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「隈」


新学期に入り、2週間が経過していた。入学式も無事に終え、クラスの顔ぶれが変わったことにもだいぶ慣れてきた時期だ



私と太一。琴乃と伊津は同じクラスになった。というより、結婚している者同士は、進級時に一緒のクラスにするかしないかを決めることが出来る



奏斗も加蓮と同じクラスになった。ただ、私達とは違うクラスだ



ちなみに卯月は私と同じクラスになった。しかも担任は、卯月が結婚を約束している綿田先生だ



卯月は大変喜んでいるが、綿田先生はすごい戸惑った様子を見せていたのが印象的だった



まあ卯月が羽目を外して関係がバレる可能性を考えて、困ってるんだろうけどね



「加隈さーん!いい加減僕と付き合おうよ‼︎」


「だから嫌‼︎」



そして新学期に入ってから、私と穂乃美は新たな問題を抱えることになった



この男 田本(たもと) 爽太(そうた)によって



この名前に入っている爽を全く感じないポッチャリした体型。前髪を横に流して綺麗に整えられた髪。挙句イケメンとは称しにくいそのお顔。あまりこんなことは言わない方が良いのだろうが、もし穂乃美が付き合うことになれば、美女と野獣という言葉がしっくりくるだろう



2週間が経過しても尚、この男は穂乃美を口説くことをやめない。周りの男達も、穂乃美がこの男から言い寄られていることは分かっているはずだが、誰も止めに入らない



その理由は、田本の家は超お金持ちだからだ



田本財閥という後ろ盾を持ち、その権利を振り回す。田本は男達に「邪魔をすれば、お前達の家族全員を路頭に迷わせることだって容易い」と言い放ったようだ



この一言のせいで、男達は誰も邪魔しない。いや、出来なくなってしまったのだ



「またアンタは!穂乃美から離れて‼︎」



私はまたも穂乃美が口説かれている所に出くわし、2人の間に入った



「おおっ!由比羽さんも今日も麗しいですね」


「そんな日によって顔なんてすぐに変わるわけないだろ」



先生も黙認してる。「学生同士だし、それぐらい問題ないだろう」と言われてしまった。多分だが、この男は先生にまで根回ししてる



先生に頼れない今、奏斗や加蓮と協力してこの男から穂乃美を離さないといけない



「僕に会いに?」


「んな訳あるか。穂乃美は私が貰っていくから」


「それは困りますねー。()()()さんは僕と話してるんです」


「……お前は下の名前で呼ぶな」


「名前は呼ばれる為に存在するのです。強制される理由はないはずですが」



……この男は苦手だ。全てが苦手。容姿もそうだが、私が言う皮肉をサラッとかわしてくる



「とにかく穂乃美に用があるの。もう穂乃美に話しかけないで」



私はあの日と同様、穂乃美の腕を引いて、その場から去った



「あの強気な感じ……いいね。やっぱり2人とも俺のモノにする……必ずな」



♢ ♢ ♢



「ごめん!もっと早く助けられたら良かったんだけど……」


「いいんです。本当は私1人で解決出来ればそれが1番良いんですから」



私は穂乃美の一学年上。どうしても少し対応が遅れてしまう。穂乃美の同級生に頼れればそれが1番なのだろうけど、あの男の脅しが、その子に向いてしまってはいけない



加蓮に相談したら「少し待ってほしい。必ず解決する」と言っていたけど……あの男がいつ穂乃美に対してアクションを起こすか分からない



加蓮が動けば必ずこの事態は終結する。それまでは私が穂乃美を守らなければ



奏斗には、私が手を出さないように言ってある。幸い、あの男は私が邪魔したところで何もしてこないが、奏斗相手だと何をしだすか分からない。変に相手の気分を逆撫でするようなことはしない



「……穂乃美。隈出来てるけど大丈夫?」



穂乃美の目の下にはくっきりと隈が出来ていた



「最近寝れてなくて……いつもは学校でも寝てるんだけど、あの人が来てから寝てる間に何かされそうで眠れなくて……その分家でしっかり寝ようとしてるんだけど、寝ること自体不安になっちゃって……」



ただでさえよく寝る穂乃美が家でも寝てないとなると相当身体にガタがきているはずだ



秘密の倉庫でも危険で眠れないのだろう。家で寝れないのに、学校内で眠りになんてつけるはずもない



事態は急を要するみたいだ


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