表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/142

「ここはお前の家だ」



「加蓮……本当に帰ってくるかな……」



穂乃美が不安そうな表情を浮かべていた。加蓮の父親には、仕事が終わったのち、加蓮にこっちに来るよう伝えてくれると約束してもらえた。ただ、口約束に過ぎないので、本当に守ってくれるかどうかは別問題だ



「穂乃美ったら心配性ね。大丈夫よ。あの人は約束事は守る人だわ」



だが、7時を過ぎても一向に帰ってこない。社長だから帰るのが遅くなっているせいなのか、はたまた本当に約束を破ったのか……



「……俺。ちょっと加蓮探してくるわ!」


「奏斗⁉︎」



俺は冬空の中、上着も羽織ることなく、外へ出るため玄関へと走った



「うわっ‼︎」



玄関を開けると、そこには加蓮が玄関の前で壁にもたれかかるように座り込んでいた



「……何してんだ?」


「え、えっと……久しぶりでどう入ろうかって悩んでて……」



頬を掻き、小っ恥ずかしいそうにする加蓮



「……そんなの悩むなよ。ここはお前の家だ」


「私の……家……帰る場所……」



加蓮はお尻をパッパッとはたき、家の中へと入った



「加蓮‼︎」


「わわっ‼︎」



穂乃美が加蓮に飛びつくように抱きついた



「穂乃美ったら危なうわっ‼︎」



続いて日伊乃も加蓮に飛びかかった



「加蓮ー‼︎おかえりー‼︎」


「……ええ。ただいまですわ」



♢ ♢ ♢



約2週間近く会わなかった日々。加蓮は監禁されてた時の話や、脱獄を試みたりしたけど、階段を降りることさえ叶わなかったことなど、色々と話してくれた



こちらも加蓮がいなかった日々の話をした。家に加蓮を連れ出す作戦を立てては警備員にあしらわれ、近づけなかったこと。会社に乗り込んで、加蓮の父親を説得したこと。由比羽がその為に協力してくれたことなどなど



色々と濃い2週間だった。そして……俺の気持ちが確かめられた時間だった



「さて、私と穂乃美はちょっと近くのスーパーまで買い出しに行ってくるわ」



日伊乃と穂乃美は立ち上がり、寒さ対策として厚手のコートを羽織った



「それなら私もーー」


「加蓮と奏斗は待ってて。加蓮は戻ってきたばっかりだし、奏斗は今日はよく頑張ってくれたからね」



親指をグッと立てる日伊乃。……ありがたいことに、わざわざ2人きりになる時間を作ってくれたらしい



「それじゃあ行ってきます」


「行ってきます」



2人は財布だけ持って、そのまま外へと出て行った



「………」


「………」



さっきのワイワイした空気が一転。部屋が一気に静かになった。久しぶりすぎて気まずい……たぶん加蓮も同じだろう


「……あのさ」



気まずそうに加蓮が会話の口火を切った



「ありがとう。私を連れ戻してくれて」


「……当たり前だろ?俺の家族なんだから」


「そう……だね。うん。()であっても家族だもんね」



どうやら加蓮の父親は、何も言わずにいてくれたようだ



「加蓮。そのことで少し俺から話したいことがある」



俺はあぐらの体勢から正座をし、加蓮の方へ向いた



「……うん。私からも話したいことがあったの。だから、私から先に言っていい?」


「……分かった」



加蓮も正座し、俺の方へ身体を向けた



そして……頭を下げた



「私と……離婚して下さい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ