「私のケジメ」
「……今日も寒いね」
コート、手袋、マフラー総動員で身体を温めていても、まだ少し肌寒さを感じる
「って、東夜の方が寒いか。ずっと野ざらしだもんね」
今日もまた、東夜のお墓参りにやってきた。理由は2つある
1つ目は、今日が東夜の命日だから
東夜が死んで今日で4年が経った。だからお見舞いにやってきたのだ
そして……
「……さて、覚悟を決めますか」
今日は東夜の力は借りない。……借りるわけにはいかない
私のもう一つの理由……それは……
「……ご無沙汰してます。東夜のお母様、お父様。美登」
逃げ続ける私と……サヨナラを言うために
私は、太一達と一生家族で居続ける覚悟が出来た。だからこそ、ケジメをつけておきたかった
「……由比羽っ!」
美登は下唇を噛んでいた。私に東夜の母親の前に姿を現すなと警告したのに私は今、その人の前に……東夜のお墓を背に立っているのだから
「なんでいるの‼︎」
「東夜のお墓参りに来た。それだけだよ」
東夜の母は口を開かない。表情も一切変えない。ただずっとこちらを見ていた
「私言ったよね⁉︎もう絶対に来ないでって‼︎私たちにも東夜にも迷惑なだけだからって!」
「うん……でもね。これからもここには来るよ。ただ……もうコソコソと来ることはしたくない。だから今日、ここで待たせてもらいました」
許してもらいたいわけじゃない。もういいと突き放されたいわけじゃない。どんな返答がきても私に文句を言う権利なんてない
「私の強欲で身勝手な行動で、皆様の大事な人を失わせました……許されるだなんて思ってません。ただ今までちゃんとした謝罪を出来ていなかったので、この場で言わせてください」
私は3人に対して、頭を下げた
「本当に……本当にごめんなさい……」
♢ ♢ ♢
……私の謝罪に対しての言葉は中々返ってこない。罵倒するための言葉を考えているのだろうか?
「……だからっ!許さないって言ってーー」
「美登さん。少し静かにしてほしいわ」
怒鳴りつける美登を制止したのは、東夜の母だった
頭を下げ続ける私の方へ歩みを進める東夜の母。そして……
バチンッ
と、頭を一発平手で叩かれた
「はい。これでもう許す」
あまりのあっさり加減に私どころか、美登まで驚きを隠せないでいた
「な、なんで許すんですか!由比羽のせいであなたの息子は死んじゃったんですよ⁉︎それなのにそんなにあっさりと……」
「いいのよ。それより、私が許したんだから、美登さんも由比羽さんのこと許してあげなさい」
……違う。私は許されるために来たんじゃない
「お、お母様!美登の言う通り、私を許すなんておかしいです!」
バチンッ
私が喋ったことに気に食わないのか、東夜の母はもう一度私の頭を叩いた
「……あなたが毎年、東夜の墓参りに来てたことはお父さんから聞いてるわ」
後ろでニコニコしている東夜の父。まさか私の話題を出していたとは……
「毎年、東夜の命日の日の前日にお参りしに来て、お墓の周りを綺麗にしてくれていたんでしょう?」
「……バレてたんですか」
「私達が綺麗にしていく場所がないんですもの。雑草も抜かれてるし、花も取り替えられてる。お墓も砂埃とか全部落とされていて綺麗になってる。バレない方がおかしいわ」
コソコソとしていたことが裏目に出てしまっていたらしい
「でも、お墓参りに来てただけです。それ以外何もしてませんし……」
「……琴乃さん。私の家に来てましたよ」
「……琴乃が?」
そんな事実初めて知った
「いつですか?」
「去年の12月辺りよ」
去年の12月……私が東夜のお墓参りに行って、私が琴乃の元で泣いた日かな?
「「東夜が死んでからずっと、ずーっと私のせいだ。私が馬鹿なことをしなければ東夜は死ななくて済んだ。今も変わらず、ずっと自分を責め続けている」。そう聞いたわ」
琴乃……わざわざそんなことを伝えに行ってたなんて
「……おばさんからの金言よ。ちゃんと心して聞きなさい」
「若者が、いつまでも過去に引きずられてるんじゃないよ‼︎」