「距離を感じる」
12月18日
クリスマスが近づき、街はクリスマスカラーに染まりつつあった。クリスマスケーキのポスターやクリスマスツリー。目がチカチカするほど煌びやかな街並みだ
テストも終わり、見事赤点を回避した私こと卯月は、クリスマスの過ごし方を考えていた
先生と過ごしたい……でもおそらく先生にそれを言っても、「まだ教師と生徒の関係だから」と、断られてしまうだろう。でもどうしても一緒に過ごしたい……まだ先生と付き合えるまで1年以上待たないといけない
最近我慢の限界が来てる。私が先生に告白してから、少し先生と距離を感じるようになった。多分先生自体がそこまで乗り気ってわけじゃないから。告白した際も、「もっと同級生にいいのがいるだろうに……」と、私に考え直させるようなことを言っていた
付き合ってくれる……そう約束はしてくれたけど、私は不安だ。この一年の間に、私に嫌われようとしないか、うやむやにされないか。何をされても嫌いにならない自信はあるけど……
だからこそ、今年のクリスマスに離れた距離感を縮めたいのだ
「だから良い方法ないかな⁉︎」
「知らないよ。自分で考えな」
私は由比羽に悩みを吐いたのに、辛辣に返された
「ひどいっ‼︎私がこんなに悩んでるのに‼︎」
「そうですか」
「……あれっ?私と由比羽って初対面?」
そう感じてしまうくらい、興味を示してくれない
「……大体相談相手が間違ってる。なんで私にするの?」
「だって……結婚してるし」
「意味が分からん。そもそも私が太一と結婚した理由も知ってるでしょ?」
「そうだけど……今幸せなんでしょ?」
「……まあ」
顔を赤くする由比羽
「って!今はそんなことどうでもいいでしょ‼︎それより相談相手が悪い‼︎私じゃなくて琴乃とか加蓮にした方が良いから!」
「いや!由比羽がいいの!」
「何そのこだわり⁉︎」
私は琴乃の腕にしがみついた
「相談乗ってくれるまで離れないから‼︎」
「やーめーろ‼︎はーなーせ‼︎重いんだよお前‼︎」
「重いのは胸のせいですー‼︎」
「意地張れるほどデカくないだろ‼︎」
「由比羽よりデカいもん‼︎」
「はい戦争ー!私はお前にこのテレビゲーム『枝豆合戦!伝説の枝豆は実はサヤエンドウだった⁉︎』で勝負を挑みますー」
「長いしその内容が気になるゲームは何っ⁉︎」
私達が罵りあっていると、後ろの扉がガンッと音が鳴るほど勢いよく開けられた
「……うるさいです」
寝起きの伊津が、超不機嫌な様子だった
今私は八幡家に来ている。太一くんと琴乃は出かけており、お昼を過ぎているが、伊津は寝てたみたいだ
「ご、ごめん伊津……」
「ご、ごめんなさい……」
あまりの不機嫌オーラに、私達は素直に謝罪した
「……今何時だと思ってるんです」
「いや……もうお昼の一時だよ?」
「お休みの日の昼の一時は、平日の夜3時ぐらいなんですよ」
「それは伊津の時間感覚がおかしいからね?」
♢ ♢ ♢
由比羽が伊津の腕を引き、伊津を洗面台まで連れていった。顔を洗った伊津は、目が覚めたようで、私の話を一緒に聞いてくれることになった
「そうですか……イチャイチャしたいというわけですね」
「イチャイチャというか……距離を縮めたいというか……」
「なるほど……イチャイチャしたいというわけですね」
「いやだから……イチャイチャしたいわけじゃなくて距離を縮めたくて……」
「イチャイチャしたいというわけですね」
「……はい」
伊津の謎の圧に押し切られた
「では私にお任せ下さい」
そういうと、伊津は携帯を取り出し、誰かにメッセージを送ったようだった
「卯月さんは当日に私の指定した時間、場所で待って頂ければいいです」
「……えっ?」
「詳細は後日また連絡しますので」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
突然何もかもが決まりすぎて頭がついていかない
「な、何するつもりなの?」
「卯月さんはただ、私の指定した場所に、時間に。最大限のおめかしをしてくれば良いのです」
「だから何するつもりっーー」
「卯月さんはただ、私の指定した場所に、時間に。最大限のおめかしをしてくれば良いのです」
あ……これ話が進まないやつだ……
「……わかりました」
「分かれば良かったです!」
半ば……いや、ほとんど強引に決められてしまった私のクリスマス……
……期待してもいいのかな?