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「夜須加依存症」



「何気に2年生になってから喋るのは初めてね」


「姉妹は話しかけて欲しくないだろ?男嫌いなんだし」



比呂は私の男嫌いに理解を示していた



「まあそうだけど。でも比呂ならまだいいよ。私はあんたのこと()()()()()()()



比呂がなぜ男に見えないかと言うと、容姿が幼く、可愛らしいから。正直、女装すれば女の子と間違われてもおかしくない



「いつまでこんな子供みたいな姿なんだろうね。全然成長しないんだが……」


「遺伝でしょ?比呂は完全にお母さん似ね」



比呂とは昔からの幼馴染みで親同士も仲が良い。それもあって私は比呂に嫌悪感を抱くことはないのかもしれない



「早く成長したいぜ……あ、そういえばさっき夜須加と話したよ」



琴乃は出席番号が最後の為、順番的に次は一番最初の私になる。琴乃→私→卯月………という感じで男達は順々に回っている



「何話したの?」


「最近太一と付き合い始めただろ?だから上手くいってるのか聞いたぐらいだな」


「……なんて言ってたの?」


「顔を赤くして、上手くいってるって言ってたよ」



私はその言葉を聞いて、机に頭をガンッと打ちつけた



「……相変わらず夜須加のことになると自分の身体にダメージを入れるんだな」



昔からの癖みたいなもので、私は琴乃が男と何かあるごとに

頭を打ちつけたり、頬をつねる癖があった



男と仲良く話してる時、男と触れた時などなど。琴乃を汚された恨み辛みを、自身の身体に押さえ込む為に行なっている



「いい加減夜須加依存症を治さないとやばいぞ?」



夜須加依存症。中学の頃はみんなから夜須加依存症末期患者と呼ばれているほど、私は琴乃に依存していた



「まだマシになった方だと思うけどなぁ……」


「中学の頃よりはな。てか中学の頃が異常すぎたんだよ。授業中でも教科者忘れた訳でもないのに、机をひっつけたり、夜須加が先生に当てられて黒板に答えを書くときに、背中にひっついて一緒に前に出たり、席替えの際に、どこから仕入れたのか分からない先生の弱みを皆んなにバラすって脅して、夜須加と隣にするように仕向けさせたり……」


「あ、あの頃はやりすぎたと思ってるよ……」



あまりに琴乃が好きすぎてとった行動とはいえ、今思えば完全に黒歴史レベルのものだった。しかも比呂が挙げたのはまだ序の口。もっと酷いものも何個か残っている



思い出すのも嫌になるぐらい……



「はい終了ー。次に移れー」


「あ、もう3分か。じゃあな姉妹。また後で話そうや」


「……いいけど」


「あ、あと男嫌いもほどほどにな」


「それは無理な相談だよ」


「だろうな。まああんまりキツく当たってやるなよ?」


「……善処する」



比呂は卯月の方へと移った。そして次に来たのは……



「……八幡」


「どうも。よろしく」



八幡だった。私はチラッと琴乃の方を見ると、琴乃の顔が少し嬉しそうになっていることに気がついた。さっきの3分間の間にイチャついていたのだろう



「……」


「……」



私は特に喋る理由がないので静かにしていた。のだが、八幡の方も口を開けることはなく、しばらくの間静寂が走った



「……なあ。琴乃ってさ、何が好きか分かるか?」



ようやく口を開いたかと思えば、八幡は私のことではなく、彼女のことを聞き始めた



「……なんでそんな事聞くの?」


「いや……琴乃ってもうすぐ誕生日だろ?」


「もうすぐってほどじゃないけど……」



確かに琴乃の誕生日は一ヶ月足らず程でやってくる



「姉妹は琴乃と仲が良いんだろ?琴乃がいつも楽しそうにお前の話してるよ」


「……琴乃が?」


「何かあったら由比羽ちゃん由比羽ちゃんってずっと言ってるよ」



琴乃が私のことを……やばい……頬が勝手に緩んでくる……



でも、そんなはしたない顔をこの男に見せるわけにはいかない。私は頬の緩みをなんとか抑え込んだ



「それだけ仲がいいなら何が嬉しいとか分からないか?」


「……分かるけど」


「本当か‼︎教えてくれないか?」


「ダメ。こういうのは自分で考えて渡す物だと思う」


「うっ……確かに」



それっぽい理由で断ったが、本当はそんな事は微塵も思っていない。琴乃が欲しいものを八幡がプレゼントしてしまえば、さらに好感度が上がってしまう。だからあえて自分で考えるように促し、あはよくば琴乃が気に入らないプレゼントを渡してしまうことになって、好感度が下がってしまえばいい



「分かった!自分で考えてみるよ」



意外にもすんなりと私の意見を受け入れる八幡。もっとしつこく聞いてくるかと思っていたけど……



「あ、そうだ。何か琴乃の話を聞かせてくれないか?昔話的なやつ」


「……やだ」


「え、なんで?」


「……3分ぽっちじゃ全然足りないから」



私が本気で琴乃のことを語るには1日……いや……2日は欲しい。その間ノンストップでずっと語り続けることが出来ると自負できる



「ぶっ……ふははっ!」


「な、なんで笑ってるの⁉︎」


「いや……本当に仲が良いんだなと思ってさ。……羨ましいよ」



……羨ましい?私からすれば、琴乃の彼氏彼女の関係になれた八幡の方が羨ましいけどね……



「はい終了だー。入れ替われー」


「……また今度、琴乃の話聞かせてよ」


「……機嫌が良かったらね」



多分、この先この男に琴乃との思い出を話すことはない

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