神はやけくそになった
「お、終わった……」
充血した目が気色悪い程の赤を見せつける。
椅子に全身を預けて天井を見上げた神は触手をだらんと下げて休息に入る。
正直生きた心地はしない。全力を出し切った。
このまま白く燃え尽きてもおかしくない心持である。
しかし、これで終わりではない。
ゆっくりと周囲を見回せば、うずたかく積まれたコラボキャラデータ。
正直一年やそこいらで消費できるコラボではない。
それこそ毎日入れ替わりでコラボしたとしてもダイスケが死ぬまでに一巡出来るかどうか。
「はは、コラボしてくれるのは良いけどこれは無理だろ。……あ、そうか。これなら不満は出ない。うん、全部データ突っ込んでコラボしちまえ。ランダム表示で出現させれば全てコラボしてるっていえるだろ。うん。それでも莫大な作業だからな。面倒だけど折を見て少しずつだ。あと、ピエロさんのコラボは別枠で入れといてやるか、一番乗りだったし。コラボ第3弾ってことで、あ、イベントもあるな。これ……この世界には合わないけど入れとくだけ入れとくか」
イベントの精査とコラボガチャ3弾目を世界に組み込み、さらに適当にチョイスした10個程のコラボを一緒こたのごちゃ混ぜにしてコラボ4弾としてランダム出現。これの出現期間は無期限にしておく。
コラボしまくるからな、ランダム出現状態では期限設定するより、ここに常時他のコラボガチャを組みこんでいく方が手間は少ない。
後は、マロンが残したやらかし案件と、小さなバグの群れを調べて除去していくのが一番か。
なかなか面倒な作業である。
だんだんと面倒臭くなってきた神はガチャシステムを適当に終わらせ、お知らせをダイスケへと送ると、流石に疲れた。と再び眠りに着くのであった。
ラパティと別れた僕らダイスケチームは、茶屋を見付けてゆっくりすることにしていた。
しばし店の前に置かれた長椅子に腰かけ団子を食べていると、神様からメールが届く。
なんだろうか? シークレットたちと見てみれば、第3弾コラボガチャが開始されたというメール。
いや、第2弾ついさっきやったばっかじゃん。
って、神様、度重なるメンテによるお詫びがなんか凄いんだけど、100連ガチャ出来ちゃうよ?
あれ? メールがもう一つ?
えーっとコラボ依頼が多過ぎるためランダムガチャとして常時枠を作ることにしました?
第4弾以降はこちらに随時出現することになったから。好きなだけ回してくれ。
とりあえず13弾まで入れといたよ?
コラボ多過ぎじゃね?
まぁ、変わったキャラが手に入るのは良いことだ。
とりあえず第3弾とやらを見てみるか。
コラボキャラは……あ、☆5はコラボのキャラ一人だけ確定出現か。
☆5が出現したら全てコラボの悪役令嬢セフィーリアさんが出現するようだ。
とても綺麗な人で華奢。ただし目元がキツく、平気で相手を見下してきそうな冷たい瞳だ。
実質はどうかしらないけど、第一印象はあまり好きになれないキャラだな。
まぁ、一回だけ10連やるか。
「あばら折れた うでとれた 召喚 された」
「や・ら・な・い・か?」
どっかでデートしていた男達の片割れが出たので速攻ストックに送っておく。
「おお? 召喚されちまっただか。オラァ村人Eだぁ」
「む、召喚か。私は王国守備隊に所属しているシオという。よろしく頼む」
「あ、ダイスケ殿。私オリシオです。お久しぶりです」
「あ、ダイスケ殿。私ナルシオです。お久しぶりです」
「もうかりまっかー」
「ばぁさんや、飯ぁまだかい?」
「のっぴょろんぱぱっぷー」
また別のおじいちゃんだ。そしてグーレイだかグレイだかの銀色の生物出現。二人ともストック行き確定だね。
というか、シオとオリシオとナルシオは結局別人扱いされたのか。
しかも三人同時に来てるし。
あ、☆5来た。
魔法陣が光り輝き、コラボキャラセフィーリアさんが出現している。
たなびく金髪は毛先の方だけ赤くなっている。長い髪なんだろうけど動きやすいように後頭部で纏められて編み込まれているようだ。
赤い靴は動きにくそうなハイヒール。足首には足輪といえばいいのだろうか、右足に赤いリボンが巻き付けられて蝶々結びされていた。
ワインレッドの煌びやかなドレス。まさに令嬢として相応しいドレスコードだ。
ただし、ドレスのスカート部分は短く、下着が見えそうで見えない状態だ。ミニスカートと言われてもおかしくない。
黒いカラス羽根付きの手袋をしていて、その手にはアサルトライフルが両手に1挺づつ。
あ、これ召喚しちゃダメなキャラだ。
本能的にそう思った。
だって、無言でこちらを見たセフィーリアが僕に銃口向けて来るんだもん。
出現と同時にマスター殺し。
これは、ヤバいキャラ確定です。流石悪役令嬢。
銃口に手をかけ、セフィーリアは告げる。
「ここはどこです? またあの神が別のステージに連れ去ったのでしょう? 次は誰をどれだけ殺せばいいのかしら?」
あかん、台詞まで殺伐としてる。
これ、世界観が違い過ぎて違和感しかでないコラボキャラだ。
この世界に合ってないというか、いや、この世界もおかしいことだらけだけどジャンルが違い過ぎるっていうか……
と、とにかく会話で何とかしないと召喚キャラにまた殺されかねない。
だから僕は、とりあえず両手を上げて膝を付くのだった。




