「足りないなら、暴露します」
冬休みが明け、今年初の学校。冷たい風が吹く中、俺と琴乃は学校に向かっていた
伊津と由比羽はいない。2人とも実家からの登校だ
「2人とも……いるかな?」
「……さすがに学校休むことはしないだろ」
琴乃には、もう事情を説明してある。伊津から年末に行ったファミレスで離婚届を渡された事。由比羽から、実家から帰ると離婚届が家に置かれていた事
2人とも連絡をしたが繋がらなかった。……出なかっただけだろうけどな
♢ ♢ ♢
学校に着くと、まだ由比羽も伊津も姿が見えなかった。由比羽は大抵ギリギリに来るからいないとは思っていたが、まさか伊津もいないとは……
「まだ来てないみたいだね」
「そうだな……」
♢ ♢ ♢
「おーし。全員席につけー。久しぶりで友達と話したい気持ちも分かるが、あとで話せー」
朝礼が始まった。だが、伊津と由比羽はまだ来ていない
「……2人休んでるな。おい八幡。お前の嫁さん2人はどうした?休みの連絡は来てないが」
「ええっと……」
と、返答に困っていると、教室の扉が開いた
「すいませーん。遅れましたー」
由比羽と伊津が遅れて教室に入ってきた
「新年早々遅刻だぞ」
「仕方ないじゃん。車混雑してたんだから」
どうやら伊津と由比羽は伊津家の執事の車で来たようだ
「……まあいい。早く席につけ」
「うーい」
伊津と由比羽は各々の席についた
……こちらを一度も見る事はなかった
♢ ♢ ♢
全校集会も終わり、今日はもう授業もなく、放課後を迎える。声をかけるタイミングがなかったが、放課後ならば、いくらでもチャンスはある
「……太一」
「ん?どうした琴乃?」
「2人とももういなくなってるけど?」
「はぁ⁉︎」
今、先生が終わりの挨拶したところだぞ⁉︎10秒もしない内に、2人は教室から姿を消していた
「どうするの?」
「……また明日にするか」
「……私はあんまり先延ばししちゃいけないと思う」
琴乃が不安げな表情をしている。2人から離婚したいと言われて、辛いのは俺だけじゃない。琴乃も一緒だ
「……分かった。なら絶対に呼び戻せる方法を取るわ」
♢ ♢ ♢
「なんとか今日一日は乗り切れた……」
「ええ。でもこれから毎日そう出来るわけではありませんわ」
「……うん。でももうちょっとだけ、心の整理がついてからにしたくてさ」
「……分かりましたわ。協力いたします」
「ありがとね」
伊津のお迎えの車はもう校舎内に止まっていた
ピーンポーン
「2年の八幡 伊津さん。八幡 伊津さん。至急、職員室横の会議室までお越し下さい」
と、伊津が校内放送で呼び出しを食らった
「……太一さんからの呼び出しかもしれませんね」
「でも、それだと私が呼ばれない理由がない……」
「確かに……」
「本当に先生の呼び出しだったらまずいから、行ってきて。私は車の近くで待ってるから」
「分かりましたわ。あ……カバンだけ持っててもらっても?」
「ん。預かっておくよ」
「なるべくすぐに戻りますわね」
伊津は会議室の方まで、駆け足で向かった
♢ ♢ ♢
会議室の部屋に明かりが付いている。そして、うっすら人影があるのも見えた
コンコン……
ドアを2回叩き、中へ入った
「……よ。1週間?ぶりぐらい?」
「……太一さん」
私達の予想は外れ、そこにいたのは私の夫だった
「……逃げないんだ」
「ええ。どっちにしても、いずれ話さないといけませんから。それより、由比羽さんは呼び出さないんですか?」
「2人呼び出したら疑われると思ってな」
「……2人呼び出されてたら、無視して帰ってました」
「なら作戦は上手くいったってことだな。それに……由比羽も来るよ」
♢ ♢ ♢
「……遅いなぁ」
よほど話が混み合ってるのか、中々伊津が帰ってこない
「あんまりのんびりしすぎちゃうと、車があるってバレちゃうよ……」
「もうバレてますから心配いりません」
この声……見つかっちゃったか
「由比羽ちゃん……いや……由比羽‼︎私と一緒に来てもらいますよ‼︎」
「……嫌だって言ったら?」
「由比羽の恥ずかしい話を校内放送で喋ります」
「……嘘でしょ?」
琴乃の脅し大胆すぎない?
「これで足りないなら、由比羽のバストサイズも暴露します」
「えっ……」
「それでも足りないなら、由比羽のお気に入りの下着の色も暴露します」
「ちょ、ちょっと待っーー」
「それでももし足りないようなら、由比羽の処○喪○した時の事も暴露します」
「……分かりました。ついていきます」
「よろしい!」
あの脅しに屈さない人がいれば会ってみたい……