人が、涙を流しながら私の足に抱きついてきた



「わぁ‼︎ど、どうしたの2人して⁉︎」


「不安にさせてごめん〜‼︎」


「私達のサポートが不届きだったばかりに〜‼︎」



私の足に2人の涙が付着する



「だぁー‼︎冷たいから離れて‼︎……2人とも悪くない。私がワガママすぎるのが原因なの」



2人は私の為に尽くしてくれてる。悪いのは私だ



「由比羽!私達に任せて欲しい!」


「な、何を?」


「由比羽の気持ちを少しでも楽にしてあげる!」


「ど、どうやって?」


「それは2週間後のお楽しみね!」


「あ、太一と由比羽は来週の日曜日、空けておくように」


「「は、はぁ……」」



また2人で何か企てていた。本当に……出会った当初の2人に教えてあげたいぐらいだ



1年後。2人は凄く仲良くなってるってね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ