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タイムスリップして英国貴族に拾われた私はスローライフを満喫します。

作者: 野月 逢生

 大正3年


「お嬢様、そんなに身を乗り出しては危のうございます」


 私はメアリー・トンプソンお嬢様を船のヘリから引き離そうとする。

 お嬢様は5歳。母国のイギリスへ帰る船の上。


 ねえやとして雇われて2年。気に入った私をご一家は英国まで連れていくという。


 船がぐらりと揺れた。お嬢様を身を呈してかばった私は代わりに海へ落ちた。


 あはれ、コトは16で儚くなります。


「良かった。目が覚めた」

 英語だ。目の前に金髪碧眼の殿方がいる。2年英国人と過ごしたのだ。少しは解る。


「ダイジョーブ?」

 片言の日本語でしゃべる彼は、後で知ったが、なんと英国の男爵様だった。


 クルーザーで世界の海を回っていた彼は、海に漂っている私を救ってくれた。


 驚いたことに今は大正ではなく、それよりも後の時代だった。

 何でも私に起こったのはタイムスリップという現象だと言う。


「ジョン、これは何?」

「電燈だよ。電気で明かりをつけている」


「箱の中が冷たい」

「冷蔵庫だよ。電気で中を冷たくするんだ」


「板の中に人が閉じ込められているわ」

「テレビだよ。電気を使って、電波を交信している」


「凄い、なんでも電気でできるのね」


 狭い船室の中、時を超えて出会った私たちが愛し合うのに時間はかからなかった。


 波に揺れる船の上。

「シャル ウィ ダンス?」

 月明かりの下で二人でダンスを踊る。二つの影が重なる。

 そしてジョンがひざまずく。


「I love you. Wⅰll you marry me?」


 答えは「YES」しかない。

 未来に来ても私は、男女七歳にしての大正乙女。夫になる人以外に唇は許さない。


 紆余曲折がありながらも私はジョンと結婚した。そしてマナーハウスに向かう。

 馬車ではなく、自動車で。


 ジョンは嬉しそうにスローとかフォックスとかいう。田舎の領地でのんびり、狐狩りをするのね。トンプソンの旦那様も狩りが好きと言っていたなあ。


 翌朝、ジョンがベットにお茶を運んでくれる。そして、着替えを。


 素敵な白いドレス。


 彼が言う。踊ってくださいと。


 朝から?とは思ったが、愛する人には逆らえない。


 二人で舞踏室にいくと。


 ダンス、ダンス、ダンス。


 朝から晩まで。


 どうしてそんなにと、問えば、彼はダンスでチャンピオンになりたいと、私にパートナーの素質があると思ったと言う。


「さあ、次はスローフォックストロットを」

「スローライフは?狐狩りは?」

 必死に言うと彼は笑って言った。


「いやだな。今は21世紀だよ。狐狩りは禁止されている」


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