「嫌いな理由は多くある必要なんてない」
ーー私は男が嫌いだ
普段は偉そうにして女を見下す癖して、好きな子の前では仮面を被って媚びへつらう。……胸にばっかり視線を向ける
……だから私は男が嫌いだ
嫌いな理由は多くある必要なんてない。明確に嫌いな部分を言えるなら、それは嫌いと認定して良いと私は思う
でも、一番嫌いなのは……
私から親友を奪ったあの男だーー
♢ ♢ ♢
「ーーあっ!私三組だぁ‼︎」
「わ、私は……あっ……三組……」
「マジ⁉︎やったじゃん‼︎今年も一緒だよ‼︎」
「う、うん……‼︎」
桜が舞う四月。ここ〈聖頼高校〉は新学期を迎えていた
私こと、姉妹 由比羽は二年生のクラス替えという今後の学校生活を左右する一大イベント!
……私はこのイベントが嫌い。本当に大嫌い‼︎なぜなら私の親友である夜須賀 琴乃とクラスが別々になっちゃう可能性があるから!
でも大丈夫!小学生の頃からクラスはずっと一緒!今年も無事にこのイベントを乗り切れてよかったーー
「……あ、太一君も同じクラス……」
「えっ……あーうん。そうだね……」
ーーって思ってたけど……厄介な虫がついてきてしまったみたい……
♢ ♢ ♢
「ーーまあ安定だよね……」
今年も私は出席番号が女子の中で一番……私より出席番号を早い子は朝○とか相○とか青○みたいな名前の人以外存在しないのか?と疑ってしまうくらいいない……これで11年連続だ
「……で、あっちも安定に」
琴乃は私の席から一番遠い位置にいる……出席番号が最後だから
「はぁ……遠いなぁ」
クラスが一緒になっても、席は全然遠い……席替えというチャンスはそう多くは回ってこない……
毎年の憂鬱……これだから新学期は嫌いなの……
「よお!今年も一緒だな!」
「……」
「え、あれ?無視ですか?」
「……ん?もしかして私に話しかけてる?」
「そうだよ!由比羽以外いないだろ!」
……面倒くさいなぁもう
「……あんた誰よ?知らない人に名前で呼ばれるの不愉快なんだけど?」
「去年同じクラスだっただろ⁉︎」
「クラスが同じだっただけのやつに名前で呼ばれたくない。何のために苗字と名前があると思ってるの?おバカそうなあなたに教えてあげるわ。苗字はあまり親しくない人に対して呼ぶためで、名前は親しい人に呼んでもらうためにあるの。分かった?」
こんなものはただのウソ。私が嫌味っぽく言うためだけに今考えついただけの御託ね
「……相変わらず生意気なやつだな。この俺がわざわざ話かけてやってるのに」
「頼んでないし。てか、その言い方なに?自分が私より上の立場だって思って言ってるの?」
「当たり前だろ?こんなイケメンに話しかけてもらえてるんだからな」
出たよ……私の一番嫌いなタイプ……
「……相手するのも面倒いからもう永遠に話しかけないでくれていいわよ」
「……うっざ。このクソビッチが」
「はいはいそうですねー」
「……チッ」
クソビッチ……ねぇ。私に一番合わない言葉なはずだけど
金髪に染めて、髪をくくってポニーテールにして、ギャルっぽい格好をしてるから……っていう理由だけであの男が私をビッチ扱いしてることぐらい分かってる
まあでも……男になんて言われようがどうでもいいけどね