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卒業式



春。桜の花びらが舞う学校。天気は雲一つない快晴とまではいかないが、良い天気だ



今日は聖頼高校の卒業式だ



元々、先輩の知り合いは日伊乃以外いないので、私にとっては卒業を惜しむ人は少ない。ただ、学校の最上級生になる。それだけの話だ



「そういえば日伊乃は卒業したら何するの?」



式が執り行われている最中、私は隣に座っていた奏斗に、日伊乃の話を聞いた



「大学に行くってさ。卒業したら親の跡継ぎとして働くらしい」


「ふーん……結構大きい会社だったよね?」


「ああ。大抵の人は会社名を聞いたことあるぐらいにはな」


「日伊乃は跡継ぎになって、加蓮も多分、自分の親の会社で働くんだよね?」


「まあ社長にはならないと思うけど、それなりに上の役職を与えられるらしいけど」


「……奏斗のお給料じゃ物足りないんじゃない?」


「大学入ってちゃんと勉強して、加蓮のお父さんが認めてくれたら、俺が跡継ぎになることになってる」


「え……そんな壮大なことになってるの?」



有名会社の社長に超有名会社の重役と社長……



「将来安泰ね。安泰どころか過保護すぎ」


「過保護の使い方間違ってるだろうけど、しっくりくるな。その言葉」



きっと今の庶民感覚なんてすぐ忘れてしまうだろう



「穂乃美はどうするの?」


と、耳元に手を当てて奏斗にだけ聞こえる大きさで言った。奏斗と穂乃美の関係は周りには内緒。聞こえてしまうとマズイのだ



「多分専業主婦になるんじゃないか?明確に決めてないって言ってたけど」


「専業主婦か……3人が稼いできてくれるから、働きに出る必要がないからかな?」


「まあそれもあるだろうし、寝たいんだろうね。やるとしても自宅で出来る範疇の仕事にするって言ってたし」



3人の稼ぎで十分なはず。無理に仕事に出る必要もないだろう



「あ……次、日伊乃の番だな」



演台に上がる日伊乃



「卒業証書 比呂 日伊乃。以下同文。おめでとう」



しっかりと両手で受け取る日伊乃。いつもの茶目っけのある雰囲気はなく、真面目に取り組んでいた



「比呂 日伊乃って語呂悪いね」


「うっせ。こればかりは仕方ないだろ」



確かに。どうすることも出来ない問題だった



日伊乃が卒業証書を受け取り、演台から降りた



ふと、加蓮と穂乃美はどんな反応をしているのか気になったので、見てみると



「……加蓮は普通に笑顔で見てるな」



家に帰れば居るからか、悲しそうな様子はない



「穂乃美は……意外。起きてるんだ



背もたれに腰をつけて、背筋をピンと伸ばし、綺麗な姿勢を維持していた



「ん?ああ。あれは寝てるぞ。爆睡だ」


「え⁉︎あれ寝てるの⁉︎」



目が完全に開いている。誰が見ても起きているようにしか見えない



「まあ見てな。もうすぐ分かるから」



奏斗に言われ、じっと穂乃美の方を見続ける。全く体勢を崩すことなく、微動だにしない



「在校生、起立!」



と、マイク越しに指示が入った。在校生は全員立ち上がったが、穂乃美だけはずっと座ったままだ



「……本当だ。寝てる」


「な?俺も初めて会った時さ、起きてるもんだと思って話しかけてたら、加蓮に「なんで寝てる時に挨拶するの?」って言われたんだよなぁ」



初見であれを寝てる判定出来る人はいない。絶対



「あれ?でも前に私の膝上に乗せてた時は、寝転ばないと寝れないって言ってなかった?」


「椅子の上でも寝れるようにって特訓してた。3日ぐらいでマスターしてたぞ」


「睡眠の特訓って意味わからないね……」



寝方をマスターも相当意味が分からないが……



♢ ♢ ♢



卒業式は滞りなく終了。生徒達が続々と帰っていく中、日伊乃は帰らずに、屋上で空を見上げていた



「……ありゃりゃ。よく居る場所が分かったね?」


「当たり前だ。俺はお前の夫だからな」


「その割にさっき下で私のこと走って探し回ってたみたいだけど?」


「……見てたならからかうなよ」



実は探し始めて既に15分は経過していた



「卒業おめでとう」


「うん……ありがとう!」



泣いてる様子はない。ただ余韻に浸りたかっただけのようだ



「……何食べたい?」


「うーん……そうだなぁ……」



少し悩む様子を見せた後、満面の笑みをみせた



「由比羽の家族も家に招いて、出前頼みまくろう‼︎」



8人でのちょっとしたパーティ。豪遊だけど仕方ない



「ああ!好き放題頼め頼め‼︎」


「いえーい!」



今日は悲しい日でもあり、嬉しい日でもあるのだから

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