「多重婚について」
『続いては、多重婚が終わった訳について、専門家の前田さんを交えてお話ししていこうと思います。前田さん。よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
今は平日の昼。他校の生徒達は普通に登校している中、聖頼高校は創立記念日。学校、部活全体が休みで私達は家でワイドショーを見ながらお昼ご飯を食べていた
『それでは早速なんですが、3年近く行われた多重婚についてですが、本来の目的は少子化対策として挙げられたはずでしたが、その辺に効果はあったのでしょうか?』
『多少なりともあったと思います。ただ、終了した理由として、資金の不足が挙げられていましたが、恐らくはその資金に見合った成果を得られなかったのでしょうね』
『なるほど……』
多重婚を終えて約1ヶ月が過ぎたが、ワイドショーの話題は大体この問題と、学生婚の話ばかりだ
「まあウチの学校も片手で数えられる程度しかいなかったもんな」
「うん。その内の1人って琴乃の知り合いだったよね?」
「そうだけど、その子だけでもう1人の方は作らなかったみたいだよ」
「ふーん……」
『次の質問なのですが、なぜ10年近くの政策として打ち出したはずの多重婚を僅か3年しかもたなかったのでしょう?』
『資金不足と言いましたが、ちゃんと言えば資金はまだあると思います。ただ先程も言いました通り、このまま続けても成果が見合わない。マイナスになるからと早めに切り上げたのでしょう』
『多重婚よりも、学生婚の方がお金がかかるのではないですか?』
『それは間違いありません。学生婚用のマンションを建てるだけでも膨大な資金が必要です。全てが新規で建てられた物ではありませんが、その上に家賃を8割負担、出産などの際にかかる費用も8割負担。バイトでしか稼げないから仕方がないとは思いますが、それでもその負担は大きい。資金不足に困っているなら、私はなぜ学生婚の方をやめなかったのかと疑問を抱きましたね』
確かにごもっともな意見だ
『なるほど……ここで少し話が変わるというより、論議を少しずらすのですが、多重婚の解除が出来るとのことですが、これについてはどう思われますか?」
『まあ現状維持って家の方が多いのではないでしょうか?今後減っていく一方なのは間違いないですが、それでも価値観の違いなどの理由でしょうし、「解除されたから離婚しようか」となる家族はほぼほぼいないと考えていいでしょう』
私のような、親友を結婚させる為のもう1人として結婚した者や、日伊乃のようなパターンぐらいレアケースでないと、「解除されたから離婚」という理由を引っ提げる人はいないだろう
『なるほど。では最後に一つお聞きします。多重婚制度は本当に必要だったのでしょうか?』
『必要ありません。ただし、多重婚制度を否定したわけではなく、少子化対策として実施したはずの制度が、全くと言っていいほど機能していなかった。少子化対策としては必要ありません!』
堂々と宣言した
「確かにグラフだけ見ると増えてないもんなぁ」
「私たちもそうだけど、いくら多少の支援があっても、まだ抵抗あるんだろうね」
子供を作るという話題。私達の中で出た事がないわけじゃない。特に伊津なんかはノリノリで作ろうと太一を誘うことは結構あった
だが、私と琴乃は計画的に考えて作りたいと話していて、まだ学生。学校生活をまだ楽しみたい気持ち。まだ子供の私達が子供をちゃんと育てられるのかという心配。自分の子供が欲しい気持ち。丁度三分の一ずつ私と琴乃の中ではせめぎ合っていた
と、ここで伊津が机をバンッと叩いた
「多重婚が終わったということは、近いうちに補償制度も終わるかもしれない……補償がある間に1人は作ってもいいと思うの!」
たしかに無い話ではない。金銭的問題でやめたなら、間違いなくこの制度もいずれは終わる。なんなら学生婚制度もいつかは無くなるのだろう。ならば損する前に……と伊津は考えての発言だった
……多分たまたま都合良い話があったから提案しただけだろうけど
「一理なくは無いけど……でもなぁ……」
「1人だけ!1人なら大丈夫だって!」
目がキラキラしている
「……勝負で決めようよ」
「勝負?」
「誰が子供を産むのか決めようってこと」
あれ?琴乃までそっち側になるの?
「いいねそれ!じゃあ勝負の内容は……」
「あれー?俺の意見は聞かないの?」
「聞きません!」
「俺が当事者みたいなもんなのにか⁉︎」
「3人だから平等になるものがいいよね……」
「え?私も参加するの?」
なぜか強制的に参加が確定しているようだった
「え?しないの?しないならいいけど。まあその場合、由比羽が1番太一を愛してないって証明になるけど良い?」
……煽られてる。それは分かってるんだけど……
「参加してやろうじゃん!私が3つ子産んで、2人の今後の出番無くしてやろうじゃん!」
乗らずにはいられなかった